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【 マタニティブルー(産後うつ病) 】と漢方薬による治療

マタニティブルー(産後うつ病)とは


マタニティブルーは産後に起こる気分の変調を中心とした諸症状を指し、ほぼ「産後うつ病」「産後精神病」「産褥精神病」「育児ノイローゼ」などと同義に扱われます。マタニティブルーが起こる明確な原因は明らかにされていませんが、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの急激な減少が一因であるという説が有力です。


出産後の女性ホルモンの減少は誰にでも起こるものであり、マタニティブルーもまた誰にでも起こりえるといえます。マタニティブルーの症状は悲しみ、みじめさ、無気力、絶望感、孤独感、不安感、イライラ感、過度な緊張などのネガティブな精神症状を中心とします。それ以外にも強い疲労感、重だるさ、食欲不振、不眠症、集中力の低下、性欲の低下のように多彩な症状が現れます。


マタニティブルー(産後うつ病)の西洋医学的治療法


マタニティブルーの治療法は通常のうつ病などと大きく変わりません。主には抗うつ薬やカウンセリングを中心としたものになります。しかしながら、授乳中の場合は使用できる薬に制限がかかる可能性があります。


マタニティブルー(産後うつ病)の漢方医学的解釈


出産という「大仕事」を成し遂げた身体は疲労困憊しています。
これを漢方の視点からみると気と血が大きく失われた状態といえます。このような状態を気血両虚と呼びます。
気が不足すると疲労感、食欲不振、重だるさ、動悸、息切れ、ふらつきなどの症状が現れます。イメージとしては「元気が無い」状態といえるでしょう。


さらに血が不足すると不安感や不眠といった精神症状に加えてめまいや立ちくらみ、頭のふらつき、動悸、息切れ、ドライアイや眼精疲労、筋肉のけいれん、生理不順などの症状が現れます。これら気血両虚の状態はほぼマタニティブルーの諸症状を網羅しているといえるでしょう。


出産に伴う気血両虚もまた西洋医学的な解釈(女性ホルモンの減少)と同様に誰にでも起こりえるものです。その中でも元来、気や血が不足傾向の方は出産によって気血両虚が深刻化してマタニティブルーに陥りやすいと考えられます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたマタニティブルー(産後うつ病)の治療


マタニティブルーが気と血の不足である場合、治療の柱は気と血を補う漢方薬の使用となります。気を補う生薬(補気薬)には人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などが挙げられます。血を補う生薬(補血薬)には地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが代表的です。したがって、気血両虚と判断できるマタニティブルーにはこれらの生薬から構成される漢方薬が有効といえるでしょう。


しかし、実際にはそれだけではなく慣れない育児によって精神的なストレスは気の流れを悪くしてしまいます。気の滞りは精神不安を引き起こすので滞っている気の流れをスムーズにする必要もあります。気の流れを円滑にする生薬(理気薬)としては柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが有名です。


マタニティブルー(産後うつ病)の改善例


患者は30代後半の専業主婦。不妊症治療(顕微受精)の末に念願のお子さんを授かりましたが、赤ちゃんの夜泣きや体重があまり増えないことなどに悩み抑うつ傾向に陥ってしまいました。詳しくご症状を伺うと気力の低下や不安感、不眠傾向も強く訴えられました。東京へは夫の転勤ではじめて来たため相談できる友人もいないので辛いとのこと。


この方は気持ちの落ち込みが顕著だったのでまず気の流れを改善する生薬(理気薬)である柴胡、半夏、厚朴、香附子などを含む漢方薬を中心に服用して頂きました。それに加えて地域の育児施設を利用して友人をつくることも併せて提案しました。


漢方薬を服用して3ヵ月が経った頃にはだいぶ気分も晴れてきたとのこと。育児施設でも少しずつ顔見知りの方も増えてきたご様子。この頃になると赤ちゃんもハイハイをするようになり、イタズラも多くなるので非常に疲れるという。そこで気を補う生薬(補気薬)である人参、黄耆、大棗、白朮などを加えた漢方薬に変更しました。


それから数ヵ月後には気持も楽になり、夜泣きのとき以外はよく眠れるので体力的にも余裕が出てきたとのこと。ご一緒にいらした赤ちゃんも小柄ではありましたが、お顔はぷっくりとして元気に食事も摂って成長中。現在もたまにため息が多くなることがあるということで、気の流れを改善する漢方薬を継続して服用して頂いています。


おわりに


マタニティブルーは非常に「今日的な病」といえるでしょう。様々なメディアで産後うつ病の患者数が増加しているというニュースを見聞きします。核家族化が進んだ結果、周囲に子育ての相談ができる両親や親族がいないという状況では誰でも大きなプレッシャーとストレスを受けることは想像に難くありません。


第一子の子育てとなれば夜泣きや授乳、ミルクや食事の準備にオムツ替えと何もかもが初体験のオンパレードです。あまりの環境の激変におかしくならないという方がおかしい(?)とさえ思えてきます。したがって、ストレスをコントロールする意味でも頑張りすぎないことがとても大切です。「60点なら大成功。40点で合格点」という気持ちで100点満点を目指さない子育てをお勧めしたいと思います。


私が住んでいる東京都豊島区は保健師さんの定期訪問や区民ひろばといった親子で利用できるサービスがいくつかあります。意外と内容も充実しており、積極的に利用することで他のお母さんから情報が得られたり悩みを相談することもできるようです。決して一人だけで悩まず、安心できる「居場所」を探してみてください。


当薬局にはマタニティブルーの症状が漢方薬の服用によって精神面と体力面の両方とも好転する方がとても多くいらっしゃいます。マタニティブルーにお困りの方は是非一度、当薬局にご来局ください。

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