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【 むずむず脚症候群 】と漢方薬による治療

むずむず脚症候群とは


むずむず脚症候群は主に安静にしている時に、脚に漠然とした不快感を覚える病気です。その不快感がまるで「虫がむずむずと脚を這っているように感じる」ことからむずむず脚症候群と呼ばれています。「虫が這っている」という表現以外にも痛み、痒み、ほてりを感じる場合もあり、どのように感じられるかはかなり個人差があるようです。


むずむず脚症候群という呼び名以外にもrestless legs syndrome(レストレス・レッグス・シンドローム)の頭文字をとってRLS、その直訳として下肢静止不能症候群と呼ばれることもあります。


むずむず脚症候群の不快症状は夕方から夜にかけて起こりやすいという特徴があります。その影響で、むずむず脚症候群は不眠症を引き起こしやすくなるといわれています。一方で歩いたり運動をしている時は不快感よりも能動的に行っている運動の感覚が勝り、あまり不快症状が気にならなくなるという特徴もあります。その他にも男性より女性が罹りやすく、年齢が上がると発症しやすくなることが明らかになっています。


むずむず脚症候群の西洋医学的治療法


むずむず脚症候群の明確な原因はまだ解明されていませんが、神経伝達物質のドパミンや鉄分の不足が関与しているという説が有力です。したがって、ドパミンのような働きをするドパミン受容体作動薬が治療薬として用いられます。


具体的にはドパミン受容体を刺激するビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)とニュープロ(一般名:ロチゴチン)、神経の興奮を鎮めるレグナイト(一般名:ガバペンチンエナカルビン)などが主に使用されます。くわえて積極的に鉄分を摂取することが推奨されています。


むずむず脚症候群の漢方医学的解釈


むずむず脚症候群による知覚異常の症状は漢方医学的に風(ふう)によるものと考えられます。風は知覚異常の他にしびれ、けいれん、痒みなど変化に富んだ非固定性の異常を引き起こすとされています。特にむずむず脚症候群の場合は陰虚内風(いんきょないふう)が深く関与しているといえます。


陰虚とは血(けつ)や津液(しんえき)などの陰液(いんえき)が不足している状態であり、相対的に陽が優勢になっている病的な状態です。陽が優勢になることで虚熱(きょねつ)が発生し、そこから内風が起こり知覚異常を引き起こしたと考えられます。


風が発生するイメージとしては熱気球を膨らますために火をおこすと空気が膨張(空気の流れが生まれて風も生まれる)するといった感じでしょうか。むずむず脚症候群と併発しやすいイライラ感や不眠症、身体の熱感やほてり感などの諸症状は虚熱によるものと考えられます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたむずむず脚症候群の治療


むずむず脚症候群を引き起こしていると考えられる陰虚内風を治療するためには陰液(血や津液)を積極的に補う必要があります。血を補う生薬である補血薬(ほけつやく)には地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが代表的です。特に酸棗仁や竜眼肉は穏やかな鎮静作用もあるのでイライラ感や不眠症も併発している場合は特に有効です。


ほてり感や熱感が強い場合は津液を補う滋陰薬(じいんやく)である麦門冬や天門冬などを使用するのが効果的です。これら根治療法的な考慮に加えて、風をより直接的に抑える生薬である釣藤鈎、防風、荊芥、薄荷も加えられます。このようにむずむず脚症候群には根治療法と対処療法のバランスをうまくとりながら治療する必要があるでしょう。


むずむず脚症候群の改善例


患者は50代前半の男性・電気設備工事業を経営。40代後半から脚がピリピリするような違和感を覚えていましたが、痛むわけでもないのでそのまま放置していました。しかし、仕事が一段落する夕方から徐々にピリピリ感が強くなりはじめ、不快感も大きくなってゆきました。


「脳梗塞みたいな怖い病気じゃないかと思って不安になり」病院を受診。そこではじめてむずむず脚症候群と診断されました。病院からはドパミン受容体作動薬を処方されたものの、仕事中に眠気と吐気が出てしまうので今は何も服用していないとのこと。


ご来局時に詳しくご症状を伺うと「毛糸の荒いセーターを着させられているような不快感がある」とのこと。ピリピリ感以外には不快感のために寝つきが悪くなり、気分も晴れないという。顔色はやや青白く、朝から重だるさを感じることもしばしば。


この方には血を補う生薬であり、不眠傾向も改善できる酸棗仁や竜眼肉、風を取り除く生薬である釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。この漢方薬を服用してから4ヵ月が経過した頃、ピリピリ感は徐々に弱くなり仕事や睡眠前でも意識しなければあまり気にならなくなってきたとのこと。この方は漢方薬を服用していると疲れにくく、全体的に体調も良いということもあり現在も継続服用されています。


おわりに


近年、「むずむず脚症候群」という病名の知名度が上がってきましたが、その不快症状自体を訴えられる方は以前から当薬局にしばしばいらっしゃいました。そしてむずむず脚症候群のことを指していると思われる古い文献も多数見受けられます。


それらを駆使し、むずむず脚症候群の症状が漢方薬の服用によって好転する方がとても多くいらっしゃいます。そして、むずむず脚症候群と漢方薬とは「相性」が良いと実感しています。是非一度、むずむず脚症候群にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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