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【 ED(勃起不全) 】と漢方薬による治療

ED(勃起不全)とは


EDは「Erectile Dysfunction」の略で「勃起不全」や「勃起障害」と訳されます。以前はインポテンツ(インポテンス)とも呼ばれていましたが、その訳である「性的不能」が症状にふさわしくないということで、近年はEDと呼ばれるようになってきました。


EDは性交渉をするための充分な勃起が得られない状態や、勃起の維持ができず性交渉ができない状態を指します。このEDも機能性(心因性)勃起障害と器質性勃起障害に大きく分けられます。


機能性勃起障害は本来なら勃起する能力は充分に備わっているのに、主に精神的な理由で能力が発揮されないケースに当たります。新婚EDは機能性勃起障害の代表的な例です。器質的勃起障害は神経や血管に問題があったり、糖尿病、心臓病、うつ病、外傷や手術などの持病によって勃起が起こらない状態を指します。


これらのED以外にも血圧を下げる薬や抗うつ薬の服用によっても勃起不全が起こることが知られています。さらに勃起能力はあり、性交渉も行えるのに膣内射精ができないという状態(膣内射精障害)も広義のEDに含まれます。


ED(勃起不全)の西洋医学的治療法


まずEDの原因によって治療は異なります。機能性(心因性)EDの場合はカウンセリングを中心としたものになります。器質性EDの場合はバイアグラ(一般名:シルデナフィル)、レビトラ(一般名:バルデナフィル)、そしてシアリス(一般名:タダラフィル)のような陰部への血流を促すことで勃起を手助けする薬物療法が行われます。


薬物療法を行う場合は持病や既に服用している医薬品との相性を見て慎重に行う必要があります。したがって、通信販売や個人輸入などで得たED改善薬を自己判断で使用することは避けねばなりません。


ED(勃起不全)の漢方医学的解釈


EDを漢方医学的に見てみると、その病態は大きく二つに分けられます。ひとつは精神的ストレスなどによって肝の力が弱まってしまった場合です。この状態は機能性(心因性)EDに当たります。そしてもうひとつは加齢や強い肉体疲労などによって腎(じん)に蓄えられている精(せい)を消耗してしまった場合です。


まず肝は精神的ストレスに非常に敏感な臓です。肝は通常、気の流れをコントロールしたり筋肉の適切なはたらきを促したりしています。この肝が精神的ストレスなどによって弱まってしまうと、陰茎の筋肉のはたらき、つまりは勃起状態を維持できなくなってしまいます。さらに気の流れが悪くなり併せて血の流れも悪くなると陰部をしっかりと栄養することができなくなり、やはり勃起不全につながります。


そして加齢や強い肉体疲労は腎に蓄えられている精を消耗してしまいます。精は成長、発育、生殖に必須の物質であり、この精が不足してしまうと生殖能力の低下、つまりEDに陥ってしまいます。精は基本的に加齢とともに減少してゆくものです。したがって、加齢とともに精力が弱まってしまうのはある程度はしかたがないといえます。しかし、強い肉体疲労や慢性病、さらに過剰な性行為などで精を余計に消耗してしまった場合は問題となります。


これらの原因以外にも気や血の不足、余分な水分が停滞して水湿(すいしつ)となって気血の流れを妨げているケースなども考えられますので全身的な状態からEDの原因を探ってゆくことが大切です。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたED(勃起不全)の治療


「セックスを失敗してしまわないか」という不安感などに代表される精神的プレッシャーが顕著な場合は、肝をいたわり気の流れを良くすることが大切です。気の流れをスムーズにする生薬の理気薬(りきやく)である柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などを含んだ漢方薬が主に使用されます。不安感がより強い方の場合は、より気持ちを鎮める竜骨、牡蠣、酸棗仁、遠志などの安神薬も必要となってきます。


精神的な問題が薄く、肉体疲労などが強い場合は精を補いつつバランス良く気血も補ってゆくことが有効です。具体的に精は鹿茸、気は人参、黄耆、大棗、白朮、甘草、血は地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが代表的な生薬でありこれらから構成される漢方薬が用いられます。


しかしながら、実際にEDの原因は上記のようにくっきりと線引きできるものではないので、上記のような生薬をバランスよく含んだ漢方薬を使用することが重要となってきます。


ED(勃起不全)の改善例


患者は40代後半の男性・弁理士。数年前に結婚して特に問題なく夫婦生活も営んでいましたが、締め切りに追われるストレスの多い仕事を任されたことがきっかけでED(勃起不全)に陥ってしまったとのこと。病院を受診して治療薬のシアリスも出されましたがうまくいきませんでした。その後は西洋薬を使用するのに抵抗感が強く、漢方薬を試してみようと考えて当薬局にご来局。


詳しくお話を伺うと仕事による精神的・肉体的ストレスが強く、食欲も減退気味。身体の冷えもあり線が細くて見るからに疲労が溜まっている雰囲気でした。さらに40代前半の頃から顕著に体力の低下を感じ、徹夜で仕事をすることは全くできなくなってしまったと嘆息されていました。くわえて、EDになる前はやや早漏傾向があり、その点についても昔から悩んでおられたとのこと。


この方には精液を含む体液が身体から漏れ出すことを防ぐ働きがあり、気持ちを落ち着ける働きもある竜骨、牡蠣などから構成される漢方薬をまず服用して頂きました。漢方薬を服用して3ヵ月程度が経過した頃には気持の不安定さも鎮まり、ぎこちなさはあるとのことですが夫婦生活が営めるようになりました。


その反面、仕事量のさらなる増加から肉体疲労が強いという訴えがあったので、気を補う人参、黄耆、大棗などの生薬から構成される漢方薬に変更。時期的に秋の終わりにさしかかってきたということもあり身体の冷えも気になるということもあったので、身体を温めて、精を補う力に優れている鹿茸製剤も併用して頂きました。


漢方薬を変更してから5ヵ月が経った頃には食欲も増して血色も良くなり、体重も5kgほど増加。体力的にも余裕が出てきたからか以前と同じように夫婦生活が営めるようになりました。漢方薬を服用している間は毎年必ずひいていた風邪にもかからなかったということもあり、現在は疲労回復という意味合いも込めて継続的に漢方薬を服用されています。


おわりに


「ED」という言葉は世界初のED治療薬であるバイアグラの発売と共に一気に「市民権」を得ました。しかしながら、持病などの影響でED治療薬が使用できないケースも見受けられます。そういった場合、漢方薬は貴重な選択肢となるでしょう。


さらに漢方薬はED以外にも同時に精神不安や慢性的な疲労感などより幅広い症状に対応できるものでもあります。漢方薬を服用し始めてから、徐々に上記のような幅広い症状がとれてくることからEDと漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、EDにお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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