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【 書痙 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局と書痙


当薬局では長年、書痙(しょけい)を治療する漢方薬の研究を重ねてまいりました。その理由としてはまず書痙や局所性ジストニア全般に対して有効な西洋医学的治療法が確立されていないことが挙げられます。その一方で当薬局で調合する心身の緊張感を緩和する漢方薬を用いて書痙や局所性ジストニアから回復された方がとても多くいらっしゃいます。


このページでは書痙と局所性ジストニアに対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。


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漢方薬の価格と種類…粉薬や煎じ薬の解説とそれぞれの価格について


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書痙とは


書痙(しょけい)とは筆記用具を持つ手が意識していないのに緊張し、うまく字などを書くことができなくなってしまう病気です。このような意識していない状態、つまり不随意(ふずいい)の状態で起こる筋肉の硬直をジストニアや不随意運動と呼びます。書痙は身体の一部分である手(指)において起こるジストニアなので局所性ジストニアのひとつといえます。


書痙の大きな特徴として、筋肉の緊張によって筆記に支障はきたすのですがそれ以外の動作は問題なく可能という点です。例としては箸を使って食事を摂る、キーボードやマウスを扱う、実験器具を使用して細かい作業を行うことなどは多くの場合において可能です。


書痙は局所性ジストニアの一種であると同時に職業性ジストニアの一種でもあります。職業性ジストニアとは特定の職業にまつわる動作に支障をきたしてしまうジストニアです。書痙のケースでは頻繁に文字を書く職業の方(教師、速記者、小説家、設計士、会計士など)や受験生の方が発症しやすい傾向にあります。


他の職業性ジストニアとしてはピアニスト、ギタリスト、バイオリニストの方などがそれらの楽器演奏だけできなくなってしまうフォーカルジストニア、ゴルファーの方がパッティングのみできなくなってしまうイップスが代表的です。本項目では書痙を中心にしつつ、他の局所性ジストニアにも対応できる形で解説を行ってゆきたいと思います。


書痙の原因


書痙の原因についてはまだ明確に解明されていません。しかし、脳内における筋肉の動きをコントロールする部分の不調によるものという説が濃厚です。さらに特定の神経伝達物質(アセチルコリン、ドパミン、セロトニンなど)のはたらきを調節する薬で症状が緩和することから、逆説的にそれらが書痙発症に関与している可能性が指摘されています。


書痙に限らず職業性ジストニアを患ってしまう方の特徴としては完璧主義、真面目、几帳面という点が挙げられます。したがって、体質以外にもストレスを真正面から受けてしまう性格などもジストニア発症の要因としばしば指摘されます。


書痙の症状


既に述べたとおり、書痙は手の筋肉の過緊張によって筆記のみに支障が出る病気です。しかしながら、書痙による症状がどのようなケースで現れるのかは個人差があります。具体的にはどんな時にも筆記障害が出てしまう方、特定の場面(試験や人目が気になるような場面での署名など)でのみ筆記障害が出てしまう方もいらっしゃいます。


書痙の症状自体にも個人差があります。書き出しが特にうまくゆかない方、徐々に緊張が高まってしまい書けなくなってしまう方、書けるが徐々に字が小さくなってしまう方などさまざまです。


書痙の西洋医学的治療法


書痙の治療は薬物療法が中心的に行われており、場合によっては心理療法も併用されます。薬物療法は筋肉の震え(専門的には「振戦(しんせん)」と呼びます)を抑えるアーテン(一般名:トリヘキシフェニジル)やアルマール(一般名:アロチノロール)、筋肉を弛緩させるテルネリン(一般名:チザニジン)やミオナール(一般名:エペリゾン)などが中心的に用いられます。


それ以外にも精神的ストレスによって症状が悪化する場合はパキシル(一般名:パロキセチン)、セルシン(一般名:ジアゼパム)、デパス(一般名:エチゾラム)、ワイパックス(一般名:ロラゼパム)などが用いられます。特にリボトリールやランドセン(ともに一般名:クルナゼパム)は抗不安作用にくわえて筋肉の緊張を緩めるはたらきも強いのでしばしば用いられます。


経口薬以外にも筋弛緩作用があるボツリヌス毒素を加工し、薬剤化したボトックスの注射も存在します。その他にも脳の手術といった外科的治療も試みられています。


このように多面的な治療が西洋医学においてなされますが、書痙に対して効果的な治療法が確立しているとはいえないのが現実です。その理由として書痙発症のメカニズムにおいてまだ不明な点が多いことが挙げられます。


書痙の漢方医学的解釈


書痙の症状は筋肉の動きがうまく制御できないことが根本にあります。漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。漢方医学における肝は筋肉の動きだけではなく、眼のはたらきを維持したり、気持や感情を落ち着けるはたらきを担っています。


この肝のはたらきが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼のはたらき、精神の安定化に問題が生じてしまいます。筋肉のはたらきの失調は書痙に代表される局所性ジストニアなどに繋がります。そして、気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。


したがって、漢方医学的には肝に注目して書痙の治療を行うことになります。書痙の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。肝は多くの場合、精神的なストレスによってはたらきが低下してしまいます。したがって、精神的ストレスが多い場合はそれに対するケアも必要になります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた書痙の治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いた書痙の治療は肝をいたわることが中心となります。肝の力が衰えるということは肝にためられていた血(けつ)が消耗するということであり、それを補うような治療が中心に据えられます(これを「肝血を補う」「柔肝(じゅうかん)する」と言います)。


血を補う生薬である補血薬(ほけつやく)としては地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。特に芍薬は筋肉をリラックスさせるはたらきも持っているので書痙治療の漢方薬にはしばしば含まれます。


さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える理気薬(りきやく)、具体的には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子なども用いられます。他にも筋肉の緊張や震えを鎮める釣藤鈎、気持ちを鎮める竜骨、牡蠣などの生薬も併用されることが多いです。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案


書痙は体質面の他に環境面の影響も受けることが知られている病気です。特に過度な精神的ストレスは心身ともに緊張感を高めてしまうので、書痙をはじめとするジストニアを患っている方は避けるべきです。しかしながら、日常生活を営む上で精神的なストレスを回避し続けるのは難しいでしょう。したがって、うまくストレスを解消する方法を取り入れる方が建設的かもしれません。


心身ともにストレスを解消するには軽運動が最適です。具体的にはウォーキングや軽い水泳などが良いでしょう。書痙の発症を「心の非常停止装置」がはたらいたと考え、可能な限り抱え込まなくてもよい仕事などには手を付けないようにするのが良いでしょう。心に余裕を持つことが一番の「薬」かもしれません。


経験的に書痙の回復期に入った方は「別に字が書けなくても、とても困ることは意外と少ない」「パソコンを使えば直筆でなくても大体のことがこなせる」「字が書けないのは不便だが、別に死ぬようなことはない」と思えるようになっている場合が多いです。書痙をひとつの契機と捉え、リラックスできるライフスタイルへの見直しを行って頂ければと思います。


書痙の改善例


患者は20代後半の男性・製薬会社勤務の研究職。就職後、数年が経った頃から手の震えと硬直により字を書くことが困難になってしまいました。より具体的には震えによって字がきれいに書けず、震えを消すために強く力を込めると今度は手の過緊張によって徐々に字が小さくなってしまう。


最初の頃は仕事の疲れがたまった結果と考え、休養を多めにとったり、整体や鍼治療も行いましたが症状は好転しませんでした。「手先を使うことが多い仕事なので、炎症でも起こっているのかと思っていた」とのこと。一方で手に痛みはなく、字を書くこと以外に実験器具やパソコンを操作することは問題なくできていました。


しかしながら、一向に改善の兆しがなかったので大学病院を受診し、そこで書痙と診断されました。病院では筋弛緩薬を服用しましたが効果はなく、抗不安薬は慢性的なめまいや眠気に悩まされた為、治療は中断。ボトックス注射も試しましたが大きな改善は感じられなかったとのこと。


当薬局にご来局されたときは病気への不安からか眠りの浅さ、そして強い肩凝りも発症されていました。ご来局時にはこれまでの症状の「歴史」をまとめた資料をご用意され、完璧主義・生真面目・責任感が強いといった一面が伺えました。これらのご症状や全体像から、柴胡を中心とした気の流れをスムーズにする生薬と、芍薬や葛根などの筋肉の緊張を和らげる生薬から構成される漢方薬を服用して頂きました。


服用後、波はあるものの段階的に筋肉の緊張がほぐれ、服用から1年が経つと「前よりジワジワと手の硬直が強くなることも減り、字を書くのが本当に楽になった」とのこと。現在、自覚症状は少々残るものの、筆記スピードは格段に上がり、字が小さくなってしまうことも少なくなっていました。「漢方薬を飲んでいると肩凝りも楽になり、睡眠も深くなった」ということで、今も健康維持も兼ねて漢方薬の服用を継続して頂いています。


おわりに


書痙を患ってしまうと今まで問題なく行えてきた「書く」という動作ができなくなり、非常に不便な生活を強いられてしまいます。くわえて非常にマイナーな病気であり、書くこと以外は普通に行える点が逆に周囲の理解を難しくしていると感じます。結果的に孤独感や疎外感を深めてしまう方もいらっしゃいます。


漢方薬は西洋薬とは異なった角度から書痙に対してアプローチするものです。当薬局では西洋薬を服用してもなかなか症状の改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから症状が徐々に好転する方がとても多くいらっしゃることから、書痙と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、書痙にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 痙攣性発声障害 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局と痙攣性発声障害


当薬局では長年、痙攣性発声障害に代表されるジストニアに有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。その主な理由としてはジストニア全般に対して有効な西洋医学的治療法が確立されていないことが挙げられます。その一方で心身の緊張を緩和する漢方薬は痙攣性発声障害に対して有効であることを経験的にも実績面からも感じています。


このページでは痙攣性発声障害に対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。ご来局の際、発声が難しくご症状が伝えにくいような場合は事前に下記のお問い合わせフォームにご症状やご体質などをご記入ください。


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痙攣性発声障害とは


痙攣性発声障害とは自分の意識とは無関係に声帯を動かしている筋肉が緊張してしまい、発声に異常が起こってしまう病気です。このような自分の意識に反して筋肉が硬直したり動いてしまう病気をジストニアと呼びます。したがって、痙攣性発声障害はジストニアのひとつに含まれます。しばしば、声帯筋という部分の筋肉に起こることから局所性ジストニアともいわれます。


言葉を出すことが困難となってしまう病気には失語症や失声症も存在します。失語症は脳梗塞や脳出血などによって脳の言語をつかさどる部分が損傷することによって起こります。さらに失声症は精神的なストレスやショックをきっかけに発声が困難となる病気であり、声帯などの発声器官に異常は見られません。


痙攣性発声障害においては脳の損傷は無い一方で、発声器官の声帯筋に硬直などの異常がみられることから上記のような失語症や失声症とは異なった病気といえます。


痙攣性発声障害の原因


痙攣性発声障害をはじめとするジストニア全般において、明確にその原因はわかっていません。しかし、筋肉などの運動を支配している大脳基底核と呼ばれる部分に問題が生じているという説が有力です。


痙攣性発声障害は明確な原因が不明な一方で声をよく出す仕事に就いている方や仕事などで過度なストレスを受けている方に多く発症することも知られています。上記を総合すると痙攣性発声障害は責任がある(プレッシャーがかかる)仕事を任されている方が、苦手なスピーチや訓示を人前で行うケースなどをきっかけに起こりやすいと想像できます。


痙攣性発声障害の症状


痙攣性発声障害は大きく内転型と外転型の2種類に分けられます。発声困難の内容も内転型と外転型で異なります。その一方で痙攣性発声障害において両者を明確に分けられるものではなく、しばしば内転型と外転型が混じり合った病態もみられます。


内転型の痙攣性発声障害

発声の際に声帯が内側に閉じようとしてしまう病態です。内転型の声質はなんとか頑張って声を出しているような、緊張しているような状態となります。痙攣性発声障害においてはこの内転型を患っている方が比較的多いとされています。


外転型の痙攣性発声障害

発声の際に声帯が開いてしまう病態です。外転型の声質はかすれてしまったり、発声自体が中断されたりします。息が漏れている音が聴き取れるのが外転型の特徴といえます。外転型は内転型よりも手術やボトックスによる治療が効きにくいという報告があります。


痙攣性発声障害の西洋医学的治療法


痙攣性発声障害に対する西洋医学的治療法はまだ確立されていません。しばしば用いられる治療法としてはボツリヌス毒素を加工して薬剤化したボトックスの注射剤が挙げられます。それ以外にも声帯を囲んでいる軟骨を左右に広げる外科的手術も行われています。


痙攣性発声障害の漢方医学的解釈


痙攣性発声障害の症状は声帯を支配している筋肉の動きがうまく制御できないことが根本にあります。漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。漢方医学における肝は筋肉の動きだけではなく、眼の働きを維持したり、気持や感情を落ち着ける働きを担っています。


この肝の働きが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼の働き、そして精神の安定化に問題が生じてしまいます。筋肉の働きの失調は痙攣性発声障害に代表されるジストニアに繋がります。気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。


したがって、漢方医学的には肝に注目して痙攣性発声障害の治療を行うことになります。痙攣性発声障害の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。肝は多くの場合、精神的なストレスによって働きが低下してしまいます。したがって、精神的ストレスが多い場合はそれに対するケアも必要になります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた痙攣性発声障害の治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いた痙攣性発声障害の治療は肝をいたわることが中心となります。肝の力が衰えるということは肝にためられていた血(けつ)が消耗するということであり、それを補うような治療が中心に据えられます。(これを「肝血を補う」「柔肝(じゅうかん)する」と言います)


血を補う補血薬(ほけつやく)としては地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。特に芍薬は筋肉をリラックスさせる働きも持っているので痙攣性発声障害の漢方薬にはしばしば含まれます。血を補う力はありませんが葛根は肩から首の筋肉をリラックスさせる働きに優れているので痙攣性発声障害とそれに伴う首肩のつらい凝りの治療に適しています。


さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える理気薬(りきやく)、具体的には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子なども用いられます。他にも筋肉の緊張や震えを鎮める釣藤鈎、気持ちの乱れを鎮める竜骨、牡蠣などの生薬も併用されることが多いです。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


痙攣性発声障害の改善例


改善例1

患者は40代前半の男性・会社経営者。ロゴのデザインなどを製作する会社を経営しており、普段から大勢の前で話す機会が多かった。そのような生活のなかで、数年前から声が出し難くなるのを感じていました。時期的に会社の一部門の業績が悪化し、人員整理などのストレスの溜まる仕事も多く重なり忙殺されるように。声が出にくくなったのも最初の頃は社員との面談や商談などで喉が疲れてしまったのかなと考えていたとのこと。


しかし、症状は徐々に悪化して話の途中からだんだんと声が出なくなってしまいました。話の最後の方は言葉のすべてに濁音が付いたような声質に。喉に痛みも無かったので、不審に思い病院を受診するも病名は分かりませんでした。その後、大学時代の友人の医師から「痙攣性発声障害」という病気の存在を指摘され、遠方の関西にある専門病院を受診。そこで初めて痙攣性発声障害と診断されました。


その病院では発声訓練などを受けるも症状は緩和せず、最終的に手術を受けましたが完治には至りませんでした。最悪の時期と比べると症状は3/5程度、少し良くなったくらいとのこと。仕事柄、人と話すことも多いので悩んでいたところ奥様から漢方薬を薦められて当薬局へご来局。


詳しくお話を伺うと、ピークは過ぎたが本業のデザインだけではなくスタッフの新規採用やその教育など多岐にわたる仕事のストレスは依然として強いとのこと。お話を伺っている途中も何とか声を絞り出している、痙攣性発声障害特有の症状が聞き取れました。この方にはまず心身の緊張を緩和させるために柴胡、芍薬、厚朴、釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。


漢方薬服用から5ヵ月が経過する頃、風邪の治りかけのようなハスキーさは残っていましたがだいぶ聴き取りやすい声質に変わっていました。ご本人は声の変化にくわえてイライラ感や肩凝りが緩和されたことに喜ばれていました。しかし、これから難しい仕事で忙しくなりそうだということで気分を安定させるはたらきにより優れている牡蠣、竜骨、柴胡を含む漢方薬に変更しました。


新しい漢方薬に変更してから6ヵ月が経った頃には途中から声が沈んでしまうことは無くなり、痙攣性発声障害のことを知らなければわからないくらいの声になっていました。スピーチをする時もまだ苦手意識はあるものの、特に誰からも訝(いぶか)しがられることも無くなったとのこと。この方は痙攣性発声障害の予防と服用中は寝つきも良かったということで同じ漢方薬を継続して服用して頂いています。


改善例2

患者は30代後半の男性・私鉄勤務の車掌。数年前から車掌としてはたらいているが、アナウンスの仕方を上司より注意されることが続く時期があった。仕事上、覚えることもたくさんありストレスを抱え込むことが常態化。徐々に声が出しづらくなることを自覚するようになりました。


仕事へ支障が出ることを心配されましたが、志願して車掌になったので内勤への転属も言い出し難いと悩んでいたとのこと。その一方、声の不調は仕事中だけで起こり、プライベートで困ることはありませんでした。最初の頃は時間とともに回復するだろうと思っていましたが、仕事が慣れてきても声の出しにくい状態だけは続いてしまいました。ご本人曰く「喉にポリープでもできたのかと思って怖くなり、病院を受診した」とのこと。


受診した消化器内科でポリープなどの異常は発見されませんでしたが、そこから紹介された耳鼻咽喉科で痙攣性発声障害と診断されました。同科でボトックス注射を行うと声は出しやすくなりましたが、強い違和感が残り半年ほどで治療は中止。筋肉を弛緩させる内服薬を使用しても効果は得られず、病院での治療自体を休止。当薬局へは病院の治療を休む間に何かしたいと考えてご来局。


お話を伺うと、最初は声が出ているのに徐々に声(音)が息だけになってしまうようなご症状でした。ご本人も「少し長いセリフを言うときは、何とか振り絞って声を出している状態」とのこと。痙攣性発声障害の他には緊張すると腹痛や便意が高まる過敏性腸症候群の持病もあり、乗車中はトイレに行けないので心配とのこと。「緊張すると声はうまく出ない上に、便は出そうになって困る」と自嘲気味に語られていました。


この方には気の巡りを改善して精神的にリラックスできるようにする柴胡や薄荷、筋肉の緊張を緩和する芍薬、水分の代謝を改善して下痢を改善する白朮や茯苓などから構成される漢方薬を調合しました。


漢方薬を服用して2ヵ月で過敏性腸症候群による便通トラブルは大きく改善し、緊張が高まっても腹部がシクシクと痛み出すことはほぼ無くなりました。一方で声に変化はないということですが、良い流れと考えて同じ漢方薬を調合しました。ご本人もお腹の調子が良いだけでストレスは半減するとおっしゃられていたので、現状を維持しました。


そして漢方薬を服用して半年強が過ぎると、勤務中でも声を出し続けられる時間が伸びてきたとのこと。過敏性腸症候群が改善し、ストレスが減ったことで良いサイクルに入れたと感じました。一方で声の症状が少し変わり、喉に圧迫感があり咳払いが多くなったとのこと。そこで気の巡りにくわえて鎮咳作用もある半夏が含まれている漢方薬に変更。


新しい漢方薬に変更後も心配していた腹痛や下痢の再発はなく、喉のつまり感はほぼ消失しました。主訴であった声の状態も一歩一歩、着実に改善してきました。その後、ご本人のご希望で以前の漢方薬へ再度変更して継続服用へ。痙攣性発声障害によって車掌としての仕事に支障が出てしまうことはなくなりました。


おわりに


痙攣性発声障害は決して「知名度」が高い病気ではなく、医療従事者の間でもあまり知られていない病気といえるでしょう。したがって、なかなか周囲の人に病気のことを理解してもらえず、他の病気以上に人知れず悩んでいる方が多い印象です。


漢方薬はボトックスのような西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では西洋薬を使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、痙攣性発声障害による症状が少しずつとれてくることから、痙攣性発声障害と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、痙攣性発声障害にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 イップス 】の漢方薬による治療

一二三堂薬局とイップス


当薬局では長年、イップスに有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。その主な理由としてはイップスをはじめとするジストニア全般に対して有効な西洋医学的治療法が確立されていないことが挙げられます。それ以前にイップスは「病気」と認識されず、本格的な治療法の開発が行われていないというのが現状です。


その一方で心身の緊張感を緩和する漢方薬はイップスに対して有効であることを経験的にも実績面からも知っています。このページではイップスに対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。


漢方相談の流れ…当薬局のご来局からアフターフォローについて


漢方薬の価格と種類…粉薬や煎じ薬の解説とそれぞれの価格について


アクセス…JR池袋駅から当薬局までの順路について


一二三堂薬局の漢方薬の安全性…漢方薬の残留農薬や放射性物質への対策について


お問い合わせフォーム…ご疑問などのお問い合わせはこちらへ


イップスとは


イップス(Yips)とは精神集中が必要なゴルフのパッティングの際などに起こる、緊張やプレッシャーからくるふるえを指します。スコットランド出身のプロゴルファーであるトミー・アーマーが最初に呼称しはじめたといわれているように、基本的には「ゴルフ用語」とされています。しかし、上記の定義において「ゴルフのパッティングの際など」と表現するように、現在ではゴルフに限らず多くのスポーツに用いられる言葉となっています。


イップスは筋肉が意識していないのに緊張してしまう病気であるジストニアの一種といえます。その中でもイップスはプロゴルファーにとってのスイングのように職業柄の特殊な動きに限ってジストニアの症状が出てしまう職業性ジストニアといえます。


他の職業性ジストニアには速記者や学生など「書く」ことの多い方に発症しやすい書痙、ピアニストやバイオリニストがその楽器のみ演奏できなくなってしまうフォーカルジストニアなどが挙げられます。


イップスの原因


現在、どうしてイップスが起こってしまうのか明確に解明はされていません。しかしながら、イップスが発症する原因として精神的ストレス(失敗してしまったプレーの記憶、過剰なプレッシャー、フォームの変更など)が関与していることから、それらが脳や特定の神経に悪影響を及ぼしていると考えられています。


イップスの症状


イップスは元来、過剰な筋肉の緊張によってパッティングが円滑にできなくなってしまう症状を指していました。その後、アプローチ、ドライバーショット、バンカーショットなどにも同様の症状が起こることからパッティングに限らず幅広く用いられる「ゴルフ用語」となりました。


さらにイップスはゴルフという一競技の枠を飛び出し野球、テニス、卓球、弓道、アーチェリー、射撃、ダーツなどの競技にも用いられる「スポーツ用語」となっています。したがって、イップスは今日的には「特定のプレーのみが筋肉の過剰な緊張によってできなくなってしまう病気」といえるでしょう。


具体的には野球の場合は送球、フライのキャッチ、バントなどのプレーのみができないという症例が挙げられます。弓道やアーチェリーでは弦を引けない、または弦を離せないといった症例が見られます。例外はありますがイップスは腕や手を使った精密さが要求されるプレーに起こりやすいといわれています。


下記で詳しくご紹介しますが、当薬局にはゴールキーパー(サッカー)の方がゴールキックのみ行えないということでいらっしゃったことがあります。この症例などから、やや極論になってしまいますがイップスは競技の数だけ、さらにはプレー動作の数だけ存在するといえるでしょう。上記で挙げた野球や弓道などは特にイップスが起こりやすい競技でしたが、これ以外の競技でもイップスは起こりえるのです。


イップスの西洋医学的治療法


イップスはその原因が明確に解明されていないことなどから、確実な西洋医学的治療法やトレーニングによる克服法はまだ確立されていません。しかしながら、一般的なジストニア治療のように筋弛緩薬や抗不安薬が主に用いられます。薬物療法以外にも認知行動療法のようなカウンセリングも行われるケースもあります。


イップスの漢方医学的解釈


イップスの症状は筋肉の動きが制御できないことが根本にあります。漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。漢方医学の理論における肝は筋肉の動きだけではなく、眼のはたらきを維持したり、精神や感情を安定化させるはたらきを担っています。この肝のはたらきが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼のはたらき、気持ちの乱れなどが起こってしまいます。


肝が機能しなくなってしまうことでプレーに関係する筋肉のはたらきも失調し、イップスに繋がることがわかります。さらに気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発し、イップスがより顕著化するという悪循環に陥りがちです。したがって、漢方医学的には肝に注目してイップスの治療を行うことになります。


イップスの症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。肝は多くの場合、精神的なストレスによってその力が低下してしまいます。したがって、まずは過剰な精神的なストレスがないかを考える必要があります。経験的にはイップス克服のために過度な練習をすることで、プレーできない経験を重ねてしまう悪循環に陥っているケースが多いと感じます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたイップスの治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いたイップスの治療は肝をいたわることが中心となります。肝の力が衰えるということは肝にためられていた血(けつ)が消耗するということであり、それを補うような治療が中心に据えられます(これを「肝血を補う」「柔肝(じゅうかん)する」と言います)。


血を補う補血薬(ほけつやく)としては地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。特に芍薬は筋肉をリラックスさせる働きも持っているのでイップスの漢方薬にはしばしば含まれます。血を補う力はありませんが葛根は肩から首の筋肉をリラックスさせる働きに優れているのでイップスとそれに伴う首肩のつらい凝りの治療に適しています。


さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える理気薬(りきやく)、具体的には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子なども用いられます。他にも筋肉の緊張や震えを鎮める釣藤鈎、気持ちの乱れを鎮める竜骨、牡蠣などの生薬も併用されることが多いです。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


イップスの改善例


改善例1

患者は40代後半の男性・プロゴルファー。約10年前から緊張によって両手の筋肉が過剰に緊張してしまい、パッティングを頻繁に失敗するようになってしまった。この症状は徐々に顕著化し、手の緊張はどんどん強くなってしまいました。パターを持つ手の握力は異常に高まり、筋肉痛が出てしまうほどに。


練習を繰り返しても良くなることはなく、短いパッティングすら全く成功しなくなってしまったとのこと。その後、この症状がきっかけで第一線から引退。ゴルフのレッスンを中心に生計を立てるようになりました。しかしながら、レッスンにおいてもうまく見本のパッティングができないことに悩み、当薬局にご来局。


詳しくお話を伺うと病院で抗不安薬や筋弛緩薬、さまざまなイップス治療の書籍やビデオを使用しても効果はなかったという。先輩からイップス経験者を紹介してもらい、その方から「あまり根を詰め過ぎるな」というアドバイスも受けましたが、どうしても練習をセーブすることはできなかったという。私(吉田)はゴルフの知識は全くなかったので、この方に出会って初めて「イップス」という病気が存在することを教えて頂きました。


イップスという病名は知らなかった一方で、伺ったご症状からこの方の場合は精神的な問題に由来する肝の失調であると考え、柴胡、芍薬、釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。柴胡は気の巡りをスムーズにして精神的ストレスを軽減、芍薬や釣藤鈎は痙攣を鎮める効果が期待できるからです。


漢方薬服用から4ヵ月が経過する頃になると強かったパターを握る際の手首や指の緊張感が少し緩んできたとのこと。「昔はパターに手を添えるとその瞬間からジリジリと力が入っていたが、今はその感覚が薄くなってきた」とのこと。良い兆候と考えて同じ漢方薬を服用してさらに3ヵ月が経つ頃にはリラックスした状態でパターを握れるようになったと喜ばれました。


しかし、まだ肩から腕にかけて余分な力が入りフォームがぎこちないという。肩凝りも強いということで葛根や芍薬を含む漢方薬に変更しました。新しい漢方薬に切り替えて3ヵ月が過ぎるとイップスをほぼ克服されて、自然な形で球が打てるようになってきたとのこと。ご本人曰く「少しパッティングから距離を置きたくて打つのを控えていたが、先日、無性に打ちたくなって打ったら意外とスムーズに打てた」という。


レッスンの際にもパッティングの見本が「しっかりできるかまだドキドキはするが、できるようになってきている」とおっしゃられていました。それからもイップスの症状は現れることなく、現在も「イップス予防薬」ということで同じ漢方薬を服用して頂いています。


イップスの改善例2

患者は大学2年生の男性。私でも知っているくらいの大学サッカー界の名門校に所属しておりポジションはゴールキーパー。1年前の重要な試合で自陣からのゴールキックに失敗して失点のきっかけをつくってしまった。それ以降も何度か不運なプレーが重なりスランプに陥ってしまったという。


以前から足元のプレーは決して得意ではなかったが、単純なキックにも過剰に緊張してしまうようになった。特にゴールキック時には利き足が硬直するほど緊張してしまい、現在は他の選手にキックを頼んでいるという。


お話を伺うとボールのキャッチやランニングなど他の動作には何ら問題はないということで、イップスの「サッカー版」ともいえる症状でした。将来の針路として大学卒業後もサッカーを続けたいとのことで、満足なプレーができない現状にご来局当時はとても落胆されていました。精神的にもかなり不安定になっており、この方には柴胡、竜骨、牡蠣を中心とした気持ちを安定化させる漢方薬をまず服用して頂きました。


漢方薬服用から3ヵ月が経つと気分の浮き沈みはだいぶ落ち着き、冷静に物事が考えられるようなってきたという。しかし、不運にも足を強く打撲してしまいプレーができない状態とのこと。ここで一旦、血の流れを改善して怪我の回復を促進する漢方薬に変更。1ヶ月後には後遺症も無く怪我は完治していました。怪我の間、全くプレーできなかった影響を心配しましたがご本人は「むしろ気分転換になった」とのこと。


かなり精神面に余裕が出てきた印象だったので、この段階で身体の緊張を取り除く漢方薬にシフトしてゆきました。新しい漢方薬を服用し始めてから3ヵ月が経過した頃、学内の紅白戦でキックを用いる突発的なプレーをうまく処理できたとのこと。同じ試合でのゴールキックの場面でも「半分、やぶれかぶれ」に自分でキック。予想以上に違和感なくプレーできたという。


その後も同じ漢方薬を服用して頂き、年末の天皇杯の季節になる頃には問題なくプレーできるようになっていました。この方はイップスが完治された後も、怪我や体調不良の際にたびたびご来局されていますが、特に再発されることなく元気にプレーされています。


ドーピングと漢方薬


今日、国際的なスポーツイベントにおいてドーピングが問題となっています。このドーピングには故意のものとそうではないものがあります。故意のドーピングは運動能力を向上させることを目的に使用が制限されている薬品を用いることです。


そして故意ではないドーピングとは主に治療目的で規制されている成分を含む薬品を知らずに使用してしまうケースです。例えばドーピングで規制されているエフェドリンは市販されている風邪薬に広く含まれています。


一方、漢方薬はドーピングとは縁遠いイメージですが、実は大いに注意が必要です。上記に挙げたエフェドリンは麻黄や半夏に含まれており、これらの生薬を含む漢方薬を服用していた場合、場合によってはドーピングと判定される危険性があります。


それならば麻黄や半夏を含まない漢方薬なら服用していても問題ないかというと、そうでもないのです。その理由は生薬に含まれている成分が完全に解明されているわけではないからです。収穫の時期や産地によって成分に微妙な変化が起こる可能性も否定できません。


上記の理由から、一二三堂薬局ではドーピングの検査が行われるほどの競技レベルの方に漢方薬はお渡ししないことにしております。漢方薬には未知の成分も含まれている可能性もあるので、成分単位で申請が必要なTUE(治療目的使用に関わる除外措置)を漢方薬において行使することはできません。これは一二三堂薬局の漢方薬に限らず、すべての漢方薬の使用において行使はできません。


繰り返しになりますが一二三堂薬局はこれらの理由から、ドーピングに注意が必要な競技者に漢方薬をお渡しできません。どうぞご理解頂ければと思います。


おわりに


イップスはその独特な症状から医療機関で治療することが難しい厄介な病気といえます。「イップス」という言葉を生み出したトミー・アーマーもまた自身の症状がきっかけで表舞台から退いたといわれています。その一方でスポーツ界においてゴルフなどの一部の競技以外ではイップスの存在自体もあまり知られていません。したがって、誰にも病状を相談できずに悩まれている方も多くいらっしゃいます。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では筋弛緩薬や抗不安薬を使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、イップスの症状が少しずつとれてくることから、イップスと漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、ゴルフに限らずイップスにお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 チック症(トゥレット症候群を含む) 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局とチック症(トゥレット症候群)


当薬局では長年、チック症に有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。その理由はふたつあります。ひとつはチック症はお子様にとても多い病気であり、多くのご両親が西洋薬の副作用を心配して充分な治療ができないことに悩まれているからです。そしてもうひとつは漢方薬はチック症の改善にとても有効ということを経験的にも実績面でも知っているからです。


このページではチック症とトゥレット症候群に対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。


漢方相談の流れ…当薬局のご来局からアフターフォローについて

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チック症とトゥレット症候群とは


チック症とは無意識に筋肉を動かしてしまう病気であり、それは「無意識」であるがゆえに本人の意思では止められない点がチック症の特徴です。具体的には素早いまばたき、首ふり、顔をしかめる、肩を上下させるといった動作が現れます。他にも咳払い、鼻を鳴らす、奇声を上げるなどの症状が見られることもあります。


チック症はお子様に多い病気です。したがって、このホームページもお子様を主な対象として考えてゆきます。発生頻度はおおよそ10~20%といわれており、チック症は決して珍しい病気ではありません。その発症年齢については統計的に5~9歳ごろがピークになります。したがって、小学校低学年の1クラスにおいて数人は必ず発症している計算になります。


チック症が数年経っても消えず、むしろ症状が増加・悪化して慢性化してしまった場合はトゥレット症候群と病名が変わります。トゥレット症候群は多くの場合、10歳前後で症状の強さのピークを迎えます。その後は徐々に回復して中学校卒業時くらいにはほとんどの症状が鎮静化するといわれています。つまり、トゥレット症候群はチック症という病気を構成する一症候群、慢性化したチック症ということができます。


チック症は既に述べたとおり、よく見られる病気でしたがトゥレット症候群の発症頻度は0.05%と非常に低いことも知られています。したがって、チック症が発症したからといってトゥレット症候群になる(慢性化する)と過度に心配する必要はないでしょう。


チック症の原因


過去においてチック症の原因は家庭環境であるとする考え方が一般的でした。つまり、「子どもへの教育やしつけが厳し過ぎた」「母親が愛情を込めて育てなかった」などの言説です。残念ながら、今日でも一部(医療従事者や教職員を含む)ではそのような考え方が残ってしまっています。


現在ではチック症に関する研究も進み、いくつかの神経伝達物質、主にドパミンやドパミンを受け取るレセプターの異常がチック症に強く関連していることがわかってきました。しかしながら、まだ完全にチック症の原因は解明されていません。


上記より、チック症は体質によるところが大きく、決して家庭環境に問題があったから発症するような病気ではないことが分かってきたのです。その一方でチック症はストレスが蓄積したり緊張する場面で悪化することも知られています。したがって、チック症は体質的要因がその根幹にあり環境要因がそれに対して影響を及ぼしているという考えが多数派となっています。


チック症の症状


チック症の症状は大きく分けて運動性チック症と音声チック症に分けられます。実際的には運動性チック症のみが出る場合、音声チック症のみが出る場合、そしてふたつとも出る場合やその他の症状が混ざって現れるなどさまざまです。


運動性チック症

具体的な運動性チック症の症状としては顔や口の筋肉を動かす、首を振る、肩をすくめる、まばたき、口の周りをなめる、ジャンプする、身体をビクつかせるなどが挙げられます。顔や口の片側の筋肉だけを動かすことで、しばしば「ひょっとこ」のような顔つきになると表現される方もいらっしゃいます。


これらの症状は専門的には不随意運動と呼ばれます。つまり、意識していない状態で出てしまう動きです。意識していないので症状が出ている本人に「動くな!」「止めろ!」と言っても効果は無く、むしろ緊張感を高めてしまい逆効果になってしまいます。


音声チック症

具体的な音声チック症の症状としては鼻を鳴らす、奇声を発する、「あ、あ、あ」のように同じ言葉を繰り返す、「バカ!」「死ね!」「クソ!」などの攻撃的で品のない言葉や「おっぱい」「ちんこ」といった性的な言葉を発する(汚言症)などが挙げられます。


これら音声チック症も運動性チック症と同様に不随意的なものなので意識して止めることはできません。音声チック症はその音によって周囲から目立ってしまうだけではなく、汚言症は会話の前後関係に依存しない形で出てしまいます。したがって、友人関係などに代表される人間関係に問題が生じてしまわぬよう注意が必要です。


その他の症状

チック症の症状は多様であり、運動性チック症とも音声チック症ともいえないものがあります。具体的には特定のものに強くこだわる、髪の毛やまつ毛を抜く抜毛症(ばつもうしょう)、口の中や唇をかむ、皮膚をはがす、匂いをかぐ、突然の怒り、暴力的な行為などの症状が挙げられます。これらの症状の一部はチック症ではなく単なる癖である場合も多く、その区別が難しいこともあります。


チック症の症状ではありませんが、しばしばチック症とADHD(注意欠陥・多動性障害または注意欠如・多動症)が一緒に現れやすい、合併しやすいことが知られています。漢方薬をもちいたADHDの治療につきましては こちらをご参照ください。


チック症の西洋医学的治療法


チック症が慢性化して学校生活を送る上で問題があるような場合は薬物治療の対象となります。もっとも頻繁に使用されるのはドパミン受容体阻害薬であるセレネース(一般名:ハロペリドール)、リスパダール(一般名:リスペリドン)、ウインタミン(一般名:クロルプロマジン)、オーラップ(一般名:ピモジド)、そしてドパミン量のバランスを調節できるエビリファイ(一般名:アリピラゾール)などです。


これらはドパミンの過剰なはたらきを抑制することでチック症の症状を軽減します。その一方で眠気、筋肉のこわばりと硬直、眼球運動障害、嚥下障害などの多彩な副作用が存在します。これらの副作用はその原因と考えられる脳の部位の名前から錐体外路(すいたいがいろ)障害や錐体外路症状と呼ばれます。くわえて特に意識しない口や顔の動きを遅発性ジスキネジアとも呼ばれます。


ドパミン受容体遮断薬は西洋医学的には実績のある治療薬であり、近年では副作用の少ないタイプの治療薬も開発されています。しかしながら、上記のような副作用はゼロではないので慎重な治療が求められます。


ドパミンとは異なる神経伝達物質であるセロトニンのはたらきを活性化させるパキシル(一般名:パロキセチン)などのSSRIと呼ばれるカテゴリーの薬、同じく神経伝達物質であるGABAのはたらきを高めるベンゾジアゼピン系の抗不安薬であるリボトリール(一般名:クロナゼパム)、セルシン(一般名:ジアゼパム)、自律神経の興奮を抑えるカタプレス(一般名:クロニジン)なども用いられることがあります。


上記の薬も副作用として吐気、食欲不振、腹痛、下痢といった消化器系障害、ふらつきや頭重感などの感覚異常が出る場合もあります。


薬物療法以外にもカウンセリングを中心とした心理療法が用いられます。カウンセリングではチック症がどのような病気なのかを両親と一緒に理解し、建設的な治療を行う環境づくりを行います。


チック症の漢方医学的解釈


チック症の症状は筋肉の動きが制御できないことが根本にあります。漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。漢方医学の理論における肝は筋肉の動きだけではなく、眼のはたらきを維持したり、精神や感情を安定化させるはたらきを担っています。この肝のはたらきが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼の機能、気持ちの乱れなどが起こってしまいます。


筋肉のはたらきが失調してしまうと運動性チック症や一部の音声チック症に繋がることがわかります。チック症特有のまばたきも筋肉と眼のはたらきの失調に寄るところが大きいでしょう。気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。したがって、漢方医学的には肝に注目してチック症の治療を行うことになります。


さらに肝以外にも、肝と関連深い腎(じん)への配慮も必要な場合があります。腎は成長や生殖などを司る精(せい)を蓄えています。肝腎同源(かんじんどうげん)といって、肝が失調すると腎のはたらきも弱まり、逆に腎の精が少なかったりすると肝のはたらきも弱まってしまいます。


精は成長に欠かせないものであり、成長障害、学習障害、低身長や低体重などの精不足と考えられる症状がチック症と一緒にあるようならば、漢方薬を用いてそれらに対する治療も行われます。

チック症の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。肝は多くの場合、精神的なストレスによってその力が低下してしまいます。したがって、まずはお子様の精神的なストレスがないかを考える必要があります。経験的には受験によるストレス、学校のクラス替えに伴う環境の変化、家庭環境の変化などが多いと感じます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたチック症の治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いたチック症の治療は肝をいたわり、その機能を回復させることが中心となります。肝の力の衰えは肝にためられていた血(けつ)が消耗すると起こりやすく、それを補うことがチック症治療の中心に据えられます。


血を補う生薬である補血薬(ほけつやく)としては地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが代表的です。特に芍薬は筋肉の過緊張を和らげるはたらきもあるのでチック症には最適の生薬といえます。


さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える理気薬(りきやく)も重要です。代表的な理気薬としては柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが挙げられます。他にも筋肉のけいれんやふるえを鎮める熄風薬(そくふうやく)である釣藤鈎、天麻、竜骨、牡蠣、腎の精を補う補腎薬(ほじんやく)である鹿茸なども漢方薬を構築する上で重要視されます。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案


チック症やトゥレット症候群の症状は本人が意識して止めることが難しいという点が特徴として挙げられます。したがって、無理に現れている症状をやめさせたりすることはお子さんのストレスを増大させ、逆効果になってしまうでしょう。


症状が出ていてもあえて無視することが必要になります。しばしば、「温かい無視」と呼ばれますが、まさに文字通りの対処法です。温かい無視以外にも、おとなしくできている時には褒めるという対応も良いとされています。


お子様への対応だけではなく、学校への対応も場合によっては必要になります。教職員も多くの場合は基礎的なチック症の知識(「チック症の症状をむやみに注意することは逆効果」
「無意識に起こっている症状で、意識して止めることはできない」など)はあるはずですが、保護者面談時などにチック症のことを伝えておくことも大切です。


チック症の改善例


改善例1

患者は小学6年生の男児。小学校四年生の頃から顔をゆがませたり首を左右に素早く振るなどのチック症状が現れ出した。お母様は最初、ふざけているのか癖なのかわからず症状に対して注意をしていましたが、チック症の症状は治まることなく続いていました。


その後、チック症の症状を同級生に指摘されたことをきっかけに時々学校を休むようになってしまいました。当薬局へは昔からお母様自身が月経困難症で漢方薬を服用しており、息子様にも漢方薬を試そうと考えて親子でご来局。


詳しくお話を伺うと顔や首の動かしといった典型的な運動性チック症の症状に加えて、咳払いや「うっ、うっ」という言葉を発する音声チック症も見られました。緊張しやすい性格なのか、必要以上に肩が高く上がり身体にとても力が入っている雰囲気を感じました。


息子様には心身の緊張を取り除くために柴胡、芍薬、厚朴などから構成される漢方薬を服用して頂きました。そして、お母様には症状を注意したり怒ったりすることは控えるようにお願いしました。


漢方薬服用から4ヵ月が経った頃には大きく体を動かす頻度は減り、続いていた咳払いもあまり見られなくなっていました。この頃、お母様が「息子がまつ毛を抜いて食べてしまう癖がなくなった」とおっしゃられました。これら抜毛症や抜毛癖(ばつもうへき)と呼ばれるものは経験的にチック症と併発しやすいと感じています。


抜毛症が緩和してきたことも含め、心身の過緊張状態が解けてきたと考えて同じ漢方薬を継続して頂きました。そして、服用開始から10ヵ月が経過した頃には運動性チック症も音声チック症もきれいに消失していました。現在はまれにプレッシャーがかかる場面になるとまばたきが多くなるとのことで、同様の漢方薬を継続して服用して頂いています。


改善例2

患者は中学2年生の男児と30代後半のお母様。息子様のチック症で悩んでいたというお母様が息子様と一緒にご来局。症状としてはまばたきと首を左右に振る動きなどでしたが、それ以上に気になったのがお母様の状態でした。こちらが息子様に症状を伺うと、
その答えが返ってくる前にお母様がササッとご返答。


お母様いわく「中学校に進学して、友人との人間関係がうまくいかなかったのがチック症の原因だと思う」とのこと。それは冷静に語るというよりも強い焦燥感を帯びたものであり、息子様からはやや緊張している雰囲気を感じました。


この様子からお母様の指摘が正しい部分もあると思いましたが、今はお母様の姿自体もまたチック症の原因となってしまっている面があると感じられました。そこで、このケースでは息子様だけではなくお母様も一緒に気持ちを落ち着ける漢方薬を服用して頂くことにしました。


お母様にも漢方薬を勧めると、最初は怪訝な顔をされましたが「母子同服(ぼしどうふく)」という言葉があることを伝えて納得して頂きました。「母子同服」は子供の病気を治すために同じ漢方薬を母親にも飲んでもらうという意味であり、お母様の心配がお子様のプレッシャーとなっている場合などに適した治療法です。お母様自身のお話も伺ってゆくとイライラ感や気分の浮き沈みなどに悩んでいたとのこと。


それぞれ漢方薬を服用しはじめてから5ヵ月が過ぎた頃になると、お母様も気持ちが落ち着いてきたようで「ついつい、症状が出るたびに注意していましたが、今は静観することができるようになりました」とおっしゃられました。息子様の方はまだ、まばたきや身体の動きはあるものの、かなりの改善を感じられました。


これを良い傾向と捉えて、同じ漢方薬を継続して服用して頂くことにしました。漢方薬をはじめて1年が経った頃には息子様の症状の大半は鎮まり、漢方薬は無事にご卒業。逆にお母様が「この漢方薬を服用しているとイライラしなくなる」ということで、現在も継続して頂いています。


改善例3

患者は20代前半の男子大学院生。幼少期より首を動かしたり咳払いをするといったチック症がありましたが、年齢が上がるとともに症状も緩和。しばらくチック症のこと自体忘れていましたが研究室での閉塞した生活や就職活動の開始をきっかけにチック症が再発。


病院から抗不安薬が処方されるもふらつきと吐気が強くて服用できなかったとのこと。他の薬を試しても生活に支障が出てしまい服用を断念。何気なくネットでチック症に関する学術論文を閲覧していると漢方薬が有効という論文を見つけて服用を決意。その後、当薬局のホームページを見つけてご来局へ。


伺ったご症状の経過から精神的ストレスによって五臓における肝のはたらきが失調してしまったと考えました。そこでまずはストレスを緩和する柴胡、筋肉のはたらきを整える芍薬、気持ちを鎮める竜骨などから構成される漢方薬を服用して頂きました。


服用から3ヵ月が経過した頃になると、身体を不規則に動かす場面が少なくなり、それからさらに数ヵ月経った頃には咳払いや時々みられた無意識の発声も見られなくなっていました。無事に電機メーカーに就職された現在でもストレス緩和と健康維持のためにうまく気を流しつつ補うことにも比重を置いた漢方薬を継続服用して頂いています。


改善例4

患者は小学2年生の女児。小さいころから2歳年下の妹とケンカが絶えず、癇癪(かんしゃく)を起こしてご両親を困らすことが多かった。くわえて小学校入学直後からまばたきと肩を上下させるチック症が現れ始めました。お母様は治療を行うべきか迷っているとき、行きつけの鍼灸院で漢方薬を勧められて当薬局へご来局。


娘様の身長と体重を確認すると、どちらの数値も年長さんくらいの水準でとても小柄。お母様曰く「偏食があり食も細くてあまり体力がない。でもいつもイライラして熱がっている」という。これらのご様子から娘様には腎の力を補い、適度に身体をクールダウンする漢方薬を服用して頂きました。


漢方薬開始から3ヵ月が経ち、お母様のご様子を伺うと漢方薬は嫌がらずに服用できているとのこと。チック症は変化がないが、帰宅後に必ずしていた昼寝をしなくなり食欲が出てきたという。漢方薬はこれまでのものを減量し、代わりに心身をリラックスさせる漢方薬を追加しました。


新しい漢方薬になって2ヵ月が経過すると妹とおもちゃを取り合うこともなくなり、情緒が徐々に安定してきました。お母様も姉妹に注意する頻度が減ってとても助かるとおっしゃられていました。その後、イライラ感が薄れてくるのと比例して運動性チック症も見られなくなりました。


学年も3年生となり、だいぶ姉らしくなってきたとご両親も喜んでいました。漢方薬については服用しているとご本人が「調子が良い」ということで内容に調節を行いながらも継続されています。


おわりに


近年、チック症のご相談が非常に増えた印象があります。おそらく背景には西洋薬を服用させるのに抵抗を感じるご両親の気持ちがあるのではないでしょうか。漢方薬は穏やかではありますが、西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。さらに西洋薬のような目立った副作用の心配もありません。


当薬局では西洋薬を服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、症状が好転する方がとても多くいらっしゃることから、チック症と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、チック症にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 むずむず脚症候群 】と漢方薬による治療

むずむず脚症候群とは


むずむず脚症候群は主に安静にしている時に、脚に漠然とした不快感を覚える病気です。その不快感がまるで「虫がむずむずと脚を這っているように感じる」ことからむずむず脚症候群と呼ばれています。「虫が這っている」という表現以外にも痛み、痒み、ほてりを感じる場合もあり、どのように感じられるかはかなり個人差があるようです。


むずむず脚症候群という呼び名以外にもrestless legs syndrome(レストレス・レッグス・シンドローム)の頭文字をとってRLS、その直訳として下肢静止不能症候群と呼ばれることもあります。


むずむず脚症候群の不快症状は夕方から夜にかけて起こりやすいという特徴があります。その影響で、むずむず脚症候群は不眠症を引き起こしやすくなるといわれています。一方で歩いたり運動をしている時は不快感よりも能動的に行っている運動の感覚が勝り、あまり不快症状が気にならなくなるという特徴もあります。その他にも男性より女性が罹りやすく、年齢が上がると発症しやすくなることが明らかになっています。


むずむず脚症候群の西洋医学的治療法


むずむず脚症候群の明確な原因はまだ解明されていませんが、神経伝達物質のドパミンや鉄分の不足が関与しているという説が有力です。したがって、ドパミンのような働きをするドパミン受容体作動薬が治療薬として用いられます。


具体的にはドパミン受容体を刺激するビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)とニュープロ(一般名:ロチゴチン)、神経の興奮を鎮めるレグナイト(一般名:ガバペンチンエナカルビン)などが主に使用されます。くわえて積極的に鉄分を摂取することが推奨されています。


むずむず脚症候群の漢方医学的解釈


むずむず脚症候群による知覚異常の症状は漢方医学的に風(ふう)によるものと考えられます。風は知覚異常の他にしびれ、けいれん、痒みなど変化に富んだ非固定性の異常を引き起こすとされています。特にむずむず脚症候群の場合は陰虚内風(いんきょないふう)が深く関与しているといえます。


陰虚とは血(けつ)や津液(しんえき)などの陰液(いんえき)が不足している状態であり、相対的に陽が優勢になっている病的な状態です。陽が優勢になることで虚熱(きょねつ)が発生し、そこから内風が起こり知覚異常を引き起こしたと考えられます。


風が発生するイメージとしては熱気球を膨らますために火をおこすと空気が膨張(空気の流れが生まれて風も生まれる)するといった感じでしょうか。むずむず脚症候群と併発しやすいイライラ感や不眠症、身体の熱感やほてり感などの諸症状は虚熱によるものと考えられます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたむずむず脚症候群の治療


むずむず脚症候群を引き起こしていると考えられる陰虚内風を治療するためには陰液(血や津液)を積極的に補う必要があります。血を補う生薬である補血薬(ほけつやく)には地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが代表的です。特に酸棗仁や竜眼肉は穏やかな鎮静作用もあるのでイライラ感や不眠症も併発している場合は特に有効です。


ほてり感や熱感が強い場合は津液を補う滋陰薬(じいんやく)である麦門冬や天門冬などを使用するのが効果的です。これら根治療法的な考慮に加えて、風をより直接的に抑える生薬である釣藤鈎、防風、荊芥、薄荷も加えられます。このようにむずむず脚症候群には根治療法と対処療法のバランスをうまくとりながら治療する必要があるでしょう。


むずむず脚症候群の改善例


患者は50代前半の男性・電気設備工事業を経営。40代後半から脚がピリピリするような違和感を覚えていましたが、痛むわけでもないのでそのまま放置していました。しかし、仕事が一段落する夕方から徐々にピリピリ感が強くなりはじめ、不快感も大きくなってゆきました。


「脳梗塞みたいな怖い病気じゃないかと思って不安になり」病院を受診。そこではじめてむずむず脚症候群と診断されました。病院からはドパミン受容体作動薬を処方されたものの、仕事中に眠気と吐気が出てしまうので今は何も服用していないとのこと。


ご来局時に詳しくご症状を伺うと「毛糸の荒いセーターを着させられているような不快感がある」とのこと。ピリピリ感以外には不快感のために寝つきが悪くなり、気分も晴れないという。顔色はやや青白く、朝から重だるさを感じることもしばしば。


この方には血を補う生薬であり、不眠傾向も改善できる酸棗仁や竜眼肉、風を取り除く生薬である釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。この漢方薬を服用してから4ヵ月が経過した頃、ピリピリ感は徐々に弱くなり仕事や睡眠前でも意識しなければあまり気にならなくなってきたとのこと。この方は漢方薬を服用していると疲れにくく、全体的に体調も良いということもあり現在も継続服用されています。


おわりに


近年、「むずむず脚症候群」という病名の知名度が上がってきましたが、その不快症状自体を訴えられる方は以前から当薬局にしばしばいらっしゃいました。そしてむずむず脚症候群のことを指していると思われる古い文献も多数見受けられます。


それらを駆使し、むずむず脚症候群の症状が漢方薬の服用によって好転する方がとても多くいらっしゃいます。そして、むずむず脚症候群と漢方薬とは「相性」が良いと実感しています。是非一度、むずむず脚症候群にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 腰痛(坐骨神経痛などを含む) 】と漢方薬による治療

腰痛とは


つらい腰の痛みは老若男女問わず、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。実際、日本において腰痛は最も多い病気の一つといわれています。しかし、腰痛と一言で表現してもその内容は腰の筋肉の捻挫から疲労骨折まで多彩です。本ページではそのなかでも慢性的に続いている腰痛について解説してゆきます。


腰痛の原因と症状


ここではよく見られる腰痛の原因別に症状の特徴などを解説してゆきます。


姿勢の悪さによって起こる腰痛

机に向かってパソコンを扱う仕事が多い今日の日本において、姿勢の悪さはなかなか避けられないかもしれません。そもそも、良い姿勢とは背骨が縦に緩やかにS字カーブを描いている状態です。猫背や腰が反り過ぎているとS字カーブは描けず、腰椎(背骨の下部、腰のあたりの背骨です)付近の筋肉や靭帯が疲労して痛みが生じてしまいます。


姿勢の偏りや運動不足に起因する腰痛の多くはレントゲンといった画像診断でも異常は発見されません。したがって、西洋医学的な治療は鎮痛効果のある貼り薬の使用といった対処療法に限定されてしまいます。


ぎっくり腰(急性腰痛症)

腰痛で最も有名なのはこのぎっくり腰ではないでしょうか。西洋医学的には急性腰痛症、欧米では「魔女の一撃」とも表現されます。ぎっくり腰は腰を使った急な動き(重いものを一気に持ち上げる、バットを思いっきり振るなど)によって腰の筋肉や靭帯に起こる捻挫とされます。捻挫が起こった部分には炎症が起こり、つらい痛みが発生します。


坐骨神経痛

坐骨神経痛もぎっくり腰と並んで腰痛の代表格といえる存在です。その一方で坐骨神経痛は症状に対する名前であって病名ではありません。坐骨神経痛とはなんらかの原因で坐骨神経が刺激されて起こる痛みの総称なのです。したがって、下記で解説している椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症などを含めた幅広い腰痛をまとめて「坐骨神経痛」と呼称しています。


この坐骨神経とは腰から足にまで続く長く太い神経であり、坐骨神経痛を患うと神経に沿って下肢にしびれや痛み、麻痺などが生じるという特徴があります。つまり、腰のみではなく下半身に幅広く不快症状が現れることになります。


椎間板ヘルニア

腰椎を構成する椎骨(ついこつ)と椎骨の間にはクッション材の役割を担っている椎間板が存在します。椎間板ヘルニアはこの椎間板が何らかの原因で飛び出してしまい、神経を圧迫することで痛みが生じます。


椎間板ヘルニアの特徴としては神経圧迫によって起こる下肢のしびれや麻痺を伴う点です。椎間板ヘルニアはしばしば高齢者の病気と思われがちですが、若い方が重い荷物を急に持ち上げた際などにも起こります。


脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

脊柱とは簡単にいえば背骨のことです。この脊柱の中には脊柱管という空洞があり、そこには馬尾(ばび)などの神経や靭帯が収められています。狭窄とは狭くなることであり、脊柱管狭窄症は脊柱管の空洞が狭くなって起こる腰痛ということになります。


より詳しく説明すると、主に加齢によって椎間板が弱くなったり、靭帯の弾力性が低下したりすると徐々に脊柱管が狭くなってしまいます。そして、脊柱管が狭くなったことで、そのなかに収められていた神経が圧迫され、痛みが生じるのが脊柱管狭窄症です。椎間板ヘルニアと同じように腰痛だけではなく下肢のしびれや麻痺が特徴です。


腰椎変性すべり症

しばしば略されて「すべり症」と呼ばれます。その名の通り、椎間板というクッション材を挟んで積み上がっている腰椎同士がすべるようにずれてしまう病気です。多くは腰椎が前にすべってしまい、脊柱管内に収められている神経が圧迫されることで腰痛が起こります。脊柱管狭窄症と同様に加齢によって起こりやすくなる腰痛の一つです。


圧迫骨折

加齢によって骨密度が減少する病気を骨粗鬆症(こつそしょうしょう)といいます。椎骨は特に骨粗鬆症を患いやすく、圧迫骨折が起こりやすい部分とされています。椎骨の圧迫骨折による腰痛は背中の中央部から上にかけて発生しやすい特徴もあります。


腰痛の西洋医学的治療法


西洋医学的な治療はその原因によって大きく異なります。一方、多くの場合において非ステロイド性消炎鎮痛薬の貼り薬や飲み薬が用いられます。上記でも挙げた椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症などには鎮痛薬を用いて痛みを抑えつつ運動療法で改善を目指します。


下肢のしびれなどの神経障害が顕著な場合は手術が選択されます。骨粗鬆症による圧迫骨折に対しては手術の他にカルシウムやビタミンDを使用して骨形成を促します。


広く用いられている飲み薬の非ステロイド性消炎鎮痛薬、有名なものはロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)やボルタレン(一般名:ジクロフェナク)は痛みを取り除く力に優れている反面、胃腸障害の副作用が起こりやすいことが知られています。長期服用している場合は胃潰瘍や十二指腸潰瘍に注意する必要があります。


非ステロイド性消炎鎮痛薬でもセレコックス(一般名:セレコキシブ)、モービック(一般名:メロキシカム)、ハイペンやオステラック(ともに一般名:エトドラク)、異なる分類の解熱鎮痛薬であるカロナール(一般名:アセトアミノフェン)などは比較的、胃腸への負担が少ないといわれています。しかし、負担が無いわけではないので漫然とした長期服用は避けるべきです。


「生活面での注意と改善案」でより詳しく解説しますが、腰痛に対しては適度な運動(特に腹筋を鍛えるような運動)が非常に重要です。過度に腰痛を気にするあまり、横になってばかりいると筋肉が弱まり回復を遅らせてしまうこともあります。


腰痛の漢方医学的解釈


漢方医学的に見ても腰痛の原因はいくつか考えられます。そのなかでも頻繁に遭遇するのが血(けつ)の滞りである瘀血(おけつ)が関与しているもの、うまく利用されていない水分の塊である水湿(すいしつ)が関与しているもの、そして加齢に伴う腎虚(じんきょ)が関与しているものです。


漢方医学的に痛みが起こるメカニズムは、身体の機能維持や活動に不可欠な気や血の流れがせき止められた場合に発生すると考えます。腰痛以外にも生理痛や頭痛などにおいて刺すような鋭い痛みは瘀血が絡んでいることが多いです。他にも腰痛にくわえて高血圧、静脈瘤、多発するアザ、顔色の黒色化などが見られるようならば瘀血の存在が疑われます。


水湿の場合、何らかの原因で水湿が発生してしまうとそれが気や血の流れを悪くして痛みを発生させます。水湿が絡んだ痛みは鈍く重いという特徴があります。しばしば、夏場の高温多湿な状態で悪化する腰痛や関節リウマチなどは水湿が絡んでいるケースが多いです。


そして、腎虚とは現代風にいえば加齢によって起こる諸症状の原因とされます。腎虚になると腰痛以外にも足腰の弱り、下肢の冷え、歩行障害、排尿障害などの症状が引き起こされます。腎虚由来の痛みはマッサージや温めることで一時的に回復しやすい傾向があります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた腰痛の治療


漢方薬による腰痛の治療は主に瘀血、水湿、そして腎虚の改善を目指すことになります。しかし、多くの場合はこれらが重なり合って痛みを起こしているので特にどの病因が色濃いのか判断し、臨機応変な対応が必要になります。


まず、瘀血によるケースでは血の流れを促す活血薬(かっけつやく)である当帰、桃仁、川芎、牡丹皮、紅花、延胡索などが使用されます。血は気の力によって巡っているので、気の滞りによっても血の流れは悪くなってしまいます。そこで気の流れをスムーズにする理気薬(りきやく)の柴胡、厚朴、半夏、薄荷、枳実、香附子なども併用されます。


水湿が気や血の流れを止めているなら、水湿を除去する利水薬(りすいやく)である白朮、蒼朮、沢瀉、猪苓、茯苓などが使用されます。水湿はしばしば脾胃(消化器)の不調が原因で生まれやすいので、脾胃の状態を向上させる人参、大棗、甘草などの補気薬(ほきやく)も併せて用いられることが多いです。


腎虚による腰痛の場合、腎の力を補う補腎薬(ほじんやく)である鹿茸、地黄、山茱萸、山薬、枸杞子などが用いられます。腎虚による下肢の冷えなどが顕著な場合は身体を温める作用に優れている桂皮、乾姜、細辛、呉茱萸、附子などの散寒薬(さんかんやく)も追加されます。


腎虚に限らず、散寒薬によって患部が温められると瘀血や水湿も取り除きやすくなります。したがって、散寒薬は秋から冬にかけて悪くなる、つまり冷えによって悪化しやすい腰痛にしばしば使用されます。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。

 


生活面での注意点と改善案


腰痛が発生した直後、つまり急性期は基本的に患部を冷やして安静にすることが基本です。しかし、慢性になった腰痛に関しては患部を温めて軽い運動をすることで症状の緩和に繋がります。


運動の注意点としては腰に負担をかけやすい深くお辞儀をするような、大きく前かがみになる運動(体勢)は避けるべきです。しかし、逆にいえばそれ以外の運動はそれほど問題になりません。むしろ、家事やウォーキングといった軽運動は筋肉が硬直化するのを防ぐためにも積極的に行うべきです。


普段から正しい姿勢を意識することも大切です。直立姿勢の場合、頭が腰より前に出ている猫背の姿勢や、腰が反り過ぎてお腹が出ている姿勢は要注意です。耳、手の指先、かかとが地面に対して垂直に一直線上に並ぶ姿勢を意識しましょう。


机に向かってパソコンなどを使う仕事を長時間する場合、頭部が首の骨の上にまっすぐ「載っている」状態を意識しましょう。頭部が前のめりになると腰痛だけではなくつらい肩凝りの原因にもなります。


腰痛の改善例


改善例1

患者は30代前半の男性・建築士。学生時代は腰痛と無縁の生活を送っていましたが、建築士の仕事を始めた頃から慢性的な腰痛に悩まされてきました。病院を受診しても明確な原因は不明で鎮痛作用のある貼り薬を使用しても症状は緩和されませんでした。


建築士という仕事柄、椅子に長時間座ったままの姿勢が悪いと考えて適度な運動や色々なタイプの椅子を試してみるも効果は出ませんでした。腰痛の症状は徐々に悪化して、30代になった頃には立ち上がるたびに針を刺し込まれたような痛みが出るようになってしまいました。


詳しくお話を伺うと、腰痛以外の症状としては首と肩の凝りや疲労時の頭痛がありました。くわえて「どうしても平日は椅子に座っていることが多いので、休日は散歩に出たりしていますが、長時間歩いたり立っていると腰がつらくなる」とのこと。この方にはまず、筋肉の緊張を取り除く芍薬を中心に血の巡りを改善する牡丹皮や延胡索を含む漢方薬を服用して頂きました。


服用から3ヵ月が経過した頃には以前よりも腰の動かせる範囲が広がりましたが、やはりつらい痛みは残っているとのこと。この頃、建築士として独立開業した頃から腰痛は特に悪化したというお話を伺いました。設計の仕事だけではなく営業や会計などまで一人でやらなければならないことに強いストレスを感じているともおっしゃっていました。


このお話を受けて痛みの原因はストレスによる気の流れの滞りにもある考え、柴胡や枳実といった気の流れを改善する生薬を含んだ漢方薬を併用して頂きました。新しい漢方薬の組み合わせにしてから約4ヵ月がたった頃には痛みは半分以下になり、痛み自体が出る頻度も大幅に減少していました。


痛みが緩和したことでストレスも軽減され、充分な睡眠もとれるようになったことも良い循環に繋がっていると感じました。腰痛だけではなく、首肩の凝りや頭痛を訴えられることも少なくなりました。この方は徐々に気の流れを緩和する漢方薬のみで痛みがコントロールできるようになったので、この漢方薬を柱に現在も服用を継続されています。


改善例2

患者は60代前半の男性・税理士。50代前半に腰椎変性すべり症を発症して以来、腰痛と左足のしびれに悩まされるようになりました。病院の治療で仕事や日常生活を送るうえで問題ない程度まで回復はしましたが、冬になると痛みは強くなりとても辛いという。


詳しくお話を伺うと痛みは冷えによって顕著に悪くなり、温かいお風呂に入ると少し良くなる。それ以外にもしびれと頻尿(特に夜間尿)が目立ち「夕食後から冷たい水分を摂るのは控えているけれども、夜中に2回はトイレで起きる」とのこと。腰は痛みだけではなく重だるさと、他の部位よりも冷えがある。


これらのご症状からこの方の腰痛には腎虚が強く関与していると考えて、腎虚を回復する地黄や鹿茸を中心に身体を温める生薬を含む漢方薬を服用して頂きました。一般的に加齢とともに腎虚の症状は悪化しやすいので、まずは根気強い漢方薬の服用も併せてお願いしました。


漢方薬を服用し始めて4ヵ月が経った頃には下肢の冷えはだいぶ緩和して、厚着をして蒸れることも無くなったと喜ばれました。痛みは依然として残っているとのことでしたが、しびれも含めて回復を感じられるとおっしゃられました。


この年の冬は寒さが厳しかったので身体を温める生薬を追加するなどして微調整を行いました。それからさらに半年強が経過した頃には腰痛の症状が大きく改善し、軽い登山に行けるまでになっていました。夜間尿の回数も明け方の1回だけになり、睡眠も充分にとれているとのこと。しびれ感も下肢の冷えの緩和とともに気にならなくなっていました。


腎虚を回復する漢方薬はいわば「抗老化薬」といえるものなので、この方には強く継続をすすめて現在も季節性も考慮しながら微調節を行いつつ服用して頂いています。腎虚には老化によって起こる諸症状(この方のような腰痛や腰の重み、冷え、頻尿、その他にも体力の低下や視力や聴力の低下など)が含まれているのでそれを回復する漢方薬は、そのひとつで多くの症状を改善することが期待できます。


おわりに


近年、腰痛を患われている方がとても多くなった印象を受けます。特に病院に行っても原因不明で処理されてしまう腰痛が目につきます。やはり長時間労働による運動不足や同じ姿勢のままでいることが主な原因と考えられます。このタイプの腰痛を患っている方の割合は多い一方、西洋医学的な治療が難しいといわれています。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では西洋薬を服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、症状が好転する方がとても多くいらっしゃることから、腰痛と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、腰痛にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 顎関節症 】と漢方薬による治療

顎関節症とは


顎関節症(がくかんせつしょう)とは顎(あご)の関節や顎を動かす筋肉である咀嚼筋(そしゃくきん)のトラブルによって起こる病気です。主な症状は顎の痛み、口が大きく開けられない、口を開閉するたびにカックンと音がするといったものが挙げられます。顎関節症で最も訴えの多い痛みの症状は顎だけではなく、こめかみなど頭部のさまざまな部位でも起こります。


顎関節症の特徴として女性の方が患いやすく、その中でも若年から中年にかけてが多いことがわかっています。顎関節症を引き起こす原因は単一的なものではありません。しかし、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりによって顎に過度な負担がかかっていることが主要因と考えられています。


顎関節症の原因


顎関節症の発症はいくつもの要因が絡んだ結果として起こると考えられています。具体的には強い力を伴った歯ぎしりや食いしばり、左右のどちらかに偏った咀嚼の癖、歯のかみ合わせ不良、精神的ストレスによる全身の力みなどが挙げられます。


このように顎関節症を引き起こす原因は無意識のうちに顎の関節部分に過度な負担をかけてしまっているという共通点があります。さらに睡眠や食事といった生活習慣に関係が深いという点も特徴的です。


顎関節症の症状


顎関節症の症状は大きく3つに分けられます。顎の周辺を中心とした顎関節痛、大きく口が開けられないといった開口障害、そして開閉のたびに音が鳴る関節雑音が顎関節症の主要な症状です。 これら以外にも顎のだるさ、熱感、頭痛、首肩の凝り、眠りの浅さによる疲労の蓄積などもしばしば伴います。


上記のような症状の結果として長時間の会話ができない、集中力の低下、イライラ感、食欲不振なども起こりえます。このように顎関節症は「顎のトラブル」ではなく、心身全体に影響を及ぼしかねない病気といえます。


顎関節症の西洋医学的治療法


基本的に西洋医学的な顎関節症の治療は非外科的なものが中心であり、痛みに対しては内服の鎮痛薬を用いて対応することが一般的です。くわえて歯の摩耗の跡などによって歯ぎしりや食いしばりが確認できる場合は睡眠時のマウスピース装着も行われます。これらの効果が上がらなかった場合、歯や骨を削る外科的治療が選択肢となります。


顎関節症の漢方医学的解釈


漢方医学において「痛み」という症状は気血の流れが滞った結果として起こると考えます。顎関節症の中心症状であるつらい関節痛は漢方医学的に考えると痺証(ひしょう)とみることができます。痺証とは何らかの病邪によって気血の流れが阻まれ、その結果として痛みが起こるというものです。主な病邪としては風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、熱邪(ねつじゃ)、湿邪(しつじゃ)が挙げられます。


痺証以外にも精神的なストレスによっても気の流れは悪くなりますし、気の力で身体を巡っている血も、気の状態が悪くなると引きずられるように滞ってしまいます。このように顎関節症は病名からすぐに原因などが導かれるものではなく、個々人によって大きく病態も異なります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた顎関節症の治療


顎関節症の痛みが痺証による場合、痛みの現れ方や悪化する要因からどのようなタイプの病邪の影響が大きいかを理解することがとても大切です。具体的には冷えや高い湿度によって顎関節痛が悪化する場合は風寒湿痺、患部に熱感があり腫れが顕著なケースでは熱痺の可能性が高いです。


風寒湿痺の絡んだ顎関節痛には温性の麻黄、桂皮、防風、独活、蒼朮などの祛風湿薬を多く含んだ漢方薬が用いられます。熱痺の痛みに対しては寒性の薏苡仁や防已などの祛風湿薬に石膏や知母といった熱を冷ます力が優れている生薬(清熱薬)が組み合わされた漢方薬が適しています。


一方で顎関節痛がストレスで悪化する場合などは五臓六腑における肝のはたらきが乱れ、筋肉が過緊張状態に陥っている可能性もあります。このようなケースでは気の巡りをスムースにする柴胡、厚朴、半夏、薄荷、枳実、香附子などの理気薬を含んだ漢方薬が選択されます。


上記以外にも血の滞りによる瘀血(おけつ)も痛みを起こす原因となりますので充分に考慮するべきでしょう。このように顎関節症という病名だけではなく、治療にはどのような原因で顎に痛みや不快感が生じているのかを考える必要があります。


生活面での注意点と改善案


顎関節症は生活習慣の影響を受けやすい病気でもあります。歯が食いしばりなどによって削れている痕跡があるようなら睡眠時にマウスピースの着用も検討するべきでしょう。食いしばりが長く続くと顎関節症だけではなく、歯に亀裂が入り知覚過敏の原因にもなります。


食事中も知らず知らずのうちに左右のどちらかで噛む癖があると、顎のバランスが崩れて負荷がかかりやすくなります。こちらも右側で10回噛んで、左側でも10回噛むというように意識して均等にするべきでしょう。くわえて顎関節痛が強い時はあまり固いものを食べるのは避けるべきです。


そして日頃から「自分は無意識に力みやすい」という体質(癖)を自覚して、意識的に筋肉の力を抜く時間を設けることも大切です。肩や首の凝りが目立つ、気が付くと肩がいつも高い位置にあるような方は要注意です。


顎関節症の改善例


患者は30代前半の女性・薬剤師。数年前からハンバーガーなどを食べるために大きく口をあけるとカコンッと音がしたり、軽い痛みがあった。当時はご症状も頻繁ではなかったのであまり気にしてはいなかったとのことですが、残業やデスクワークが増えると食事中以外の時も顎やこめかみの部分に強い痛みが起こり始めた。


仕事への支障も出てきたので歯科医院へ行くと奥歯の摩耗から日常的な食いしばりの癖を指摘されマウスピースも作成。しかしながら、なかなかご症状は良くならず鎮痛薬の服用回数ばかりが増えることに心配となり当薬局へご来局。


お話を伺うと顎関節症による痛みと顎のだるさがいつも気になってしまうとのこと。それ以外のご症状としては首や肩の凝りと痛みも目立ち、気が付くと数分おきに首肩を自分でマッサージしているという。冷え性(冷え症)もつらく、冬場の外出はいつも着込んで「重装備」で対応している。


この方の顎関節痛には寒邪が関係していると考えて桂皮、麻黄、附子などの身体を温める生薬を中心とした漢方薬を服用してもらいました。服用から3ヵ月が経つと声が出てしまうほどの鋭い痛みのご症状はだいぶ緩和されたとのこと。一方でまだ違和感と首肩の凝りは続いていました。そこで時期的にも暖かくなってきたこともあり、柴胡や薄荷を含んだ心身の緊張を取り除く漢方薬に軌道修正しました。


新しい漢方薬を服用して2ヵ月ほどで効果は現れ、肩の力がうまく抜けるようになったとのこと。朝起きた時に目立っていた顎やこめかみの不快感も緩和されていました。この漢方薬を服用していると生理前の気分の沈みや生理痛も緩和されるということで、この方には継続して服用して頂いています。


おわりに


顎関節症を中心とした顎に関わるトラブルは軽度の方も含めると相当数に上るといわれています。その中でも慢性化したつらい痛みを伴う顎関節症は食事の際を筆頭に生活の質を大きく下げてしまいます。痛みだけではなく、会話中にも痛みや凝り感がある場合はなおさらです。


顎関節症は単独ではなく肩こり、頭痛、心身の緊張など複数の症状をしばしば伴います。漢方薬を用いた顎関節症の治療はこれらも含めた全身症状の改善を目指すものです。顎関節症にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

【 眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む) 】と漢方薬による治療

眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む)とは


眼瞼痙攣は瞼(まぶた)を閉じるための筋肉が過剰に緊張し、うまく眼が開かなくなってしまう病気です。眼瞼痙攣はジストニアという病気の一種です。ジストニアとは不随意、つまり自分の意志とは関係なく筋肉が緊張してしまい動作が止まってしまったり、身体が捻じれてしまう病気です。眼瞼痙攣の場合はまぶたという一部分(局所)に起こるため局所性ジストニアに分類されます。


眼瞼痙攣を主症状とする病気にメージュ症候群が挙げられます。メージュ症候群は眼瞼痙攣、まぶしさや光に対する過剰な不快感、まばたき、顔や口のしかめなどを主症状とします。メージュ症候群によって起こる筋肉の動きも不随意なものであり、意識してコントロールすることができません。眼瞼下垂もまぶたを上げる筋肉や神経のトラブルによってまぶたが下がってしまう病気です。本ページでは眼瞼痙攣にくわえてメージュ症候群と眼瞼下垂についても解説してゆきます。


眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む)の原因


まぶたの開閉を行っている眼輪筋を含む顔の筋肉は脳から伸びている神経によってコントロールされています。眼瞼痙攣やメージュ症候群、そして眼瞼下垂はこの神経か脳(特に大脳基底核と呼ばれる部分)が何らかの影響によってうまく機能しなくなったことが原因とされています。しかしながら、どのような問題が発端となって眼瞼痙攣などが起こるのか、まだ明確には解明されていません。


眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む)の症状


眼瞼痙攣は眼輪筋が異常に緊張してしまうことによってまぶたが開けにくくなってしまう病気です。眼瞼痙攣のより具体的な症状としては眼がうまく開けられない、まばたきの増加、光が過剰にまぶしくなる、眼の乾燥、眼の周辺がピクピクと動くなどが挙げられます。その他にも眼の痛み、異物感、かゆみ、涙が過剰に出るといった症状が出る場合もあります。


メージュ症候群の場合はこれら眼瞼痙攣の症状に加えて口や鼻など顔の筋肉の不随意運動が加わります。口を左右に動かしたり、顔をクシャッと中央に寄せるような独特な動きを繰り返すという特徴がメージュ症候群にはみられます。


眼瞼痙攣やメージュ症候群は比較的、女性に多い病気といわれており男性の2~3倍の頻度といわれています。特に中年以降に多く見られ、まぶたが開きにくくなる症状が顕著に現れやすいという特徴があります。


眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む)の西洋医学的治療法


主に筋弛緩作用のある薬や抗不安薬などが用いられます。その他にもボツリヌス菌の毒素を加工した薬をまぶたに注射して、筋肉の緊張を取り除くという治療法もあります。しかしながら、確実かつ継続的に眼瞼痙攣やメージュ症候群を治療できる方法は確立されていません。


眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む)の漢方医学的解釈


眼瞼痙攣やメージュ症候群の症状は筋肉の動きをうまく制御できないことが根本にあります。漢方において筋肉の動きは肝がコントロールしていると考えます。肝は筋肉の動きだけではなく、眼の働きを維持したり、気持や感情を落ち着ける働きを担っています。


この肝の働きが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼のはたらき、精神状態に問題が生じてしまいます。筋肉の不調は眼瞼痙攣やメージュ症候群、痙性斜頸、書痙などのジストニアに繋がります。眼瞼痙攣特有のまばたきも筋肉と眼の失調に寄るところが大きいでしょう。そして、気持ちの乱れはイライラ感、怒りっぽさ、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。


したがって、漢方においては肝に注目して眼瞼痙攣やメージュ症候群、その他の局所性ジストニアの治療を行うことになります。眼瞼痙攣の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。肝は多くの場合、精神的なストレスによって働きが低下してしまいます。したがって、精神的ストレスが多い場合はそれに対するケアも必要になります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた眼瞼痙攣(メージュ症候群と眼瞼下垂を含む)の治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いた眼瞼痙攣などの治療は肝の状態を改善することが中心となります。肝の機能の低下は、肝にためられていた血が消耗された結果として起こると考えます。したがって、眼瞼痙攣やメージュ症候群などの治療は血を補う漢方薬が中心となります。


血を補う生薬(補血薬)としては熟地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。特に芍薬は筋肉をリラックスさせる働きも持っているので眼瞼痙攣やメージュ症候群を治療する漢方薬にはしばしば含まれます。


さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える生薬(理気薬)、具体的には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが用いられます。他にも筋肉の緊張や震えを鎮める釣藤鈎、気持ちを鎮める竜骨や牡蠣などの生薬も併用されることが多いです。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


眼瞼痙攣の改善例


患者は30代前半の女性・アクチュアリー(保険数理士)。日頃からパソコンに向かって細かな数字を見る仕事をしていましたが、数年前からとてもディスプレイの光がまぶしく感じるようになった。最初の頃は眼精疲労のせいだと思っていましたが、徐々にご症状が悪化。まぶしさだけではなく眼の乾燥感やまぶたの重さ、強い首肩の凝りにも悩まされるようになってしまいました。


仕事柄、眼を酷使する生活でしたがご症状の強さに不安感を覚え、眼科を受診。そこで単なる眼精疲労やドライアイではなく眼瞼痙攣と診断され、紹介された神経内科を再受診。筋弛緩薬と抗不安薬の服用を始めました。それでもまぶたの重さは緩和されず、とうとう眼が「半開き」状態となってしまいました。ネットで「眼瞼痙攣」と検索しているうちに当薬局の存在を知り、ご来局されました。


お話を伺うまでも無く、ご来局された当時は眼瞼痙攣のご症状は重くほとんど眼が開いていない状態に近くなっていました。まばたきも多く仕事だけではなく日常生活においても非常に困っていらっしゃいました。それでも仕事はなんとか継続されていましたが、心身ともに疲労困憊という状態。精神的なストレスはピークという印象でした。この方には精神的ストレスを緩和する柴胡や厚朴、筋肉の緊張を緩和する葛根や芍薬を含んだ漢方薬を服用して頂きました。


漢方薬を服用し始めて4ヵ月が経過すると肩首の凝りは大きく改善され、精神的には少しずつ余裕が出てきたとのこと。漢方薬は同じものを継続することにしました。数ヵ月後にはまぶたが大きく上がるようになり、やや「細目」になっている程度まで回復されました。この頃、仕事の繁忙期に加えて東日本大震災の影響で仕事が激増。とても疲労感が強いということで人参や黄耆を含んだ気を補う漢方薬を併用して頂きました。


漢方薬開始からちょうど1年が経過した頃にはまぶたは元通りに開くようになり、眼瞼痙攣のご症状はすべて消失しました。現在はコンタクトレンズを使用しているということで、ドライアイや肩凝り防止の漢方薬に変更して継続服用して頂いています。


おわりに


眼はスマートフォンやパソコンの操作から「アイコンタクト」のように日常的な「コミュニケーションツール」という働きも担っており、あらゆる場面において不可欠な存在です。したがって、眼瞼痙攣やメージュ症候群、眼瞼下垂の症状は生活してゆく中で大きな不自由を強いるもので、そのストレスは測り知れません。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では筋弛緩薬などの西洋薬を使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてからまぶたの下がりなどの症状が少しずつとれてくることから、眼瞼痙攣に代表されるジストニアと漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、眼瞼痙攣にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 緊張型頭痛 】と漢方薬による治療

緊張型頭痛とは


緊張型頭痛とは首や肩の筋肉が緊張することによって起こる頭痛です。主に首筋から後頭部にかけて締め付けられるような痛みを生じます。 頭痛には本ページで取り上げる緊張型頭痛の他にも片頭痛や群発頭痛などが存在しますが、緊張型頭痛はもっとも一般的であり、多くの方にみられる頭痛といわれています。


高頻度に緊張型頭痛がみられる理由として、発症の原因が長時間のデスクワークや慢性的な運動不足といった現代的な生活スタイルに根差しているためであり、年齢や性別に関係なく発症する恐れのある頭痛といえます。その一方で痛みの強さは片頭痛や群発頭痛と比較すると弱く、吐気や嘔吐をともなうことはあまりありません。


緊張型頭痛の原因


緊張型頭痛は首や肩の筋肉が固くなり、血行が悪くなることが引き金となります。血行が悪くなると酸素といった栄養素の供給不足や老廃物代謝の滞りが発生し、その結果として後頭部を中心とした痛みや凝り感が現れてしまいます。


首や肩の筋肉の過剰緊張を起こしてしまう原因としては長い間、同じ姿勢でいたり過度な力が入りっぱなしになっていることなどが挙げられます。より具体的には同じ姿勢でパソコンをもちいた仕事をすることが多い、首肩の冷やし過ぎ、精神的な緊張のしやすさといったものが挙げられます。


緊張型頭痛の症状


緊張型頭痛の症状は圧迫感や締め付け感をともなう痛みであり、左右両方の首筋から後頭部にかけて現れやすいです。「ベルトで頭の周りを締め上げられているみたい」「重だるく鈍い痛み」と表現されることが多いです。痛みは脈を打つリズムで増したり、吐気や嘔吐をともなうことはあまりありません。緊張型頭痛はしばしば首肩の凝りや眼精疲労がたまる夕方以降に出やすい傾向があります。


緊張型頭痛の西洋医学的治療法


緊張型頭痛に対しては対処療法的に鎮痛薬をもちいるのが一般的です。首や肩の凝りが顕著な場合は筋弛緩薬を併用する場合もあります。精神的な緊張の高まりが肉体的な緊張に波及していることが明らかなケースでは抗不安薬の使用も検討されます。


しかしながら、抗不安薬には依存性の問題、吐気やふらつきといった副作用の問題もあるので慎重に使用されます。くわえて抗不安薬だけではなく鎮痛薬の連用は下記で解説します薬物乱用頭痛や胃腸障害のリスクを高めてしまうので、過度な使用は好ましくありません。


薬物乱用頭痛について


薬物乱用頭痛は鎮痛薬を日常的に使い過ぎることによって起こる頭痛です。薬物乱用頭痛はしばしば鎮痛薬誘発性頭痛、反跳性頭痛、薬物誤用頭痛などとも呼ばれます。「薬物乱用」と聞くと覚醒剤や脱法ドラッグのようないわゆる禁止薬物を連想しがちですが、この場合の薬物は一般的な頭痛にもちいられる鎮痛薬を指しています。


薬物乱用頭痛のくわしいメカニズムはまだわかっていませんが、鎮痛薬を使用し過ぎることで耐えられる痛みのラインが徐々に下がってしまい、些細な痛みにも敏感になってしまうと結果と考えられています。薬物乱用頭痛の危険性が高まる状況として、鎮痛薬を1ヵ月のうちに10~15日以上服用し、それを3ヵ月以上継続すると起こりやすいといわれています。


慢性的な頭痛を患っている方でついつい気軽に鎮痛薬を服用されている方、痛みが起こる前から予防的に鎮痛薬を服用される方などは薬物乱用頭痛も混在しているタイプの頭痛となっている可能性もありますので充分な注意が必要です。


緊張型頭痛の漢方医学的解釈


緊張型頭痛を漢方の視点から考えると、その原因は大きく3つが考えられます。まずは外邪の一種である風寒邪に襲われたケース。さらに気が不足しているケース。そして最後に血の巡りが悪くなっているケースです。 現実的にはこの3つの原因が重なり合って緊張型頭痛を引き起こしていると考えられます。


風寒邪が体表に取り付くと首や背中に痛みや締め付けられるような不快感を起こします。身体を長時間冷やしたり風に当たっていると風寒邪の悪影響を受けやすくなってしまいます。風寒邪は痛み以外にも寒気やふるえ、関節の重だるい痛み、クシャミや鼻水などを引き起こしやすいです。


気が不足してしまうと疲労感や身体の重だるさにくわえて風寒邪に代表される外邪から身体を守るバリア機能も低下してしまいます。したがって、気の不足した状態、つまり気虚の状態では容易に風寒邪による頭痛を誘発してしまいます。なお、気虚に陥ってしまうだけでもシクシクとした鈍い頭痛が起こりやすくなります。


風寒邪が身体に侵入すると血の流れを妨げてしまいます。気は血を巡らす原動力でもあるので気の不足もまた血の流れを悪くしてしまいます。血が滞っている状態、瘀血(おけつ)の状態では決まった同じ部分に鋭い痛みを引き起こします。


これらの原因はそれぞれが独立しているわけではなく強く関連しあっています。したがって、緊張型頭痛を治療の際には各原因の濃淡をしっかりと見極める必要があります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた緊張型頭痛の治療


漢方薬による緊張型頭痛の治療には風寒邪を身体から追い払う、気を補って抵抗力を底上げする、そして血の巡りを改善するという複数の方法をバランスよく行う必要があります。 具体的には緊張型頭痛を患っている方の症状の現れ方、緊張型頭痛以外の症状の有無、体質や生活環境などを総合的に考慮して漢方薬が決定されます。


冬や秋といった寒い時期に痛みが顕著になる、首や肩に締め付けられるような不快感が強い場合は風寒邪を発散させる麻黄、桂枝、細辛、生姜、紫蘇葉といった辛温解表薬を多く含んだ漢方薬が適しています。上記以外にも葛根は首や肩の凝りを緩和するはたらきに優れているのでしばしば緊張型頭痛の治療にもちいられます。


日頃から疲労感が抜けにくく、めまいや立ちくらみがあるような気虚の方には人参、黄耆、白朮、大棗、甘草などの補気薬を含んだ漢方薬が有効です。気が充実してくれば風寒邪が身体に侵入しにくくなり、緊張型頭痛に見舞われる頻度も低下してくるでしょう。


首や肩においていつも同じ場所が強く痛む、刺すような鋭い痛みがある、女性の場合は生理痛も重いといった場合は瘀血の悪影響が考えられます。このようなケースでは桃仁、川芎、牡丹皮、紅花、延胡索などの活血薬が豊富な漢方薬を服用するのがよいでしょう。


生活面での注意点と改善案


緊張型頭痛は多くの場合、肩や首の凝りがきっかけとなって発症したり悪化したりします。したがって、首肩の凝り対策が緊張型頭痛の対策となります。凝りを防ぐためには首周りを入浴などで温めたり、外気やクーラーで冷やし過ぎないことが大切になります。


首や肩を長時間、動かさないでいると血行が悪くなり凝りが起こりやすくなります。デスクワークが中心の方は意識をして首を左右に振ったり、回転させて筋肉の緊張をほぐすようにしましょう。首肩を動かすだけではなく、積極的に全身を使った運動を行うことは凝りの解消に有効です。特に水泳は首や肩、そして全身をバランスよく動かすので勧められます。


緊張型頭痛の改善例


患者は30代前半の女性・ファッション関連企業の会社員。一日中、パソコンの前で書類の作成やイベントの進捗状況の確認を行っているために慢性的な両肩の凝りに悩まされていました。特に季節ごとに行われる発表会が近くなると、精神的なストレスの増大もあってか肩凝りは悪化し、後頭部の痛みが現れてしまうという。市販の鎮痛薬を服用すれば痛みは鎮まる一方で、凝り感は解消されませんでした。鎮痛薬を長く飲むことでの胃への負担も心配となり漢方薬の服用を希望され、当薬局へご来局。


くわしくお話を伺うと典型的な緊張型頭痛のご症状にくわえて、生理不順(周期が不規則になり20日や40日で来たりする)や生理痛、そして足先の冷えもありました。全体のご症状からこの方は血の流れが悪くなっていると考え、血を巡らす桃仁や牡丹皮、筋肉の緊張を緩和する葛根や芍薬を含む漢方薬を調合いたしました。


漢方薬を服用されて2ヵ月が経つと、週2回マッサージに行っても残っていた肩の不快感は半分程度になり、頭痛の強さも鎮痛薬を使わなくても済む程度になっていました。その一方で冬のイベントに向けて精神的なプレッシャーが強く、気持ちが沈んでいるとのこと。生理の乱れや生理痛もイベント前はより一層悪くなりやすいということもあり、精神的な緊張を緩和する柴胡や薄荷を含んだ漢方薬に変更しました。


新しい漢方薬に変えて約2ヵ月が経過。冬のイベントも終わった頃にご様子を伺うと精神的には大変ではあったけれど、前回のイベント準備の頃と比較すれば大きく症状は改善されたとのこと。頭痛や肩凝りによって仕事に対する集中力の低下を感じることも少なくなり、強く意識される体調不良はないとのこと。昨年は靴下を二重にしないと耐えられなかった冷えも、頭痛と歩調を合わせるように気にならなくなっていました。


漢方薬を服用していると体力面でも余裕が出てくるということで、引き続き、同じ漢方薬を継続していただくことにしました。漢方薬を開始されて約1年が経つ頃には常に職場、バックの中、そして自宅に常備されていた鎮痛薬も「撤去」され、生理の状態も大きく乱れることはなくなっていました。


おわりに


緊張型頭痛は長時間のデスクワークや慢性的な運動不足が引き金となって起こる病気です。これらは現代人にとってなかなか避けがたいものであり、緊張型頭痛が頭痛の中でも大きな割合を占めている理由でもあります。


痛みは鎮痛薬をもちいることでほぼ確実に鎮めることができます。その一方で鎮痛薬の連用は消化器に負担をかけたり、薬物乱用頭痛に陥ってしまう危険性もあります。漢方薬による緊張型頭痛の治療はその痛みにだけ着目するのではなく、首や肩の凝りも含めた全身のご症状とご体質をもとにして調合されます。慢性的な緊張型頭痛や首肩の凝りにお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

【 片頭痛 】と漢方薬による治療

片頭痛とは


片頭痛はその名前の通り、頭部の片側に起こる痛みを指します。しかしながら、両側頭部に痛みが現れることもしばしばです。ときに「偏頭痛」と表記されている場合もありますが、正式には「片頭痛」がもちいられます。片頭痛は首や肩の凝りから起こる緊張型頭痛と並んでよくみられる頭痛であり、若年から中年の女性に起こりやすいといわれています。片頭痛の痛みは脈を打つリズムで現れやすいという特徴があり、その痛みは日常生活に支障をきたすほどになるケースもあります。


他の片頭痛の特徴としては前兆や随伴症状(片頭痛と一緒に現れる症状)の存在が挙げられます。代表的な片頭痛の前兆として、実際には存在しない独特の光が視界や視界の欠損が現れる閃輝暗点(せんきあんてん)が挙げられます。しばしば起こる片頭痛の随伴症状としては吐気や嘔吐、感覚過敏などが存在します。


片頭痛の原因


片頭痛の原因はまだ完全にはわかっていません。しかし、何らかの影響で血管が広がり、その血管を取り巻いている神経が刺激されて痛みが起こると考えられています。血管を広げてしまう要素、片頭痛を起こしやすくしてしまう要素としては精神的・肉体的ストレス、過労、睡眠不足や過眠、過度の空腹や満腹、雨や台風の接近といった天候変化、人混み、強い音や光などが代表的です。女性の方が片頭痛の起こる頻度が高いため、女性ホルモンや遺伝の影響も指摘されています。


片頭痛の症状


片頭痛の主な症状は片側の側頭部に生じる強い痛みです。「片」頭痛という病名ではありますが、実際には両側頭部や眼の奥に痛みを感じることもあります。片頭痛の痛みは脈拍のリズムでズキズキと痛むことが多く、このような痛みを拍動性(はくどうせい)の痛みといいます。この痛みは緊張型頭痛などと比較すると強く、仕事や日常生活に支障をきたしてしまうほどです。


片頭痛の特徴に閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる独特の前兆症状が挙げられます。閃輝暗点は自分にしか見えない光や視野の欠損が現れるというものです。シンプルに表現すれば、片頭痛が現れる前に目の前が光でチカチカしたり一部が見えなくなったりするというものです。多くの方は閃輝暗点の光を「ギザギザがつながったような光」「トゲのような光が連続して見える」「光の歯車が現れる」などと表現されます(「閃輝暗点」の画像検索結果はこちら)。閃輝暗点以外にも片頭痛が起こる前に身体の重だるさ、眠気、感情の乱れ、過食衝動などが現れることもあります。


片頭痛にはしばしば随伴症状がみられる点も特徴といえます。片頭痛の主な随伴症状としては吐気や嘔吐、胃もたれ、頭痛がないときは気にならないような音・光・臭いなどに対して過敏になるといったものが挙げられます。 随伴症状とはやや異なりますが、片頭痛の痛みは身体を動かすとより強くなる傾向があるので寝込んでしまったり、活動の積極性が低下する傾向があります。


片頭痛の西洋医学的治療法


西洋薬を使用した片頭痛の治療は大きく分けて2種類の薬が使用されます。まずは一般的に市販もされている鎮痛薬が挙げられます。代表的な鎮痛薬はロキソニン、バファリン、カロナール、ボルタレンなどが代表的です。そしてもうひとつはトリプタン製剤と呼ばれる片頭痛に特化したタイプの薬です。トリプタン製剤は主に血管を収縮させたり、痛みを感じさせる物質を抑制させることで効果を発揮します。


両者は優秀な薬ですが、鎮痛薬の多くは胃腸の粘膜に負担をかけて胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなってしまいます。トリプタン製剤は血管を収縮させるはたらきがあるので高血圧症、脳血管障害、心筋梗塞や狭心症などを患っている方には基本的に使用できません。くわえて、これらの薬は高頻度に使用すると下記で解説します薬物乱用頭痛を引き起こす可能性があるので、慎重に使用されます。


薬物乱用頭痛について


薬物乱用頭痛は鎮痛薬を日常的に使い過ぎることによって起こる頭痛です。薬物乱用頭痛はしばしば鎮痛薬誘発性頭痛、反跳性頭痛、薬物誤用頭痛などとも呼ばれます。「薬物乱用」と聞くと覚醒剤や脱法ドラッグのようないわゆる禁止薬物を連想しがちですが、この場合の薬物は一般的な頭痛にもちいられる鎮痛薬を指しています。


薬物乱用頭痛のくわしいメカニズムはまだわかっていませんが、鎮痛薬を使用し過ぎることで耐えられる痛みのラインが徐々に下がってしまい、些細な痛みにも敏感になってしまうと結果と考えられています。薬物乱用頭痛の危険性が高まる状況として、鎮痛薬を1ヵ月のうちに10~15日以上服用し、それを3ヵ月以上継続すると起こりやすいといわれています。


慢性的な頭痛を患っている方でついつい気軽に鎮痛薬を服用されている方、痛みが起こる前から予防的に鎮痛薬を服用される方などは薬物乱用頭痛も混在しているタイプの頭痛となっている可能性もありますので充分な注意が必要です。


片頭痛の漢方医学的解釈


漢方の立場から片頭痛を考えるとその原因は大きく分けて3つが考えられます。ひとつは外邪の影響を受けて現れるケース。もうひとつは気の流れが悪くなって起こるケース。そして気の不足が原因となるケースです。この3つの原因以外にも片頭痛の引き金となる要素はありますが、どのようなケースでもこれらは少なからず片頭痛に関与していると考えられます。


まず外邪とは簡単に表現すれば寒さや暑さといった環境要因といえます。外邪は身体に侵入すると気血の流れを妨げて痛みを起こします。片頭痛において問題となりやすいのは風寒邪や風熱邪です。


気の流れが悪い状態、つまり気滞の状態は主に精神的なストレスが積み重なることで起こります。気滞による頭痛は側頭部に起こりやすい傾向があるので、片頭痛の場合は気滞の有無をしっかりチェックする必要があります。


気は巡りが悪くなる他に不足しても痛みが生じます。気が不足した気虚と呼ばれる状態になると頭部を充分に栄養することができずシクシクとした鈍い痛みが繰り返し起こるようになります。


解説しきれませんでしたが、これら以外にも血や津液の巡りが悪くなってしまったことによる頭痛も存在します。しかし、多くの場合において片頭痛は上記3つのケースが複雑に関連し合って起こっています。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた片頭痛の治療


漢方薬による片頭痛の治療は痛みを起こしている原因によって大きく異なってきます。風寒邪などの外邪が繰り返し侵入していると考える場合は外邪を発散させる漢方薬。精神的なストレスによって片頭痛が悪化するようなら気の巡りを改善する漢方薬。そして、疲労によって痛みが現れるようなら気を補う漢方薬がそれぞれ適しています。各原因による痛みはその現れ方が異なりますので、それらを手掛かりに治療法を導いてゆきます。


秋から冬の寒い季節に片頭痛が起こりやすい、首や肩のこわばりや凝りも強い場合は風寒邪を追い出す麻黄、桂枝、細辛、生姜、紫蘇葉といった辛温解表薬を多く含む漢方薬が選択されます。頭の痛みにくわえてほてり感や張り感、眼の充血などがみられるなら風熱邪を追い出す葛根、柴胡、薄荷、連翹、升麻といった辛涼解表薬を配合した漢方薬が有効です。


精神的なストレスが溜まっている方、イライラ感とともに顔面の紅潮、ほてり、めまい、そして割れるような強い拍動性の痛みが現れるケースでは気の巡りを改善する柴胡、厚朴、半夏、薄荷、枳実、香附子などの理気薬を豊富に含む漢方薬が適しています。


疲れがたまる夕方から夜にかけて痛みが目立つ、昔から食が細く風邪をひきやすいような方には気を補う人参、黄耆、白朮、大棗、甘草に代表される補気薬を中心とした漢方薬を服用するのがよいでしょう。


現実的には単一の原因で片頭痛が起こっているケースは稀であり、患っている方の状態をしっかりと把握してバランスよく漢方薬を調合する必要があります。さらに生活環境や季節の変化も考慮する必要があります。


生活面での注意点と改善案


片頭痛は血管が広がることで痛みが起こるので、血管を収縮させることと血管を広げないようにすることが大切になります。実際に痛みが起こっているときは強い光や音といった強い刺激のない場所で休みましょう。


安静にしつつこめかみの部分を保冷材などで冷やしたり、手で押さえることが有効です。コーヒーや日本茶に含まれているカフェインは血管収縮作用があるのでこれらを飲むのもよいでしょう。逆に入浴や運動は痛みを強くしてしまうので控えましょう。


片頭痛を起こしやすくする食品としてはチョコレート、アルコール(特に赤ワイン)、チーズやヨーグルトに代表される乳製品、ハムやソーセージ、かんきつ類などが有名です。生活面においては睡眠不足や過眠、空腹や満腹、刺激の強い人混みなどが片頭痛を引き起こす要因になりえます。


一方ですべての人が挙げてきた要因で片頭痛が誘発されるわけではなく、とても個人差が大きいことが知られています。したがって、自身でどのようなケースにおいて片頭痛が起こりやすいかを日ごろから意識しておくことが大切です。


片頭痛の改善例


患者は50代前半の男性・会社役員。管理職として主に人事を担当しており、5~6年前から異動の計画を練るころになると細い釘が刺し込まれるような片頭痛が起こるようになった。度重なる面接など神経を使う仕事が重なる時期でもあるので「半ば、仕方がないと思っていた」という。しかし、年齢とともに体力の低下もあり、片頭痛によって仕事への影響が無視できなくなった。


当薬局へご来局されたときはすでに病院から薬が処方されており、その薬である程度は痛みのコントロールができていました。そのために片頭痛が出やすい繁忙期以外にも予防的に服用するようになっていました。しかしながら、完全に痛みを除くことはできず医師からも薬に頼り過ぎないように注意も出ていました。


くわしくご症状をうかがうと片頭痛は繁忙期以外にも強い日差しに当たった後にも起こりやすいという。片頭痛以外にも眼の疲れや充血も顕著で、いつも複数の目薬を鎮痛薬と一緒に持ち歩いているのだと薬専用のポーチを見せてくれました。


この方には精神的ストレスを緩和する、気の巡りを改善する柴胡や熱を鎮める山梔子などを含む漢方薬を服用していただきました。漢方薬以外ではどんなに忙しくても睡眠時間を最優先で確保するようにお願いしました。


漢方薬を服用して1ヵ月で眼の充血や疲れがなくなり、目薬を使う頻度がとても減ったとのこと。同じ漢方薬で4ヵ月が経過すると病院の薬を服用しなくても「痛みが現れてもなんとか仕事に支障が出ない、ギリギリのラインまで痛みが弱くなってきた」とのこと。


しかしながら、完全には痛みは除かれず「痛みの雰囲気が変わり、鋭さより鈍いような重いような痛みがある」という。痛みが現れやすいタイミングはやはり日に当たった外出後でした。そこで痛みの引き金が疲労、つまり気の低下と考え直して気を補う人参や黄耆を中心とした漢方薬へ変更。


新しい漢方薬にして3ヵ月程度が経つと重だるいような痛みも1/4程度にまで改善されていました。一方で面接や書類作成が積み重なる繁忙期になると「釘が刺さるような痛み」が出やすくなるので、最初に調合した気を巡らす漢方薬と後の気を補う漢方薬を時期や痛みの種類によって使い分けて頂くことにしました。


漢方薬を開始してほぼ1年が経つと病院の片頭痛の薬をほとんど服用せず、眼のトラブルも含めて漢方薬のみでご症状を抑えることが出来るようになりました。肉体的な体力の衰えを感じる頻度も減ったということもあり、この方には引き続き2種類の漢方薬を継続して頂いています。


おわりに


片頭痛の痛みは肩や首の凝りから起こる緊張型頭痛と比較して重く鋭いものといわれています。痛みによって仕事や家事に支障が出てしまうケースも多く、生活の質を大きく下げてしまう病気といえます。


近年、病院でもちいられる新型の薬によって片頭痛の治療は大きく進歩しました。その一方で新型の薬でも効果が出ない方や副作用によって継続的な使用が難しい方もいらっしゃいます。そのような方を中心に漢方薬は有力な選択肢といえます。慢性的な片頭痛にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

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