金匱要略
川芎3、甘草3、艾葉3、当帰4-4.5、芍薬4-4.5、地黄5-6、阿膠3
※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より
※単位は1日当たりのグラム
体力中等度以下で、冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの次の諸症:痔出血、貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血
※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より
芎帰膠艾湯の生薬構成は代表的な補血剤である四物湯(しもつとう)に阿膠、艾葉、甘草の3生薬を追加したものとなります(歴史的には芎帰膠艾湯の方が古いのですが…)。追加された阿膠と艾葉はともに止血効果を持つ生薬です。したがって、芎帰膠艾湯は血を補いつつ、補った血が漏れ出ないように止血する力も持つ漢方薬といえます。
阿膠は植物ではなく、ロバの皮を加工して作られたコラーゲンを主成分とする膠(にかわ)です。日本では中国と比較すると動物生薬の存在感が薄いですが、阿膠はそのなかでも日本でしばしば使用される動物生薬です。阿膠は止血作用にくわえて補血作用や身体に潤いを与える力もあります。
艾葉は草餅や草団子に使用される艾(よもぎ)であり、艾葉は加工されるとお灸で使用されるもぐさにもなります。最近では女性を中心に艾葉を蒸すことで発生する蒸気を浴びるよもぎ蒸しも流行しています。艾葉は阿膠と並ぶ有名な止血薬であり、身体を温める力にも秀でています。
芎帰膠艾湯は幅広い出血をともなう症状、特に女性器や肛門などの下半身を中心とした出血に使用されます。より具体的には血虚(けっきょ)が根底にあり疲労感、動悸や息切れ、顔色の青白さ、抜け毛、肌の乾燥や爪の荒れといった症状をともない、下半身から出血が起こっている方に適した漢方薬です。くわえて、補血と止血の他に艾葉を中心に安胎作用もあるので流産癖のある方の不育症治療にも応用できます。
芎帰膠艾湯は幅広い出血症状に使用できるとても優秀な漢方薬です。その一方でどのようなタイプの出血にも対応できるわけではありまえん。身体のなかの過剰な熱が暴走した結果として生じる出血、血熱(けつねつ)による出血には不向きです。
血熱が絡んだ出血の特徴としてはのぼせ感、眼の充血、顔面紅潮、口内炎、肌の発赤とかゆみ、イライラ感などのいかにも「熱っぽい症状」をともなう点です。血熱による出血は鼻血や喀血のように上半身に多い点も特徴的です。
血熱を鎮めるためには黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や三黄瀉心湯(さんのうしゃしんとう)といった清熱剤と呼ばれるカテゴリーの漢方薬が適しています。出血が進行して血虚の症状も現れるようなら黄連解毒湯と四物湯を合わせた温清飲(うんせいいん)がより良いでしょう。
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