漢方名処方解説

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補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

補中益気湯の出典

脾胃論

補中益気湯の構成生薬

人参3-4、白朮3-4(蒼朮も可)、黄耆3-4.5、当帰3、陳皮2-3、大棗1.5-3、柴胡12、甘草1-2、生姜0.5、升麻0.5-2

※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より
※単位は1日当たりのグラム

補中益気湯の効能・効果

体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒

※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より

補中益気湯の処方解説

補中益気湯は最も有名な補気剤といってもオーバーではない漢方薬です。別名が医王湯(いおうとう)という点からもその有用性がわかります。補中益気湯もまた補気剤の基礎といえる四君子湯(しくんしとう)がベースになっている点は他の補気剤、具体的には六君子湯(りっくんしとう)、参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)、啓脾湯(けいひとう)などと共通しています。

補中益気湯の特徴は3つ挙げられます。最初の特徴は補気作用を持つ生薬である黄耆が含まれている点。次に補血作用を持つ生薬である当帰を含む点。そして昇提(しょうてい)作用を持つ柴胡と升麻を含む点です。これらのポイントは他の補気剤にはあまり見られない、補中益気湯の個性を発揮させている源といえます。

黄耆は人参にならぶ優れた補気を持つ代表的な生薬です。そのため多くの専門書において補気薬を調べると人参の次に登場するのはこの黄耆です(ちなみに黄耆の次は白朮や甘草が多いです)。黄耆は気を補うことで気虚(ききょ)による止まらない汗、回復の遅い皮膚トラブル、そしてむくみの改善も期待できます。

続いて当帰は補気ではなく補血作用を持つ生薬です。血は気から生まれ、気もまた血に生まれ変わることができます。したがって、慢性的な気虚は結果的に血の不足である血虚(けっきょ)に陥ってしまいます。補中益気湯に含まれる当帰は気虚から血虚に陥った状態、または陥る前の状態で血を補ってくれるのです。

当帰によって血が満たされれば、その一部が気に生まれ変わります。したがって、補気剤に少量の補血薬をトッピングのように含めると治療効果がグッと向上します。当帰は血を補うだけではなく、血の巡りも改善してくれますので幅広い血のトラブルにもちいられます。

最後の柴胡と升麻ですが、これらは協同で昇提作用を発揮します(厳密には人参も昇提作用に関与しています)。柴胡と升麻の持つ升提作用とは気の低下によって起こった「落っこちている状態を引き上げる作用」といえます。具体的な「落っこちている状態」とは胃下垂、脱肛、子宮下垂、さらには慢性的な下痢などであり、補中益気湯はこれらの症状も改善します。

他にも柴胡と升麻は外邪(がいじゃ)を追い払う、つまり今日における感染症を起こすウイルスや細菌を追い払う作用もあります。したがって、日頃から体力がなくカゼを引きやすいような方にも補中益気湯は適しています。

補中益気湯における補足

補中益気湯をもちいる上でのポイントは疲労感が顕著な点です。一方で疲労感にくわえて食欲不振や吐気・嘔吐がよりつらい方には六君子湯が勧められます。六君子湯には鎮吐作用に優れた半夏と生姜のペアが含まれているのがその理由です。さらに消化器の弱い方はまれに補中益気湯に含まれている当帰で胃もたれを起こすこともあるので、六君子湯の方が無難といえます。

疲労感があり、なおかつ下痢や軟便を中心とした消化器系のトラブルが目立つ場合は参苓白朮散や啓脾湯がより適しています。この2つの漢方薬は四君子湯をベースに止瀉(ししゃ)作用、つまり水分の代謝を促進して下痢を鎮める生薬がより多く含まれているからです。

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