漢方名処方解説

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酸棗仁湯(さんそうにんとう)

酸棗仁湯の出典

金匱要略

酸棗仁湯の構成生薬

酸棗仁10-18、知母2-3、川芎2-3、茯苓2-5、甘草1

※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より
※単位は1日当たりのグラム

酸棗仁湯の効能・効果

体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの次の諸症:不眠症、神経症

※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より

酸棗仁湯の処方解説

酸棗仁湯はその処方名が示す通り、心血を補うことで心血虚(しんけっきょ)を改善する酸棗仁を中心とした漢方薬です。心血が不足した心血虚の状態に陥ると精神状態が不安定化し、不安感や不眠が現れやすくなります。そのような症状を酸棗仁湯は改善します。

より細かく処方を見てみると、茯苓は酸棗仁とともに精神状態を落ち着かせ、知母は心血が不足したことで相対的に亢進した熱を鎮めます。川芎は補われた血を巡らし、甘草は気を補いつつ生薬全体のバランスを調和させます。

酸棗仁湯における補足

酸棗仁湯は「不眠症の漢方薬」として有名であり、特に眠りが浅くて夜に何度も目が覚める、夢を多く見るような心血虚による不眠症に効果があります。もし心血虚による不眠や不安感といった精神症状だけではなく、消化器が弱くて食が細かったり疲労感なども顕著な場合は心血だけではなく気も補う帰脾湯(きひとう)が最適です。

一方で酸棗仁湯や帰脾湯は興奮が続いて目が冴えてしまい、なかなか入眠できないタイプの不眠症はやや苦手とします。このようなタイプの不眠は精神的なストレスなどによって気の流れが停滞し、身体のなかに悪さをする熱が生じていると考えます。

寝つきの悪さにくわえてのぼせ感、焦燥感、眼の充血や口内炎などが現れやすいようなら黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、さらに便秘があるなら三黄瀉心湯(さんのうしゃしんとう)などが良いでしょう。熱性の症状と寝つきの悪さにくわえて、イライラ感、不安感、胃腸の不快感といった症状があれば柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)が適しています。

上記で示した通り単純に「不眠症だったらこの漢方薬!」とはなりません。あくまでも不眠症を起こしている原因を症状や体質から突き止める必要があります。この点が作用時間の長短を主な判断基準にする西洋医学の睡眠導入剤と大きく異なる点といえるでしょう。

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