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【 排卵痛 】と漢方薬による治療

排卵痛とは

排卵痛とはその名前の通り、排卵の際に起こる痛みを指します。痛む場所は下腹部以外に腰痛や頭痛として現れるケースもあります。排卵は生理周期が28~30日で安定している方の場合、生理開始日から14~15日後に起こりますので、排卵痛もこの期間に起こりやすいです。

排卵痛の原因

排卵とは妊娠のために必要な卵子が卵巣を破って排出されることです。「卵巣を破って…」と表現すると痛々しいですが、排卵自体は生理(月経)の正常なサイクルであり問題はありません。

しかしながら、体質的に卵子排出の際に生じる卵胞液や血液が腹膜を刺激して、強い排卵痛を感じてしまう方もいらっしゃいます。

排卵痛の症状

排卵痛は主に卵巣の位置する下腹部の片側(右側か左側)に起こりやすいですが、腰痛や頭痛を訴えられる方もいらっしゃいます。痛みの起こり方に個人差はありますが、チクチクと刺されるような痛みと表現される方が多いです。

「痛み」の症状ではありませんが、排卵期に倦怠感、日中の眠気、めまいや立ちくらみ、むくみ、吐き気、ニキビ、イライラ感、便秘や下痢、おりものの増加といった不快症状が現れる方も少なくありません。

排卵痛は2~4日程度で鎮まるケースが多いです。当薬局にご来局される方の中には痛みが10日以上に及んでしまうケースもしばしばです。そうなると生理痛も強くて長引く方ですと、1ヵ月の半分以上の期間で痛みに襲われてしまうことになります。

排卵に伴う出血が強く出やすい方では慢性的な貧血に陥りやすくなってしまいます。他にも出血が長期間続いてしまうと外出への積極性が失われてしまうなど、生活の質の低下も問題となります。

排卵痛の西洋医学的治療法

軽度の排卵痛であれば経過観察や鎮痛薬を使用して対応することになります。一方で強い痛みや不正性器出血が長引く場合、子宮内膜症などが隠れている可能性もあるので詳しい検査が必要となります。

排卵痛の漢方医学的解釈

漢方医学において「痛み」は血や気が滞り、スムーズに巡らなくなると生じると考えます。その中でも排卵痛は血の滞りと関連が深いです。漢方医学ではこのような血の滞りを瘀血(おけつ)と呼びます。

瘀血は冷えや炎症などによって生じやすくなります。他にも血は気の力で身体中を巡っているので、気の停滞や不足もまた瘀血の原因となってしまいます。

寒い季節でも薄着で過ごしたり、冷たい生ものや水分を摂り過ぎてしまうと血の巡りは悪くなってしまいます。気の巡りは精神的なストレス、気の不足は過労や睡眠不足などで起こりやすいです。排卵痛に悩まれている方は上記のような生活の乱れにも注意が必要です。

漢方薬を用いた排卵痛の治療

排卵痛の治療は血の滞り、つまり瘀血を改善することが重要となります。瘀血を取り除く生薬は活血薬(かっけつやく)と呼ばれ、これらを含んだ漢方薬が排卵痛治療の中心となります。

活血薬には桃仁、川キュウ、牡丹皮、紅花、延胡索などが含まれます。排卵痛にくわえて生理痛、生理不順、経血の塊が多い、肌にアザができやすい、さらに子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系疾患もあるようでしたら瘀血に陥っている可能性が高いです。

排卵痛にくわえて疲労感、気力の低下、食欲不振、めまいや立ちくらみ、風邪をひきやすいような方は気の不足である気虚(ききょ)の状態と考えられます。気を補う補気薬(ほきやく)である人参、黄耆、白朮、大棗、甘草を使用して血の流れを後押しする必要があるでしょう。

他にも寒くなる秋から冬に排卵痛がひどくなる方には身体を温める散寒薬(さんかんやく)、ストレスがたまると痛みが増す方には理気薬(りきやく)を含んだ漢方薬も検討されます。

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生活面での注意点と改善案

当薬局にご来局される排卵痛、さらに生理不順や生理痛に悩んでいる女性のほぼすべてに共通しているのが冷え性(冷え症)です。冷えは血の流れを悪くしてしまうので子宮の栄養状態が悪くなり排卵痛や生理痛、さらに不妊症などを起こしやすくなります。まずはこれ以上身体を冷やさないようにすることが大切になります。

服装に関しては特に冬の服装、ファッション重視の薄着は問題になりがちです。以前、「ファッションは我慢」という言葉を聞いて妙に納得したことを記憶しています。しかし、金銭面の我慢ならともかく、健康に問題が出てきては我慢している場合ではありません。

しばしば、「生足」「へそ出し」「ノースリーブ」という「冷え性(冷え症)・三種の神器」を携えてご来局される方も多くいらっしゃいます。そうなるといくら漢方薬で対応しても、薬効を相殺されてしまい充分な効果が期待できなくなってしまいます。

まず、冷え性(冷え症)の方は「毛糸の靴下」「下着の上に毛糸のパンツ」「腹巻」という「保温・三種の神器」がお勧めです。その他にもカーディガンや毛布などを持ち歩くと外出時のクーラー対策にもなります。これは夏場の予期せぬクーラーにも有効です。

他にもぬるめのお風呂に長く浸かるといった方法も冷え性(冷え症)には有効です。熱過ぎるお風呂は長く浸かっていられないので結果的には身体の芯まで温まらなくなってしまいますので注意してください。

さらにシャワーは身体の汚れを落とすものであり、温めるものではありませんので冬だけではなく夏もしっかりと湯船に浸かることをお勧めいたします。

他にも身体を動かさないと血の巡りは必ず悪くなってしまいます。言い換えれば身体を動かすことで、より直接的に血の巡りを改善することが可能となります。

激しい運動の必要はないので、買い物の際に少し遠回りする、出来るだけエレベーターではなく階段を使用するといった、手が付けやすく継続しやすいところからスタートしてください。

排卵痛の改善例

患者は30代前半の女性・システムエンジニア。20代の頃から生理痛にくわえて排卵痛も強く、頻繁に鎮痛薬を使用していた。社会人になってからコロナ禍となり、多くの時間をリモートワークでこなすようになると、より排卵痛が目立つようになった。

不安になり婦人科を受診するも子宮内膜症のような明確な原因はなく、やや貧血気味だったので鉄剤と鎮痛薬のみの処方。当薬局へは排卵痛や生理痛にくわえて足先の冷えも強く、不快感が顕著ということでご来局。

くわしくご症状を伺うと生理痛は生理前の1週間ほど前から始まり、仕事に支障が出るくらい強い。それにくわえて生理の2週間後から起こる排卵痛も生理痛に匹敵するくらい重いという。排卵痛も5~7日ほど続き、少量の出血もあり。

結果的に1ヵ月の半分近くで不快な痛みに悩まされていらっしゃいました。この方には血の巡りを改善する当帰、芍薬、延胡索などから構成される漢方薬を服用して頂きました。他にもリモートワークの日は全く動かないとおっしゃっていたので、冷え性(冷え症)対策にもつながる軽いウォーキングもあわせてお願いしました。

効果は比較的早くあらわれ、服用から1ヵ月後の生理では排卵痛と生理痛はほぼ半分程度に改善されました。しかし、その後の回復は停滞し、逆に生理不順や下腹部の張り感などが目立つようになってしまいました。

改めてご様子を伺うと、徐々にリモートが解除されて出勤することが多くなり対人関係のストレスが再燃したとのこと。人手不足で慣れない人事系の仕事まで増えてイライラ感も顕著。この点から気の巡りの悪化を考え、香附子や枳実といった気の流れをスムーズにする生薬を含んだ漢方薬へチェンジ。

その後は排卵痛の改善もより進み、ほぼ痛みは消失。腹部の不快な張り感や出血も改善されました。会社の健診でも貧血の指摘は無くなり、つらい足の冷えも減ってきました。仕事上でのイライラは完全には消えないとのことですが、ストレスからダイレクトに体調不良につながることは大きく減りました。

現在は漢方薬を服用していると生理周期の予想もしやすくなり(ほぼ28~30日周期に安定)、痛みでスケジュール変更を余儀なくされることも無くなったとのことで、継続服用されています。

おわりに

一般的に排卵痛は生理痛と比較すると軽いケースが多く、放置されがちの印象があります。一方、当薬局にいらっしゃる方の中で、生理痛とあわせて排卵痛に悩まされている方は少なくありません。痛みの継続する期間が長ければ生活の質の低下に直結してしまいます。

漢方薬を用いた治療の優れている点は排卵痛や生理痛だけではなく、生理不順や冷え性など幅広いご症状にまとめて対応できる点です。排卵痛にお困りの方はぜひ一度、当薬局へご来局頂ければと思います。

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