呑気症(どんきしょう)とは呼吸時などに意図せず多くの空気を飲み込んでしまい、ゲップや腹部の張り、吐き気といった不快感が生じるものです。呑気症はしばしば空気嚥下症(くうきえんげしょう)とも呼ばれます。
人間は普段から食事の際、食べ物や飲み物と一緒に空気も飲み込んでいます。一方で呑気症の場合はその量が多かったり、食事以外の時にも無意識に空気の飲み込みが行われてしまいゲップなどの症状が起こります。
呑気症では空気を吸い込んだことによる上記のような症状以外にも、歯のかみしめによる顎(あご)の痛み、首や肩の凝り感といった症状が起こることもあります。これらの症状を「噛みしめ呑気症候群」と呼びます。
呑気症の原因はまだはっきりとわかっていませんが、精神的なストレスとの関連が強いと考えられています。特に緊張感や不安感が大きい時などに生じやすいとされています。
実際に一二三堂薬局へご相談に来られる方も、プレッシャーのかかる発表の前や、慣れない人との会食時などに呑気症が悪化してしまうケースが多いです。
呑気症は空気の飲み込みによって、下記のような多くの胃腸症状を引き起こします。
呑気症で最もよく見られるゲップやガスは出すことで一時的に症状が緩和されることもあります。一方で呼吸は常に行われているので、すぐに不快症状が再発しやすいです。
過剰な空気の飲み込みは呼吸時の他に、食事の際にも起こりやすいです。食べ物と一緒に空気を飲み込むことで、食事中や食後に症状が悪化してしまう傾向があります。
会食中はいつも以上にゲップやガスを出してはいけないという意識が高まりやすいです。結果的に焦りから早食いになり、症状が悪化する悪循環にも陥りやすいのも呑気症の特徴です。
誰しもストレスのかかる場面で身体に力が入ってしまう経験はあるのではないでしょうか。呑気症の方は無意識のうちに身体を緊張させてしまう傾向がより顕著な印象があります。
大量の空気の吸い込みによって起こる胃腸症状に加えて、空気を飲み込む際に歯を強くかみしめてしまうことによって起こる「噛みしめ呑気症候群」と呼ばれる症状が現れることがあります。
噛みしめ呑気症候群は顎に過剰な力と負担がかかることで、下記のような消化器以外の症状を引き起こします。
消化器症状よりも噛みしめによる症状が強い方は、自分が呑気症を患っていると気付かないままの方も少なくありません。
呑気症によるゲップや吐き気などが刺激となり、唾液過多症に陥るケースもしばしば見られます。過剰な唾液の分泌は嚥下回数の増加にもつながり、より呑気症を悪化させてしまいます。
他にも精神的なストレスから下痢、腹痛、腹部の張りなどを起こす過敏性腸症候群も併発しやすい病気のひとつといわれています。
実際に一二三堂薬局に呑気症の相談で訪れる多くの方が、呑気症に加えて唾液過多症や過敏性腸症候群を併発している印象があります。
呑気症は西洋医学的にその原因が不明確なので、西洋薬による治療法はまだ確立されていません。
その一方で鎮吐薬や消化酵素薬などの消化管機能改善薬を用いるケースが多いです。それらに加えて精神症状が顕著な場合は安定剤の使用も検討されます。
呑気症は漢方医学において気滞との関連が深いと考えられます。気滞とは主に精神的ストレスなどによって気の巡りが悪くなることによって起こる病的状態です。
気滞によって起こる典型的な症状としては下記のものが挙げられます。
上記の通り、気の巡りが悪くなると消化器症状に加えて精神的な症状も起こりやすくなります。
そして気滞による症状と呑気症の症状は多くが共通していることが分かります。特に呑気症は上腹部で生じた気滞が顕著になった、胃気滞と考えられます。
呑気症を気滞と捉えた場合、漢方薬による治療方法は滞ってしまった気の巡りを改善する理気が中心となります。加えて気を補うことで消化器の状態を改善することも大切です。
気の流れを改善する代表的な生薬には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが挙げられます。これらは理気薬と呼ばれ、しばしば呑気症の治療の軸として用いられます。
理気薬を含んだ漢方薬で気の巡りが改善すれば、呑気症の症状に加えて精神的にもリラックスできるようになり、呑気症のさらなる悪化を食い止めることができます。
身体のトラブルはもともと弱い部分に起こりやすく、呑気症の場合も生まれつき胃腸虚弱の方が患ってしまうケースが多いです。
体質的に食が細くて太れない方は気が不足している気虚の体質かもしれません。気虚の方には人参、黄耆、白朮、大棗、甘草などの補気薬を含めた漢方薬を服用していただき、ちょっとした不調に負けない胃腸づくりが不可欠です。
このように呑気症の治療には総合的な視野が欠かせません。「呑気症」という病名にだけこだわらず、心身においてどのようなトラブルが起こっているのかを把握することがとても大切です。
呑気症を気滞の一症状と考えた場合、過剰な精神的ストレスの蓄積は避けるべきです。しかしながら、ストレスは避けようとして避けられるものではありません。
まず建設的な対処法としては休日や睡眠時間を削り過ぎないことが大切です。睡眠時間の理想は7時間以上、出来れば6時間は下回らないようにしたいです。
もし噛みしめ呑気症が顕著な場合、マウスピースの装着も有効です。
食生活においては腹部が張りやすくなる発酵食品(納豆、キムチ、ヨーグルト、乳酸菌飲料など)、小麦製品、炭酸飲料は控えめにするのが良いでしょう。加えてできる限り温かい食べ物を摂るように努めましょう。
早食いも食事と一緒に空気を飲み込むリスクを高めてしまうので控えましょう。意識して、1.5倍ほどの時間をかけて食事を摂りましょう。
気の巡りの改善には早歩き程度のウォーキングが有効です。心身がリラックスし、筋肉の過剰な緊張による腹部の張り感や首肩凝りの改善にもつながります。
ジムでの強い負荷をかけるような運動よりも上記のようなウォーキングやヨガなど、緩めることを意識した運動がより望ましいです。
患者は30代前半の男性・会社員。もともと緊張しやすく、緊張してしまうと吐き気やゲップが出やすかったとのこと。
現在の会社に就職し、先輩たちと一緒に食事を摂るようになると緊張からか吐き気やゲップに加えて腹部の張り感も現れるようになったという。これらのご症状が出始めてからは、簡単に飲み込める麺類ばかり食べているとも。
消化器内科を受診して吐き気止めと胃酸分泌を抑制する薬を半年服用してもご症状の改善は見られず、当薬局へご来局。
ご様子を伺うと典型的な呑気症のご症状に加えて腹痛と便秘もあり、ご症状は消化器全体に現れていました。
そこでまず呑気症などの原因は気滞によるものとみて、気を巡らせる柴胡、芍薬、枳実、半夏、陳皮などから構成される漢方薬を服用して頂きました。
服用から3か月が経つとだいぶゲップや吐き気といった上腹部のご症状は改善してきましたが、今度は疲労感や軟便が気になるとの訴え。
そこで半夏や陳皮に加えて人参、白朮、茯苓などの気を補う漢方薬に切り替えてまた数ヶ月服用して頂きました。
服用から半年以上経過したころにはほぼ呑気症と思われるご症状は消え、同僚たちとも問題なく会食が行えるまで回復されました。
その一方で体格的に痩せ型で体力も決して充実しているといえない方でしたので、引き続き、気を補いつつ巡りも改善するこの漢方薬を継続的に服用して頂いています。
「呑気症」や「空気嚥下症」という病名の知名度が低い一方で、ゲップや吐き気、膨満感といった症状に長年悩んでいる方は決して少なくありません。
消化器内科や心療内科などを受診してもなかなか改善されないケースも多い病気です。
漢方薬を用いた呑気症の治療はその方の症状に合わせて調整が幅広く行える点が強みになります。
当薬局へご来局される多くの方が典型的な呑気症の症状に加えて緊張感や不安感、唾液過多症、過敏性腸症候群による腹痛や下痢なども併せ持っています。
このような方にも対応できるのが漢方薬の優れた点です。呑気症でお困りの方はぜひ一度、東京・池袋の一二三堂薬局にご相談ください(ご予約はこちらから)。