後頭神経痛とは後頭部や耳の後ろにピリピリとした、電気が走るような痛みが起こる末梢神経痛です。
後頭神経痛は頭部の後ろ側を通っている神経(大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経)のどれかが、周囲の筋肉などによって圧迫されて起こると考えられています。
「筋肉の圧迫」とは簡単に言えば首や肩のこりです。国民病といえる首や肩のこりを主因とする後頭神経痛は、現代において、誰にでも起こる病気といえます。
後頭神経痛は脳本体や脳内の血管トラブルではなく、命に関わる病気ではありません。一方で鋭い電撃的な痛みを特徴とし、慢性化すると生活の質を大きく下げてしまう病気です。
本ページでは後頭神経痛の解説と漢方薬による治療、そして私自身(一二三堂薬局代表、吉田健吾)が実際に後頭神経痛になった際の克服体験を紹介します。
後頭神経痛の大きな特徴は、神経痛特有の電気が走るような痛み方です。しばしば「ピリピリ」「ビリビリ」「針で刺されているような痛み」と表現されます。痛みは瞬間的に鋭く起こる点も、他の頭痛と異なり特徴的です。
後頭神経痛と同様に、首や肩のこりなどで起こる緊張型頭痛は頭の広範囲が締め付けられるようにズーンと鈍く痛みます。時間的にもダラダラと長時間続く傾向があります。
片頭痛(偏頭痛)は心臓の動きにあわせてズキズキと痛みやすいです。加えて吐き気や嘔吐を起こしやすい点も後頭神経痛と異なります。
症状の現れ方が痛みにまで至らない場合もあります。このようなケースでは肌の表面に「ヒリヒリ」「ジリジリ」するような不快な感覚異常として発症します。
後頭神経痛においては肌表面が赤くなるような、外観の変化は起こりません。しかし、発症部位が頭髪の中だと目視が難しいので、肌荒れが起こっていると勘違いされ後頭神経痛が放置されてしまうケースもあります。
後頭神経痛の起こる場所は、首の付け根~耳の後ろ~頭頂部にかけての頭皮になります。痛みは必ずこの範囲全体になるわけではありません。
ダメージを受けた神経に沿って痛む場所は変わり、左右のどちらかに起こる場合が多いです。「後頭」神経痛という病名ですが、耳の周りの側頭部や首など、広範囲に発症する可能性があります。
後頭神経痛が慢性化してしまうと、日常生活の些細な刺激でも痛みが生じやすくなります。具体的には櫛(くし)で髪をとかす、帽子をかぶる、枕との接触などが挙げられます。
睡眠時に使う枕によって痛みが生じてしまうと不眠症の原因にもなります。睡眠の質の低下はさらなるストレスの増加、そして後頭神経痛の悪化を招くこともあります。
後頭神経痛は神経が筋肉などによって圧迫・刺激されることで起こると考えられています。下記は主な後頭神経痛を引き起こす原因となります。
長時間のスマホやPCの使い過ぎは前かがみの姿勢に固定されてしまい、首肩こりの原因となります。慢性的な首や肩のこりは後頭神経痛の他に、緊張型頭痛の原因にもなります。
精神的なストレスは自律神経の交感神経を興奮させます。これは身体が「戦闘モード」に入っている状態です。
ストレスが長時間にわたってかかり、戦闘モードが慢性化してしまうと常に身体に力が入った状態となってしまいます。そして硬くなった筋肉が神経を刺激し、後頭神経痛を起こしやすくしてしまいます。
交通事故、スポーツ、ウイルス感染などによる後頭部周辺の外傷も後頭神経痛の原因となります。これは神経が直接ダメージを受けてしまった場合、加えて傷の回復過程で神経に触れるように組織の再生が行われてしまった場合でも発症の原因となります。
一般的な西洋医学的治療法としてはロキソニンやボルタレンなどの消炎鎮痛薬、筋肉の緊張を緩和するミオナール、神経痛治療薬のリリカ、神経修復作用のあるビタミンB12製剤のメチコバールなどが治療の中心となります。
上記の治療薬でも改善がみられない場合は神経ブロック注射と呼ばれる、局所麻酔を注射する治療法も選択されます。
漢方医学では血や気の流れが悪くなると、そこに痛みが生じると考えます。血の滞りは瘀血(おけつ)、気の滞りは気滞(きたい)と呼ばれます。
加えて後頭神経痛のケースでは風寒邪(ふうかんじゃ)が気血の巡りを妨害しているケースが多いです。
血の巡りは長時間同じ姿勢でいたり、慢性的な運動不足で悪くなってしまいます。したがって、デスクワークの多い現代人は瘀血になりやすい環境に身を置いていることになります。
瘀血に陥ると痛みの他に、首や肩のこり、しびれ、冷えやのぼせ、肌のアザや目のクマ、女性の場合は生理痛や生理不順も起こりやすくなります。
気の滞りは精神的ストレスや運動不足などによって引き起こされます。気は血の流れを後押ししているので、気滞になってしまうと瘀血にもなりやすくなってしまいます。
気滞が生じると心身両面の緊張、不安や憂うつ感、不眠、食欲不振、喉・胸・腹部の圧迫感などが起こりやすくなります。
風寒邪を簡単に表現すると、秋~冬の寒さとそれによる身体への悪影響全般を指します。
身体が風寒邪に襲われると首や肩のこわばり、頭痛、ふるえ、しびれ、水っぽい鼻水やクシャミなどが出やすくなります。加えて風寒邪は気血の流れを悪化させる原因にもなります。
漢方相談を受けていると、後頭神経痛は上記で挙げた瘀血と気滞の状態、そこに風寒邪が追い打ちをかけて生じるケースが非常に多いです。
気血の巡りは、長時間のデスクワークやスマホの使用が当たり前となった現代人の多くで悪くなっています。そこに薄着や入浴せずシャワーのみで済ます生活を送っていると、後頭神経痛を発症しやすい環境が揃ってしまうのです。
後頭神経痛の治療の中心となるのは血と気の巡りの改善であり、特に血の巡りは重要です。加えて冷え性や発症したのが寒い時期の場合、しっかり身体を温める必要もあります。
後頭神経痛を改善する漢方薬は、下記で紹介する生薬を患者さんの症状や体質に合わせて組み合わせて調合する必要があります。
後頭神経痛に加えて頑固な首肩のこりや婦人科トラブル(生理痛、生理不順、子宮筋腫などの疾患)などがある場合は、瘀血の存在が強く疑われます。
この場合は瘀血を取り除く当帰、川芎、牡丹皮、紅花、桃仁、延胡索などの生薬を含んだ漢方薬が有効です。
慢性的なストレスを自覚し、過剰な緊張感や不眠といった精神症状がある場合は気滞を除く生薬が必要になります。
気を巡らす代表的な生薬としては柴胡、厚朴、枳実、薄荷、紫蘇、香附子などが挙げられます。
秋から冬にかけて後頭神経痛を発症したり悪化する方の場合、冷えから瘀血などを生じている可能性が高いです。普段から手足の冷えやしもやけができやすい方は冷え対策が必須となります。
身体を温める生薬としては桂皮、乾姜、細辛、呉茱萸、附子などがしばしば用いられます。
一二三堂薬局に後頭神経痛のご相談でいらっしゃる方のほぼ全員が、首や肩のこりにも悩まされています。後頭神経痛の主な原因は首や肩のこりであるため、こりの解消はセルフケアの中心となります。
長時間のデスクワークが当たり前になっている今日、意識しないと腕や肩を大きく動かす機会はほとんどありません。結果的に同じ姿勢のまま、首や肩のこりが進行してしまいます。
首や肩のこりの解消には、背泳ぎの腕の動きのように10回ほどグルグル回す運動が有効です。できれば1日2セット、グルグルと回してください。他にもラジオ体操の上半身の動きだけを行うのも有効です。
首筋や肩を冷やしてしまうと筋肉が収縮して、こりを悪化させてしまいます。秋~冬にかけて気温が下がってくる頃はマフラーの着用や入浴を徹底するなど、身体を温めて血行の改善を心掛けましょう。
この改善例は私自身(一二三堂薬局代表、吉田健吾)の実体験になります。後頭神経痛を発症したのは、ある年の年始からでした。ちょうど年末から年始にかけて事務作業が重なり、いつも以上にストレスがかかっていた時期でした。
ピリピリと細かい針に刺されたような痛みは、眠りに入ろうと側頭部を枕に当てた時に限って起こりました。最初の頃はすぐ自然に治るだろうと思っていましたが、その後も症状は続き、次第に痛みをきっかけにうまく入眠出来なくなってしまいました。
側頭部が触れると電気が走ったような独特の痛みが襲ってくるので、うつぶせ寝をしたり、帽子をかぶったりと試行錯誤をしましたが効果なし。
「さすがにこれはまずい!」と思い、真剣に自己診断を開始。私は当時、後頭神経痛という病気を知らなかったので緊張型頭痛と判断。原因は首肩こりやストレスも強かったので、まずは気の巡りを改善する漢方薬を調合し、服用しました。
しかしながら、やや改善するも顕著な差は実感できませんでした。そこで発症した時期が冬であったことを踏まえて、身体を温める桂皮や附子、首や肩のこりを和らげる葛根や芍薬などから構成される漢方薬を調合しました。
加えて自分なりに文献を調べた結果、この症状は後頭神経痛だと考えました。後頭神経痛は首肩のこりが「大敵」と知り、腕と肩を大きく動かす運動を取り入れ、入浴時間も長めにとるように心がけました。
そして運動や新しい漢方薬の服用を始めて2週間ほどで、毎晩起こっていた不快なピリピリ痛は驚くほどすっかり改善しました。おかげで入眠前に何度も寝返りをしたり、苦しいうつぶせ寝をする必要もなくなりました。
この経験で調合した漢方薬を服用していると首肩こりや、昔からしばしば起こっていた頭の締め付け感も改善することもわかりました。漢方薬はピリピリ痛が無くなった今も微調節を行いつつ、継続服用しています。
長時間のデスクワークやスマホの使用が常態化した現代人にとって、後頭神経痛は誰しも発症するリスクのある病気といえます。これは私自身が後頭神経痛を患い、痛感しています。
漢方薬は鎮痛薬のロキソニンのように、ただ痛みを除くだけではなく、首肩こりや冷え性などを同時にケアすることも可能です。後頭神経痛でお悩みの方は池袋の一二三堂薬局にぜひご相談ください。