全般性不安障害は漠然とした強い不安感を主症状とし、それが数ヵ月にわたって続く病気です。不安感に代表される精神症状にくわえて、食欲不振や身体の過度な緊張などの身体症状も伴うものと全般性不安障害は大まかに定義されます。全般性不安障害はしばしば英語名のGeneralized Anxiety Disorderの頭文字を取ってGADとも略されます。主症状である不安感はほぼ毎日起こり、特定の対象(例えば残っている苦手な仕事など)だけではなく、幅広いありとあらゆる「全般」のものが強い不安を起こす対象となってしまします。
全般性不安障害と似た病気にうつ病が挙げられます。大まかな全般性不安障害とうつ病の違いとしては、うつ病では抑うつ気分にくわえて興味の低下、気力の低下、思考力や集中力の低下、自己肯定感の低下といった精神活動の著しい「低下」が見られます。一方、全般性不安障害においては際限なく湧き起こってくる「過剰」な不安が病気の軸となります。
全般性不安障害は分類上、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、種々の恐怖症、身体表現性障害などが含まれる神経症性障害に含まれます。神経症性障害とは精神的な症状と一緒に身体的かつ機能的な症状を起こす病気を指します。
全般性不安障害のケースにおいて精神的な症状とは過剰な不安感や心配であり、身体的な症状としては食欲低下、吐気、動悸、首肩こりなどが代表的です。機能的な症状とは炎症や傷のような物理的なトラブルが起こっていないのに生じてしまう上記のような身体症状のことを指します。
これらをまとめると下記のようになります。くわえて☆印が付いているものは不安障害(不安症)にも含まれます。つまり、全般性不安障害は神経症性障害であり、不安感を主症状とした不安障害の一種でもあるのです。
●☆全般性不安障害
●☆パニック障害
●☆社交不安障害
●☆恐怖症(対人恐怖症や閉所恐怖症など)
●強迫性障害
●身体表現性障害など
やや難しい説明が続いてしまいましたが、全般性不安障害とは「漠然としたつらい不安感がずっと続く…」「心配事がいつも頭にこびり付いている…」「仕事をしようとしても不安でうまく進まない…」ということが長い間、続いてしまう病気といえます。単なる心配性の枠を超えて、過剰な不安によって日常生活に支障が出てしまう病気です。
全般性不安障害がなぜ発症するのか明確な原因はわかっていません。その一方で脳内で情報をやり取りするための物質である神経伝達物質のセロトニンやGABA(「ギャバ」と呼びます)などを増やしたり、はたらきを高める薬を使用すると改善が見込めることが知られています。
セロトニンやGABAは主に安心感をもたらし、心身をリラックスさせます。つまり、その不足は不安感を引き起こしてしまいます。したがって、全般性不安障害の発症にはこれらのような神経伝達物質のトラブルが根底にあると考えられます。
上記にくわえて、全般性不安障害の発症には慢性的な精神的ストレスの存在が引き金になりやすいです。進学や就職、結婚や離婚といった環境の大きな変化、妊娠や産後の慣れない育児、家族の不仲、仕事上でのトラブルや人間関係などが代表的です。それらにくわえて、心配性で神経質な性格や遺伝的な要素も関係しているといわれています。全般性不安障害は男性よりも女性に多く発症しやすいことが知られており、この点(性差)は遺伝を含めた体質的な要素が全般性不安障害の発症に強く関係していることを示唆しています。
全般性不安障害はありとあらゆることに対して過剰かつ漠然とした不安感に襲われてしまう病気です。この不安感は慢性的に続き、普段の生活を送るのが困難になるレベルのものです。不安や心配の対象は他者から見れば解決可能に見えるものから、そもそも起こる可能性が極めて低いものまで幅広く、まさに「全般」の事柄が対象となります。
具体的には特に仕事や家庭内にトラブルは無いのに「業績が維持できなくなるのではないか…」「妻とうまくいかなくなるんじゃないか…」「就職なんてできないんじゃないか…」などと心配事が溢れ出てしまいます。
いつも不安感を抱いていれば当然、集中力や判断力も低下して仕事や学業に大きな支障が生じてしまいます。それをきっかけにさらにイライラ感や不満感、落ち着かずソワソワ感、不眠なども引き起こされやすくなってしまいます。このようなコントロールできない精神症状が慢性的に続くのは非常につらいことです。
全般性不安障害における症状は上記で挙げたような精神症状だけではなく、さまざまな身体症状も現れます。全般性不安障害の代表的な身体症状としては心身の緊張による肩や首のこり、緊張性頭痛、頭重感、ふるえ(振戦)、食欲不振、吐気や嘔吐、喉のふさがり感、胃痛や腹痛、発汗、寒気、動悸や頻脈、息切れ、疲労感、重だるさ、めまいなど数多くのものが挙げられます。
一方、全般性不安障害においてはパニック障害で現れる発作症状(突然の激しい動悸や息苦しさなど)のような特徴的で目立つ症状は見られません。逆に言えば、漠然とした不安感以外の「特徴の無さ」が全般性不安障害の「特徴」とも考えられます。
「全般性不安障害」という病名からついつい精神症状のみに焦点が当たりやすいですが、不安感を中心とした精神症状と多彩な身体症状をともなうものが全般性不安障害のより正確な姿といえます。
全般性不安障害の直接的な症状ではありませんが、つらい精神症状と身体症状の結果として退職や休職、中退や休学に至ってしまうこともありえます。そうなると社会的な活動から遠のいてしまうことも問題となってしまいます。
全般性不安障害に対する西洋医学的な治療の中心は抗うつ薬とそれを補助する抗不安薬を組み合わせた薬物療法になります。しばしば用いられる抗うつ薬にはセロトニンを増やすSSRIと呼ばれる薬のグループ、セロトニンとノルアドレナリンを増やすSNRIというグループ、そしてSNRIとは異なった方法でセロトニンとノルアドレナリンを増やすNaSSAというグループが挙げられます。
上記でも登場した神経伝達物質のひとつであるセロトニンは脳内のシナプスと呼ばれる部分で情報のやり取りをする役割を担っています。このセロトニンが不足すると不安感が増大したり、積極性が低下したりすると考えられています。
SSRIはSelective Serotonin Reuptake Inhibitorsの略で、選択的セロトニン再取り込み阻害薬といいます。非常に難しい名前ですが、シンプルにいえばSSRIを服用するとシナプスの部分でセロトニンの濃度が高まり、抗不安作用を発揮するというものです。主なSSRIにはレクサプロ(一般名:エスシタロプラム)、パキシル(一般名:パロキセチン)、ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)、デプロメールやルボックス(共に一般名:フルボキサミン)が挙げられます。
SNRIはSerotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitorsの略で、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬といいます。SNRIはシナプスにおいてセロトニンだけではなく、ノルアドレナリンも増やす作用があります。ノルアドレナリンには意欲を向上させたり、セロトニンと協力して精神的な原因で悪化する痛みを軽減する作用もあります。主なSNRIにはイフェクサー(一般名:ベンラファキシン)、サインバルタ(一般名:デュロキセチン)、トレドミン(一般名:ミルナシプラン)が挙げられます。
NaSSAはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略で、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬といいます。上記で登場したSNRIとは異なったはたらきでシナプスのノルアドレナリンやセロトニンを増加させます。主なNaSSAにはレメロンやリフレックス(共に一般名:ミルタザピン)が挙げられます。
ここで挙げた抗うつ薬は効果を発揮するのに数週間を要するため、その間をつなぐように即効性が期待できる抗不安薬を使用することが多いです。抗不安薬は主にベンゾジアゼピン系薬というグループの薬が使用されます。具体的にはセルシンやホリゾン(共に一般名:ジアゼパム)、ワイパックス(一般名:ロラゼパム)、メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)、デパス(一般名:エチゾラム)などが挙げられます。
抗不安薬は即効性がある反面、漫然と服用していると服用が止めにくくなる依存性や効果が弱くなる耐性、くわえて鎮静効果の影響でふらつきや転倒が生じやすくなります。このような性質から、あくまでも抗うつ薬の効果が出るまでや強い不安感に襲われた時にのみ使用する頓服薬として使用されます。
上記をまとめると西洋医学的にはSSRIなどの抗うつ薬を軸として、抗うつ薬の効果が現れるまでや強い不安時に限って抗うつ薬のベンゾジアゼピン系薬を併用することになります。抗うつ薬の効果が発揮される頃合いで抗不安薬は終了し、頓服服用に制限することになります。下記で挙げてゆく漢方薬は抗うつ薬と併用して不安感の除去を後押ししたり、抗うつ薬を服用しなくなった後の再発防止のために服用するのが良いでしょう。
漢方薬には抗うつ薬のような強力な作用は期待しにくい反面、安全性が高く、個人の症状に合わせて疲労感を除いたり食欲不振を改善するなど幅広い効果が期待できます。このように全般性不安障害による不安感や焦燥感への対応を中心としながら、細かい身体症状に対応できる点が漢方薬の大きなメリットといえます。
漢方医学の視点から全般性不安障害を考えると、五臓六腑(ごぞうろっぷ)における心(しん)と肝(かん)、そして身体を構成する物質である血(けつ)と気(き)がポイントになってきます。これらの崩れたバランスを修正することが不安感や憂うつ感、そしてさまざまな身体症状の改善に結びつきます。
まず、上記で心と肝が全般性不安障害においてポイントと述べましたが、漢方において心と肝は西洋医学における心臓と肝臓とは異なる概念です。したがって「全般性不安障害の原因は心臓病や肝臓病なのか!」というのは全くの誤解です。
心にはいくつかの役割がありますが、そのうちのひとつに精神状態や睡眠状態を安定化させるというものがあります。この心が十分に機能するためには気や血が必要になりますが、特に血の充実はとても大切になります。
慢性的な精神的ストレス、過労、食欲不振などによって血を消耗したり生み出されにくくなると、心を栄養するための血が不足した心血虚(しんけっきょ)の状態に陥ってしまします。心血虚の主な症状には不安感、焦燥感、悲哀感、多夢をともなう不眠、記憶力の低下、動悸や息切れなどが起こりやすくなります。
このように心血虚の症状と全般性不安障害の症状は重なり合っている部分が大きいことがわかります。他にも血が不足すると顔色の青白さ、疲労感、体重の減少、眼精疲労やドライアイ、めまいや立ちくらみ、筋肉のけいれん、しびれ感、肌・髪・爪の荒れ、女性の場合は生理不順などが現れやすくなります。
もうひとつのポイントである肝は生命エネルギーである気の流れをコントロールする司令塔のような役割を担っています。肝は精神的な負担に対してデリケートで、慢性的にストレスを受け続けると気をスムーズに巡らすことができなくなってしまいます。このような状態を気滞(きたい)と呼びます。
気滞に陥ると憂うつ感、緊張感、イライラ感、些細なことが気になるといった精神症状が起こりやすくなります。その他には喉のふさがり感、胸や腹の張り感、胃痛や腹痛、食欲不振や過食、吐気や嘔吐、下痢や便秘、胸苦しさ、ゲップ、首肩こりやそれによる頭痛などの身体症状も目立つようになります。
全般性不安障害を患っている方の多くは心血虚や気滞を軸に、さらに他の要因が絡んでいるケースも少なくないです。したがって、漢方薬を調合する上では精神症状にくわえて身体症状にも注意を払い、その方の状態を把握する必要があります。
全般性不安障害の原因が心血虚に比重がある場合は心血を補う漢方薬、気滞が顕著な場合は気を巡らす理気作用に優れた漢方薬が使用されます。一方で血が不足すると次第に気も不足したり、気滞が長引くと熱性の激しい症状が顕著化するなど全体的な目配りが大切となります。
まず血を補う生薬としては補血薬(ほけつやく)の地黄、芍薬、当帰、酸棗仁、竜眼肉などが代表的です。特に酸棗仁や竜眼肉は心血を充実させる力に優れています。気の巡りを改善する理気薬(りきやく)には柴胡、厚朴、半夏、薄荷、枳実、香附子などがしばしば用いられます。
全般性不安障害を改善する漢方薬は上記のような補血薬や理気薬をバランスよく含んだものが中心となります。一方で全般性不安障害を抱えている方にしばしば見られるのが気の不足である気虚(ききょ)と、気滞の慢性化の結果として起こる心肝火旺(しんかんかおう)です。
気虚の代表的な症状としては気力の低下、疲労感や手足の重だるさ、食の細さ、ため息の多さなどが挙げられます。見るからに元気がない気虚の方に対しては、まずはしっかりと気を補ってから気を巡らしてあげる漢方薬が必要になります。気を補う補気薬(ほきやく)には人参、黄耆、白朮、大棗、甘草などが挙げられます。
気滞の慢性化で起こる心肝火旺という状態では強いイライラ感、焦燥感、ヒステリー、じっとしていられない、不眠、頭痛や眼痛、ほてり感や顔面の紅潮、眼の充血や口内炎などの炎症症状、女性の場合は生理周期が早まったり不正性器出血が起こりやすくなります。
上記のように心肝火旺の症状は全体的に動的で激しいという特徴があります。このようなケースではまず熱性症状をクールダウンすることが大切です。それには清熱薬(せいねつやく)の黄連、黄芩、黄柏、山梔子、石膏などを多く含んだ漢方薬が良いでしょう。
このように全般性不安障害の治療には補血(特に心への補血)や理気を行う漢方薬を中心としながら、補気や清熱などの必要性も考えることになります。くわえて、精神症状や身体症状の変化によって臨機応変に調節を行うことも大切になります。
全般性不安障害による不安感は慢性的に続く一方で、特徴的な目立つ症状が無いために患っているご本人も病気であると自覚しにくいです。数ヵ月にわたって不安感や憂うつ感が現れることが多くなったと感じるようなら、ご自身を客観視するために日記やメモを書いてみて心身の状態をチェックしてみましょう。
過去に問題なく対応できた仕事やトラブルに対しても過剰に不安感を抱くようになった、必要以上に朝早くに目が覚めてしまうようになった、アルコールの量が増えてきたなど見落としがちな症状や異常が見つかるかもしれません。
くわえて、ご本人だけではなくご家族の対応も非常に大切です。「妻が過剰に心配ばかりしている」「夫がため息ばかりついて暗い顔をしている」「子供から笑顔が減ってしまった」というような異常を察知できるのは最も身近なご家族です。
漠然とした不安感が続く中で、患っているご本人からは必然的に愚痴や弱音が出てきやすくなります。「そんな起こりえない不安は単なる妄想」と退けず、ご家族や友人の方はそれを受け止めてあげましょう。
ご本人の不安感に寄り添い、接してあげるだけで気持ちは軽くなり「自分の不安感は周りに理解されない」という孤独感を解消することができます。早期治療を開始するためにもご家族の接し方は重要なのです。
積極的に行いたいこととしてはウォーキングなどの軽い運動です。身体を動かすことは気の巡りを改善することに繋がります。逆に依存症に陥ってしまう恐れのあるお酒や、自律神経の交感神経を興奮させるカフェインは控えめが良いでしょう。
患者は30代後半の女性・デザイン事務所を経営。広告代理店に勤務していましたが、デザイン事務所を経営していたお父様が体調を崩してしまい、急遽、後を継ぐことになりました。「実務に関しては前職のノウハウが生かせるので問題はありませんでしたが、役所に提出する書類作りとか不慣れな雑務や少ないながらもスタッフを抱えていたので、その管理にとても苦労している」とのこと。
経営者として3年目を過ぎたあたりから元来の完璧主義が影響したのか精神的に落ち込むことが多くなり、逆に仕事の完成度が落ちるようになってしまったという。「焦りや不安が邪魔をして建設的な解決方法が立てられなくなってしまった…」。
「ダウンして仕事を休むようなことはありませんでした。でも、根拠がない不安感や不満感とかがどんどん湧いてくるようなってきました。しっかりと指定通りに納品はできたかな…とか、当座預金に余裕はあったかな…とか。お父さんだけじゃなくてお母さんも入院したらどうなる…とか」。
徐々に食欲や表情から笑みが減り、口数も少なくなったことを心配したご主人様の提案で心療内科を受診することになりました。「自分でも病的な精神状態だと薄々は感じていたので最初はうつ病になってしまったかと思った」とのこと。
予想に反して病院からは全般性不安障害との診断。抗うつ薬のレクサプロを中心に頓服として抗不安薬が処方され、半年間でだいぶ症状は緩和されました。一方で頻度や強さは低下しましたが、次々と浮かび上がる不安感を完全に払拭するには至りませんでした。
使用できる心療内科の薬の量もほぼ上限にまで達していました。そこで再びご主人様から漢方薬の併用を提案され、当薬局へご来局。くわしくお話を伺うと不安感や焦燥感にくわえて疲労感、食欲の低下、眠りの浅さによる多夢や早朝覚醒があるとのこと。顔色はやや青白く、かなり細身の体型でした。
この方には気を補う人参や大棗、血を補う酸棗仁や竜眼肉などを含む漢方薬を調合しました。その他に気分が晴れない憂うつ感の強い日は即効性があり、頓服として使用できる麝香(じゃこう)と牛黄(ごおう)を含んだ生薬製剤の併用を提案しました。
一方、体調が好転しても自己判断で病院の抗うつ薬は減らしたり中止しないようにお願いしました。これは抗うつ薬を急に止めたりすると身体が驚いて、不安感が悪化したりめまいなどが現れる離脱症候群を防ぐためです。くわえて、気の巡りを改善するためにウォーキングなどの軽運動も併せてお願いしました。
漢方薬を服用し始めて3ヵ月程が経過すると「仕事中にポコポコと沸騰するように出てくる雑念が減り、作業効率が上がった気がする」という。ここ数年は疲労感と不安の種が増えるのが心配で、帰宅したら一切仕事は家に持ち込めませんでしたが、少しずつデザインの資料集などに目を通す余裕も出てきました。
漢方薬を服用する前は朝食はほとんど身体が受け付けなかったとのことですが、今は軽食なら摂れるようになったという。この当時の主訴は「1週間のうち2~3日くらい、朝の5時頃に動悸がして一度起きてしまうことが多い。そうするともう眠りに入れず心配事が浮かんでしまう。そうなると体力的につらい…」というものでした。
そこで疲労感を除く気を補う生薬を維持しつつ、不安感にくわえて動悸や不眠に効果のある竜骨や牡蛎を含んだ漢方薬に変更を行いました。新しい漢方薬にして2ヵ月程で朝方の動悸は鎮まり、日の出前に起きてしまう頻度は減りました。
その後の数ヵ月間は変更した漢方薬を維持しましたが、ご本人が「もうおかげで動悸は気にならなくなった。でも感覚的に前の漢方の方が精神的にも体力的にも元気が出た気がする」ということで再変更。最初に戻した漢方薬を半年ほど服用されるとご来局前に挙がっていた諸症状はほぼ解消していました。
長らく体調を崩していたお父様も仕事のサポートをしてくれるまでに回復。「心療内科からも症状が安定してきたようだし、減薬を始めてみようと提案を受けてきました。漢方薬はお守り代わりに続けつつ、前向きに検討している」という。
全般性不安障害は症状に目立った特徴、特に本人以外の人が見てわかるようなわかりやすい特徴(発作で倒れてしまったり、寝込んでしまうなど)が無いために「単なる心配性」と本人も周りの家族や友人も考えがちです。
一方で患っているご本人の苦悩は深く、全般性不安障害の症状を放置していると仕事や家庭生活に大きな悪影響が出てしまいます。全般性不安障害をきっかけに他の不安障害やうつ病などを誘発してしまう可能性もあります。
全般性不安障害は気合や日常生活の工夫だけで乗り切れるものではありません。特に理由もなく漠然とした不安感や焦燥感に襲われるようなことが続くようでしたら、西洋医学的治療にくわえて漢方薬による治療も検討して頂ければと思います。