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【微小血管狭心症】に漢方という選択肢|症例紹介あり

微小血管狭心症とは|非常に細い心臓の血管が収縮する病気

心臓は全身に血液を送り出すポンプのような働きを担っている臓器です。

この心臓が活発に動くためには当然ながら、心臓自身も血液を介した酸素や栄養素の補給を受ける必要があります。

心臓に酸素などを届ける中心的な役割を担っている血管が冠動脈(かんどうみゃく)です。

冠動脈は太い血管であり心臓を取り囲むように配置され、下流に行くにしたがって血管は細くなっていきます。

微小血管狭心症(びしょうけっかんきょうしんしょう)とは、心臓に酸素などを与えている血管の中でも特に細い、髪の毛ほどの太さの血管が何らかの原因によって収縮してしまう病気です。

微小血管の収縮によって血流が悪くなり、心臓への酸素や栄養素の供給量が低下することで多彩な症状が引き起こされます。

微小血管狭心症の主な症状としては胸やみぞおちの痛みに加えて、背中や顔(特に歯・喉・耳)などの広範囲の痛み、呼吸困難、疲労感、動悸、吐き気が代表的です。

歯や喉など、一見すると心臓とは無関係に思える部位に痛みが現れやすい点は微小血管狭心症の大きな特徴です。

微小血管狭心症は閉経を迎えた中年以上の女性に多い病気として知られています。

この背景として女性ホルモンの減少が関係していると考えられています。

「一般的な狭心症」との違い|トラブルの起こっている血管の違い

心臓には太い冠動脈(かんどうみゃく)という血管があり、心臓をグルっと囲い込むように張り巡らされています。

この冠動脈が何らかの理由で細くなり、うまく心臓に酸素を与えられなくなる病気が狭心症です(本ページではこちらを「一般的な狭心症」と呼びます)。

微小血管狭心症は太い冠動脈ではなく、その下流に位置する0.1mmほどの細い血管の収縮によって起こる病気です。

つまり微小血管狭心症と一般的な狭心症との大きな違いは、発症原因となる血管が異なる点です。

一般的な狭心症と微小血管狭心症とでは症状にも違いが見られます。前者は主に胸の痛みが現れます。

一方、微小血管狭心症では胸以外にも広範囲に広がる痛みや呼吸器、消化器も含んだ多彩な症状が起こりやすいです。

微小血管狭心症の原因

微小血管が細くなってしまう原因はひとつではなく、複数の要因が絡んでいると考えられています。下記では代表的なものを挙げます。

女性ホルモンの減少

微小血管狭心症は女性に多い病気であり、特に更年期(40代後半から50代前半)を過ぎた女性に起こりやすいです(一般的な狭心症は反対に男性に多いことが知られています)。

その理由として女性ホルモンであるエストロゲンの減少が関係していると考えられています。

エストロゲンは多彩な作用を持っていますが、その中に血管を拡張する作用があります。

更年期を迎えてエストロゲンの分泌量が減り、血管を広げる作用が低下することで微小血管の収縮が起こりやすくなります。

生活習慣病の併発

生活習慣病は、不適切な生活習慣(食事の乱れ・運動不足・喫煙・飲酒・ストレスなど)が原因で発症・進行する病気の総称です。

生活習慣病の中でも糖尿病、脂質異常症、高血圧症は血管にダメージを与えます。

糖尿病は血管をもろくし、脂質異常症は脂質のゴミが血管の壁に溜まることで血管を細くします。

そこに強い圧力(血圧)が加わることで血管本来の柔軟性などが損なわれてしまうのです。

自律神経の異常

自律神経は自分の意思とは関係なく、身体の機能を自動的に調整する神経のことです。

主に心臓の鼓動、血圧、消化、体温調節など、生命維持に必要な働きを担っています。

この自律神経が精神的ストレスの蓄積、肉体疲労、睡眠不足、運動不足などによってうまく機能しなくなると血管の過剰な収縮が起こりやすくなってしまいます。

微小血管狭心症の症状

微小血管狭心症の代表的な症状として、胸部の痛み、胃痛、呼吸困難、疲労感、動悸、吐き気などが挙げられます。

微小血管狭心症による痛み症状は心臓が位置する胸部以外にも起こることが知られています。

具体的には、心臓が位置する胸部の他に、胃、背中、顔(特に歯・喉・耳)といった範囲にも現れやすいです。

これらの痛みは関連痛と呼ばれ、微小血管狭心症の大きな特徴とされます。

症状は運動などの負担がかかった時だけでなく、安静時にも出現しやすく、特にストレス、寒冷、喫煙などが発症・悪化要因となることがあります。

微小血管狭心症の西洋医学的治療法

微小血管狭心症に対して西洋医学的治療の中心となるのは、血管を拡張する作用のある薬物の内服となります。

具体的には高血圧症の治療にも使用されるカルシウム拮抗薬と呼ばれる薬が効果を発揮します。

痛みの発作が起こった際には即効性に優れているニトログリセリンがしばしば使用されます。

しかしながら、一般的な狭心症と比べるとニトログリセリンの効果がやや得にくいことが知られています。

漢方の視点から見た微小血管狭心症

微小血管狭心症と瘀血

漢方医学的に微小血管狭心症を考えると、血の滞りである瘀血(おけつ)と深い関係があります。

何らかの原因で瘀血に陥ると、首肩凝り、手足の冷えやしびれ、顔面のほてり、肌の暗色化、刺すような固定性の痛み、イライラ感などが起こりやすくなります。

他にも女性の場合は生理痛、不正性器出血、生理不順などが現れやすくなります。

気の不足による瘀血の発生

血は生命エネルギーである気の力によって身体を巡っています。

したがって、瘀血の背景には気の不足や気の巡りの悪さが関係していることも多いです。

気の不足は気虚(ききょ)と呼ばれ、疲労感、息切れ、冷え、食欲低下、感染症のかかりやすさに繋がります。

ストレスと気滞(きたい)

気は存在するだけではなく、スムーズに巡ることでその力を発揮します。

精神的ストレスが溜まると、気の巡りが悪くなり、気滞(きたい)に陥ってしまいます。

こうなると気虚の場合と同様に、気がうまく血を巡らすことが出来なくなってしまいます。

気滞による症状としては、喉や胸の圧迫感、息苦しさ、胃痛や腹痛、下痢や便秘、気分の沈み、不眠などが挙げられます。

微小血管狭心症による胸痛にくわえて日々の疲労感や冷えが顕著なら瘀血と気虚、胸痛に加えて胸苦しさやメンタル面の問題もあるなら、瘀血と気滞の組み合わせなどが考えられます。

瘀血は気のトラブルだけではなく、冷え、加齢、運動や睡眠不足などによっても発生・悪化しますので、注意深く背景を考える必要があります。

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漢方薬を用いた微小血管狭心症の治療

漢方薬による微小血管狭心症の治療は瘀血の除去が中心となります。

瘀血を除く代表的な生薬としては桃仁、当帰、川芎、牡丹皮、紅花などが挙げられます。

これらは活血薬と呼ばれ、微小血管狭心症の治療の核となります。

疲労によって症状が悪化する場合

他にも気虚が顕著なら気を補う人参、黄耆、白朮、甘草といった気を補う補気薬も併せて使用されます。

睡眠不足や疲労で微小血管狭心症による胸痛や胸苦しさが出るケースには、活血薬と補気薬を組み合わせた漢方薬が有効です。

ストレスや冷えで悪化する場合

日頃からストレスの多い生活を送っている方は、気滞への対応も必要となります。

憂うつ感や胸の圧迫感といった気滞がみられるなら、柴胡、枳実、厚朴、陳皮などの理気薬の使用も検討されます。

他にも冬に症状が目立つ方には身体を温めて血行を改善する桂皮、細辛、附子といった生薬も使用されます。

このように瘀血の発生と悪化の原因は個人差が大きいので、体質などを見極めて漢方薬を調合する必要があります。

微小血管狭心症のセルフケア

微小血管狭心症の発症や悪化を防ぐためには生活習慣の改善が必要となります。

血管を過度に収縮させない、血管にダメージを与えないような生活を心掛けることが大切です。

睡眠や運動

具体的にはまず睡眠を十分に確保することは大切です。目安としては7〜8時間程度の睡眠時間を確保することが望ましいです。

リラックスすることで交感神経の過剰な刺激を防ぎ、血管収縮のリスクを下げることが期待されます。

運動については無理のない範囲での軽い有酸素運動、たとえばウォーキングやサイクリングなどが推奨されます。

一方で胸痛や胸苦しさといった症状が出ない程度にとどめることが大前提であり、無理は禁物です。

血管に優しい食生活

食事の面では、血管内皮機能を守るために、抗酸化作用のある食品を積極的に摂取することが推奨されます。

例えば野菜や果物、ナッツ、魚介類などを取り入れ、さらに血圧上昇は血管にダメージを与えてしまうので、塩分を控えめにする工夫も求められます。

カフェインや喫煙を控える

カフェインに関しては心臓に負担をかけないためにも過剰摂取を避け、コーヒーであれば1日1~2杯程度にとどめるのが望ましいでしょう。

さらに、喫煙は微小血管の障害を著しく悪化させるため、完全に禁煙することが必要です。

自力での禁煙が難しい場合は禁煙外来の活用も選択肢に入れるべきです。

微小血管狭心症の改善例

患者は50代後半の女性・銭湯を家族で経営。数年前からたまに胸や顔に痛みが起こることがありました。

一方で多忙の上、短時間で痛みは消えるので病院の受診は行いませんでした。

しかし、浴槽の掃除の際に、痛みに加えて胸の圧迫感が高頻度で起こるようになってしまいました。

家族の勧めで内科を受診するも原因は特定されず、ちょうど顧客トラブルも抱えていた時期でもあったと医師に伝えると低用量の抗不安薬を処方されました。

一方で服薬しても症状は鎮まらず、心臓専門の内科で詳しく検査を受けてようやく微小血管狭心症の診断が出ました。

専門病院からは血管を拡張する薬が処方され、服用すると発症頻度は低下しましたが顔のほてりと立ちくらみが出るようになりました。

仕事柄、掃除などで立ったり座ったりすることが多いので、服用量を調節して何とか服用を継続しました。

その後、テレビで漢方薬の服用で血行改善ができるという番組を見たことをきっかけに当薬局へご来局されました。

詳しくお話を伺うと、胸部周辺の痛みや不快感に加えて、憂うつ感、食欲の低下、胃の痛み、眠りの浅さもありました。

この方には瘀血を除く桃仁や牡丹皮、気の巡りをスムーズにする柴胡や薄荷、消化器機能を底上げする白朮や茯苓などから構成される漢方薬を服用していただきました。

漢方薬の服用から2か月ほどで胸や顔の痛みや不快感は薄れ、症状の起こる頻度も徐々に低下していきました。

一方で依然として気分の沈みや消化器の不調などはありましたが、主訴の改善が見られたので同じ漢方薬を継続していただきました。

服用開始から半年ほどが経過する頃には微小血管狭心症の関連症状に加えて消化器系の症状もほぼ消失しました。

一方で依然として憂うつ感や眠りの浅さが続いていたので、精神面を安定化する力に優れた竜骨や牡蛎を含む漢方薬に変更しました。

新しい漢方薬は瘀血を除く力はあまり強くはなかったのですが、胸や顔の不快症状がぶり返すことはなく、落ち込みや中途覚醒の回数は減っていきました。

これについては精神状態が安定し、結果的に気の巡りとともに血の流れも良くなったと考えられました。

その後、銭湯は空調管理が難しく構造的に冷えやすいので、秋以降は身体を温める漢方薬に変更などを行い、継続服用していただいています。

微小血管狭心症のご相談は池袋の一二三堂薬局へ

微小血管狭心症は一般的な狭心症に比べて知名度が低く、検査でも発見しにくいので患っていながら放置されているケースも多いといわれています。

更年期以降の女性に起こりやすいので、胸苦しさなどの症状は更年期障害の一症状として見逃されているケースもあるでしょう。

微小血管狭心症の特徴として胸部の痛みや不快感の他に、多彩な症状が現れやすいことが知られています。

漢方薬は血行改善だけではなく、その他の関連症状にも同時に対応できる可能性があります。微小血管狭心症にお困りの際はぜひ、一二三堂薬局へご相談ください。【執筆・監修:吉田 健吾(薬剤師・一二三堂薬局代表)】

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