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【 頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む) 】と漢方薬による治療

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)とは

頻尿や夜間頻尿に代表される泌尿器系のトラブルは年齢とともに多くなりがちです。男性の場合、前立腺が加齢により大きくなることでうまく排尿ができなくなってしまう前立腺肥大症は生活の質を大きく下げてしまいます。他にも膀胱が緊張して狭くなってしまう過活動膀胱や精神的なストレスによってトイレが近くなってしまう心因性頻尿というタイプの頻尿も存在します。

頻尿とはおおよそ1日に8回以上の排尿があることとされ、夜間頻尿は就寝時に1回以上の排尿がある場合と定義されます。このような定義自体もまた大切な目安ですが、トイレの回数は普通であっても尿漏れが気になったり、残尿感が強かったりと不快感を覚える基準は個人によってさまざまです。したがって、トイレの回数といった客観的な情報にくわえて主観的な情報をしっかりと捉えて漢方薬の調合につなげる必要があります。

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の原因

前立腺は男性特有の器官であり、尿をためている膀胱の真下に尿道をくるむような形で位置しています。この前立腺は男性ホルモンなどのはたらきで肥大化することが知られています。前立腺肥大とは前立腺が加齢とともに大きくなり、尿道を圧迫することで尿の出の悪さによる頻尿や残尿感といった症状が起こる病気です。

過活動膀胱とは膀胱を取り巻く筋肉(膀胱平滑筋)が過剰に収縮してしまう病気です。結果的に膀胱が狭くなってしまうので充分な尿がためられず、頻尿を中心とした症状が起こってしまいます。

心因性頻尿は精神的なストレスを受けたり、特定の状況(出社や登校、プレゼンやテストの前など)などで頻尿が起こってしまう状態です。心因性頻尿の場合、ストレスが引き金になっているので尿検査(細菌の確認)や膀胱の異常などは確認できません。

これら以外にも加齢とともに尿道を締め付ける骨盤底筋が弛緩してしまい頻尿や尿漏れが起こってしまうこともあります。特に女性の場合は尿道が男性と比較して短いので、このタイプの頻尿が起こりやすいといわれています。

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の症状

頻尿と一言で表現してもその内容は個人差があります。頻尿には実際にトイレに行く回数が多くなってしまうだけではなく、クシャミや重いものを持った時などに尿漏れも起こってしまったり、夜間頻尿によって睡眠不足から慢性疲労に陥ってしまうこともあります。

頻尿になってしまうことで日常生活への積極性が低下してしまうのも広い意味で頻尿の一症状と捉えられます。トイレに行くことが心配になってしまい旅行へ行くのを控えてしまうなど外出に後ろ向きになってしまうのは代表的な例といえます。

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の西洋医学的治療法

西洋医学的な頻尿の治療には膀胱の緊張を緩和する薬がもちいられます。膀胱の「壁」である膀胱平滑筋を収縮させるのは副交感神経のはたらきであり、それを抑制する抗コリン薬と呼ばれるものが頻尿治療の主力です。これら抗コリン薬は便秘や口の乾燥を起こしてしまうこともあります。抗コリン薬にくわえて交感神経を刺激することで膀胱の容量を広げる薬も使用されます。

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の漢方医学的解釈

漢方において泌尿器系のコントロールは五臓における腎が担っています。腎は年齢とともに機能が低下し、腎虚と呼ばれる状態になりがちです。腎虚になると頻尿や尿漏れといった泌尿器系のトラブルにくわえて疲れやすさや冷えやすさ、腰痛、身体の乾燥感といった症状が起こりやすくなります。

腎虚以外にも気のトラブルによっても頻尿は起こります。気のはたらきは多彩ですが、そのなかには膀胱に溜まった尿が漏れ出さないように維持するはたらきも含まれています。したがって、気が不足した気虚の状態になると疲労感や食欲不振にくわえて頻尿も起こりやすくなります。精神的なストレスによって気の流れが悪くなると排尿困難や残尿感といった症状が現れやすくなります。

漢方薬を用いた頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の治療

加齢とともに頻尿が顕著になるようなら腎虚を改善する漢方薬が治療の中心となります。頻尿や尿漏れにくわえて腰の痛みや重だるさ、冷え性(冷え症)、肌や眼の乾燥感、聴力や視力の低下などが目立つようなら腎虚が強く伺われます。具体的には地黄、山茱萸、山薬などの補腎薬を多く含む漢方薬が使用されます。

疲れやすさや食の細さといった気虚の症状がみられる場合は気を補う漢方薬が積極的に使用されます。代表的な気を増す生薬(補気薬)としては人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などが挙げられます。日常的にストレスが多い方には気の巡りを改善する生薬(理気薬)である柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などを含んだ漢方薬が検討されます。他にも冷え性(冷え症)が目立つようなら身体を温める生薬も使用されます。

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生活面での注意点と改善案

体質的に冷え性があったり、冷やしやすい環境にある方は身体を温めることが大切になってきます。このタイプの方の尿は1回の排尿量が少なく、透明で水のような尿になりやすいです。夏でもお風呂はシャワーで終わらせず、しっかり湯船につかるようにしましょう。衣類は腹部を中心に薄着を避けるのが良いです。

他にも飲み物は利尿効果のあるカフェインを多く含むコーヒー、緑茶、紅茶、栄養ドリンク、くわえてカフェインは含まれませんが利尿効果を持っているアルコール類は摂り過ぎないようにしましょう。特に夕方以降だと夜間頻尿の原因にもなってしまいます。これら以外のものでも冷たいものを摂り過ぎると冷えの原因にもなりますので注意が必要です。

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の改善例

改善例1

患者は50代後半の女性・スーパーに勤務。50代の前半から頻尿の症状が目立ちはじめ、勤務中に何度もトイレに行くようになってしまったとのこと。数年前からスーパーの生鮮食品を扱う部署に移り、大きな冷蔵庫の近くで働きだしてから頻尿がさらに悪化。帰宅後も頻繁にトイレを往復するようになってしまった。

より詳しくお話を伺うと頻尿にくわえて下半身の冷えとむくみ、冷えることで現れる腰痛、身体の重だるさのご症状もありました。この方にはご年齢や全体のご症状から腎虚と考え、腎の力を底上げする地黄や山茱萸、冷えを取り除く附子や桂皮などから構成される漢方薬を服用して頂きました。

服用から2ヵ月すると冷蔵庫の前ではじっとしていられないほどだった冷えは改善してきました。さらに2ヵ月が経つと1回の尿の出が良くなりトイレの回数は半分ほどになりました。むくみや重だるさも頻尿と歩調を合わせて緩和。その後は季節が冬になり、手先と足先の冷えが気になりだしたということで、身体を温めつつ血行を良くする漢方薬へ変更。変更後も泌尿器の調子は安定しています。

改善例2

患者は30代前半の男性・会社員。もともと緊張しやすい性格とのことですが、社会人となりプレッシャーのかかる場面(グループ内での仕事の進捗発表など)になると動悸と頻尿が強く出るようになってしまったという。徐々に勤務中以外でも尿意が頻繁に現れるようになり、当薬局へご来局。

ご症状を伺ってゆくと頻尿や緊張による動悸を中心に疲労感、吐気と食欲の低下、軟便、眠りの浅さなどがみられました。この方は身長が175cmと長身の割に52kgとやせ形で食の細さはこどもの頃からとのこと。漢方薬は牡蛎や竜骨といった精神状態を安定させる生薬を中心に胃にやさしい形で調合しました。くわえて、ストレスで停滞しやすい気の巡りを改善するためにウォーキングなどの軽運動も併せてお願いしました。

漢方薬を服用し始めてからすぐに胸や腹部が波打つような強い動悸は起こらなくなりました。3ヵ月くらいが経過すると胃腸の調子も安定して、疲れも依然と比べると感じにくくなったとのこと。一方でまだトイレに行く回数は日中で10回くらいある。漢方薬の変更も検討しましたが、ご本人がとても調子は良いとおっしゃっていたこともあり同じ漢方薬を継続して頂きました。

そして服用開始から半年が経つとより精神状態と体力に余裕が生まれ、それと比例して頻尿も改善してゆきました。夜にトイレへ行くこともなくなり睡眠もしっかりとれるようになったことが疲労回復を後押しした印象です。その後も一歩一歩、頻尿のご症状は緩和してゆき服用から1年が経過する頃には漢方薬を服用しなくても心身が安定した状態となりました。

おわりに

頻尿や尿漏れはその症状自体だけではなく、それに対する不安感によって行動に制限が生じてしまうこともしばしばあります。そうなると積極性も低下してしまい、気の巡りも悪くなって玉突き事故のように新しい症状を起こしやすくなってしまいます。

漢方薬をもちいた頻尿の治療はその原因にくわえて、頻尿によってもたらされる心身全体のトラブルにも対応できます。原因不明、または慢性的な頻尿にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

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