不妊症とは多くの場合、「避妊をせずに性交をしているカップルが1年以内に妊娠しない場合」とされています。
今日の日本においては5~10組に1組が不妊症というデータも存在し、代表的な「現代病」といえるでしょう。
一昔前は不妊症の原因や責任は女性だけにあるという風潮がありました。しかし、現在はご夫婦が一緒に向き合っていく問題であると理解され始めています。
したがって、他の病気や体質と違ってご夫婦双方が共通した不妊症に対する理解や治療方針を確立することが重要になります。本項目では主に女性サイドから不妊症と、不妊症を改善する漢方薬について解説していきます。
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不妊症の原因は極めて多岐にわたります。そのなかでも女性側の問題、男性側の問題、そして両者の問題と大きく分けることが可能です。
女性側の問題で最も多いのは排卵障害に関連するものです。基本的に卵子は毎月、卵巣から放出されています。
しかし、何らかの原因(過労、精神的ストレス、ダイエットなどによる急激な体重減少など)でホルモンによる排卵のコントロールがうまく働かなくなる場合があります。
多くの場合、排卵を起こすホルモンである黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの分泌不足が見られます。
その他にも乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンが、妊娠していないにも関わらず多い状態(高プロラクチン血症)も排卵を阻害してしまう要因になります。
卵管は卵巣から排卵された卵子を子宮に運ぶための管です。その卵管が閉塞してしまうと排卵があっても受精することができません。
卵管の閉塞は過去に患った感染症、子宮内膜症(子宮腺筋症やチョコレート嚢胞の形成も含む)、子宮筋腫、骨盤周辺の手術などで起こることがあります。
その他にも子宮外妊娠などで卵管が損傷してしまった場合も、卵子が子宮に進みにくくなってしまいます。
子宮頸部(けいぶ)とは子宮下部と膣上部を接続している部分になります。
子宮頸部は通常、粘り気の強い粘液で満たされており、異物の侵入を防いでいますが、排卵直前になると粘度が低下して精子が子宮に進むことができるようになります。
この粘液の粘度が下がらない体質の方は、精子が子宮に進めず受精できなくなってしまうのです。
男性の問題はほぼ精子の問題に集約されます。
つまり、精液の量が少ない、精液の濃度が低い(精子の密度が低い)、精子の運動が乏しく子宮に進めない、精子に奇形があるといった点が挙げられます。
データによって多少変動しますが、妊娠には1回あたりの射精で4000万個程度の精子数が必要といわれています。
妊娠成功率は女性の加齢とともに減少し、流産発生率は上昇していくことが知られています。
特に35歳以降はこの現象が顕著に現れます。一方で男性にもこの傾向はみられるものの、女性ほどの影響はないとされています。
具体的に不妊症を患っている方の割合として、20~24歳では5%、25~29歳では10%、30~34歳では15%、35~39歳では30%、40~44歳では64%というデータもあり、年齢による影響は大きいといえます。
「そもそも」の話になりますが、夫婦の間で性交がなければ自然妊娠することはありません。
しかしながら、性交痛がある、長時間労働などの影響で夫婦生活に時間が割けない、性欲がわかないなどの理由で十分な性交が行われないケースもあります。
厳密には不妊症の定義からは脱線しますが、男性のED(勃起不全)やセックスレスは軽視できない問題です。
西洋医学的治療法は不妊症の原因によって大きく異なります。まず、ホルモンの問題で排卵が起こらない場合は、複数の卵胞を刺激して排卵を促す排卵誘発剤(主に性腺刺激ホルモン薬)が使用されることが多いです。
排卵誘発剤を用いるとのぼせ、吐き気、腹痛、多胎妊娠などの副作用も起こり得ることは認識しておく必要があるでしょう。
排卵誘発剤の使用が難しい場合や、一定期間で結果が出ない場合はステップアップし、人工授精や体外受精も選択肢となります。
1回あたりの成功率としては人工授精で5~10%、体外受精では20~30%、体外受精の一種である顕微授精では20~30%といわれています。
成功率の要因としては、受精は成功する一方、胚の質や子宮内環境によりうまく着床しないケースも考えられます。
不妊症の漢方医学的原因は多岐にわたりますが、その中心には腎(じん)と精(せい)の問題が関わっていることが多いです。
腎とは西洋医学的な「腎臓」ではなく、生命の誕生や成長に関与する「精」が貯蔵され、それに基づいた働きを行う漢方医学的な腎を指しています。
精は今風の表現を借りるならば「生命エネルギーの結晶」のような存在です。そして、そこから生まれるエネルギーによって私たちは日々を生きています。
精は両親から受け継いだ「先天の精」と、主に食べ物から摂取して後天的に獲得された「後天の精」が合わさったものです。
この精を消費していくことで私たちは成長し、身体機能が維持され、そして生殖活動を行っているのです。
年齢とともに精は消費され、徐々に減少していきます。精の不足、漢方医学的には「腎虚(じんきょ)」と呼ばれる状態は身体に多くの影響を及ぼし、そのひとつが不妊症といえます。
加齢とともに妊娠の成功率が低下してしまうのも、精の不足である腎虚が妊娠の成功に深く関わっていることを示しています。
精の不足以外にも、子宮を栄養する「血(けつ)」の不足は不妊症につながります。
漢方における血は「血液」の働きに加えて、全身を巡る栄養全般のイメージです。血が充実すると妊娠の可能性を高めるだけではなく、体力的にも精神的にも安定します。
血は食生活の乱れやダイエット、長時間勤務などによって消耗してしまいます。女性の社会進出が進み、仕事と家事で休む暇が少なくなってしまったことも不妊症の一因と考えられます。
不足だけではなく、血の流れの滞り(瘀血)も不妊症の原因となります。血が十分にあっても、子宮に栄養が届かないと意味がないからです。
血の滞りは慢性的な運動不足や冷え、気の不足によっても起こります。長時間同じ姿勢で仕事をする生活や薄着は血行を悪くし、不妊症を引き起こしやすくなってしまいます。
このように漢方医学的に不妊症を考えると、その背景には加齢や疲労による腎虚や血の問題などが絡み合っているといえます。