相談の多い病気

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【 免疫力(抵抗力)の低下 】と漢方薬による治療

免疫力や抵抗力とは


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一二三堂薬局では免疫力や抵抗力を向上させる漢方薬の研究を重ねています


しばしばテレビやネットなどのメディアを通じて「免疫力を高める食物やサプリメント」「抵抗力を上げる生活様式」といったフレーズを見かけます。


日本においては受験シーズンが感染症の流行する時期と重なっているため、本ホームページにも「受験対策 免疫力アップ」「受験対策 漢方薬」「受験対策 サプリメント」といった(切実な…)検索キーワードでアクセスされる方は少なくありません。


当薬局には以前から秋の終わり頃になると「免疫力を上げる漢方薬が欲しい」「抵抗力を落とさないようにする漢方薬を調合して欲しい」といったご相談が寄せられていました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)後は一年を通じてその要望が急激に高まった印象があります。


しかしながら、この「免疫力」や「抵抗力」という言葉に対しては意外にも明確な定義はありません。一方で「免疫」という言葉に対して広辞苑には「生体が疾病、特に感染症に対して抵抗力を獲得する現象」と説明されています。


したがって、多くの場合において免疫力や抵抗力は「ウイルスや細菌といった感染症にかからないための力」と解釈されるのではないでしょうか。本ページでは免疫力や抵抗力をそのように捉え、漢方薬とのつながりを中心に解説していきます。


免疫力(抵抗力)低下の原因


免疫力や抵抗力の低下を引き起こす原因は多岐にわたります。西洋医学的には運動不足、睡眠不足、食生活の乱れや偏り、身体の冷え、さらには憂うつ感や不安感といった精神的な要素も免疫力の低下に結びつくと考えられています。


改めて挙げてみると、どれもが現代社会において問題となっている生活様式ばかりです。座りっぱなしでディスプレイを凝視し続けるような業務に長時間携わっていると、必然的に多くが当てはまりそうですね。


実際に当薬局にも「社会人になってから毎年、風邪にかかってしまい困っている…」「事務職に転職後、一年で2回もインフルエンザになってしまった。どうにかして欲しい…」といった相談がしばしばあります。サービス業が発達した現代社会は「免疫力(抵抗力)低下社会」ともいえるかもしれません。



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免疫力(抵抗力)低下の漢方医学的解釈


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衛気は病原体や厳しい環境変化から身を守っている


漢方医学の観点から免疫力(抵抗力)を捉える前に、そもそもなぜ人間は病気になってしまうのかを簡単に解説します。漢方医学において病気の原因はシンプルに外因(がいいん)と内因(ないいん)などによると考えます。


外因とはその名前の通り、身体の「外」から襲ってくる病気をもたらす存在を指します。具体的にはウイルスや細菌といった病原体、厳しい暑さや寒さ、大気汚染といった環境要因などを指します。内因には先天的な体質やストレスによる身体の変調などが含まれます。


上記で挙げた外因に対抗するものが「気によるバリア機能」です。やや専門的になりますが、防衛を担当する気を衛気(えき)と呼びます。つまり、衛気は西洋医学における免疫と似た概念といえます。


したがって、衛気を強化すること、つまり気のバリアを万全にすることが免疫力(抵抗力)の向上に結び付くと漢方では考えます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた免疫力(抵抗力)低下の治療


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気を補うには人参や黄耆などの補気薬を用いる


漢方薬によって免疫力(抵抗力)の底上げを図る場合、気をしっかりと補うことが大切です。気が充実すれば衛気のはたらきも高まり、外敵を寄せ付けにくくなります。


毎年、風邪やインフルエンザにかかってしまう方、さらには日頃から疲れやすい、食が細い、胃腸を壊しやすい、息切れしやすい、身体が冷えやすいといった方は、気が不足している状態である気虚(ききょ)に陥っている可能性が高いです。


気は主に飲食物の摂取を通して生まれるものですので、気虚の方は体質的に消化器のはたらきが弱い方が多い傾向にあります。さらに漢方の理論では消化器の機能低下は呼吸器のトラブルにつながると考えます。


胃腸虚弱だけではなく、慢性的な気管支ぜんそくや咳喘息といった呼吸器系疾患をお持ちの方はその背景に気虚が絡んでいる可能性がありますので注意が必要です。


気虚の方には気を補う人参、黄耆、白朮、大棗、甘草といった補気薬(ほきやく)から構成される漢方薬を用います。冷えが顕著な場合は身体を温める附子、桂皮、乾姜、呉茱萸、細辛などの散寒薬(さんかんやく)を併用することも大切です。


他にも顔色が青白い、貧血体質でめまいや立ちくらみが多い、少しの運動で息切れや動悸が起こるなどの症状がある場合は血の不足である血虚(けっきょ)の状態と考えられます。


血と気は相互に依存し合う関係があるので血虚を放置すると次第に気虚も併発してしまいます。したがって、血虚が疑われる場合には血を補う補血薬(ほけつやく)も必要になります。


代表的な補血薬には地黄、芍薬、当帰、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。女性の方は生理があるので男性よりも血が不足しがちですので、意識的に補気と補血を行う必要があります。



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生活面での注意点と改善案


免疫力(抵抗力)を高めるには2つのアプローチが有効です。ひとつは気をしっかりと補うこと、そしてもうひとつは気の消耗を避けることです。


気は食事を摂ることで得られますので、朝食や昼食を抜くことは好ましくありません。時間が無ければおにぎりひとつでも良いので「全く無し」にはしないようにしましょう。冷え性や貧血傾向もある方は肉、魚、卵といったタンパク質を欠かさないことも大切です。


睡眠不足も気虚に陥りやすくなる代表的な原因です。個人差があり絶対的な基準はありますが、6時間以上の睡眠時間が望ましいです。不眠気味の方の場合は緑茶、紅茶、コーヒー、エナジードリンク(栄養ドリンク)といったカフェインを含むものを摂るのは避けましょう。


入眠直前までスマホなどのディスプレイを凝視すると頭が冴えてしまうので、出来れば夕食後は控えめにするのが良いでしょう。食事と睡眠を充実させればより漢方薬の効果がグンと発揮しやすくなります。


他には座りっぱなしの長時間労働は気の巡りも悪くなってしまいます。こまめなストレッチやウォーキング、積極的な階段の使用などを挟むのが良いでしょう。休日も自宅にこもりっぱなしでは気が停滞するので、一度は必ず外出して日を浴びるように心がけてください。


免疫力(抵抗力)低下の改善例


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慢性的な気の不足は様々な病気のかかりやすさにつながる


患者は50代の生花店勤務の女性。1年間に4~6回ほど風邪やインフルエンザにかかってしまうことに悩んでいました。くわえて、風邪の後は必ず長引く咳も残ってしまい、1~2ヵ月もその症状が続くことがある。冬になるとしばしば細菌性の膀胱炎にもなってしまうとのこと。


ご来局時に詳しくお話を伺うと、予防のために市販されている葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)を断続的に服用されていました。


抵抗力の低下以外のご症状としては食が細くあまり太れない、軟便や便秘といった便通トラブル、慢性的な疲労感や気力の低下、手足の冷えなどがありました。この方は典型的な気虚による衛気の弱体化と考えられました。


この方には人参や黄耆などで構成された気を補う漢方薬を服用して頂きました。日常生活の面については疲労を持ち越さないために出来るだけ多く睡眠をとって頂くようお伝えしました。葛根湯や麻黄湯については予防効果は期待できないので中止をお願いしました。


4ヵ月程服用して頂きましたが、その間はひどい風邪を引くことなく過ごされていました。季節は秋になり、少しでも喉が痛くなる時は炎症を鎮める作用がある連翹、荆芥、石膏などから構成される漢方薬を服用して頂きました。


この漢方薬を早い段階で服用すれば長引く咳になることなく2~3日で咽頭痛も改善されていました。その後も漢方薬を継続して頂き、インフルエンザや膀胱炎になることなく冬を越されました。


ご本人曰く「いつも大みそかは風邪を引いての年越しだったけれど、今年は無事だった」「電車内で咳をして白い目で見られることが無くなった」とのこと。この方には継続して初回に調合した漢方薬を続けて頂いています。


おわりに


抵抗力が低下して風邪やインフルエンザにかかってしまうと数日間は仕事や学業に影響が出てしまいます。それがもし年間に何回もあるようだと「たかが風邪」とは言っていられません。


上記以外にも体力が低下すると活性化して口唇などに水疱を形成する単純ヘルペスウイルス、「とびひ」とも呼ばれる黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌などがしばしば問題となります。さらに新型コロナの登場により免疫力の低下はより切迫したトピックとなりました。


抵抗力(免疫力)を向上させるためには睡眠時間の確保や軽運動などが不可欠です。これらに気を遣ってもまだ不安が残る方は漢方薬を試してみるのはいかがでしょうか。その際に当薬局をご利用いただければ幸いです。

【 疲労感(疲れ) 】と漢方薬による治療

以前、製薬会社の方から「日本ほど栄養ドリンクやビタミン剤が販売されている国は無い」というお話を伺いました。たしかにドラッグストアにはいくつもの栄養ドリンクや疲労回復をうたったサプリメントが並んでいます。


博報堂が2016年に行った調査(生活定点2016)によると「肉体的に疲れを感じていることが多い」「精神的に疲れを感じていることが多い」と答えた方は両方とも40%超でした。特に20~30代が強く心身両面の疲労感を訴える傾向があります。疲労感は長時間労働や共働きが一般的となった現代において誰もが抱く悩みといえるでしょう。


その一方でつらい疲労感はその背景に特定の疾患がない場合、病院などでは治療の対象とはなりにくく解決が難しい問題といえます。実際、当薬局には病院では異常なしといわれたけれど「漠然とした疲れ」「寝てもとれない疲労感」を訴えてご来局される方がとても多くいらっしゃいます。漢方医学的な視点から疲労感を見てみると、それは健康と病気の間に位置する未病(みびょう)の状態であり、「立派な病気」と捉えて治療の対象となります。


疲労感(疲れ)の漢方医学的解釈


疲労感と気虚

漢方医学的に疲労感を考えた場合、それを気虚の一症状と扱うのが最も適切でしょう。気虚の「気」とはその名のとおり、元気の「気」であり人間の身体活動に不可欠なエネルギーを指します。このエネルギーがなんらかの原因で不足してしまった状態を気虚と呼びます。


気虚の典型的な症状としては疲労感、身体の重だるさ、気力の低下、動悸、息切れ、めまい、日中の眠気、冷え性(冷え症)、食欲不振、下痢や軟便、風邪などにかかりやすいといったものが挙げられます。気からは身体を栄養する血(けつ)や身体を潤す津液(しんえき)も生まれるので、気の不足は結果的には血や津液の不足も引き起こしてしまいます。


血の不足である血虚に陥ると顔色の青白さ、ふらつき、動悸、息切れ、眼精疲労やドライアイ、筋肉のひきつり、不眠、不安感といった症状が起こりやすくなります。津液不足になると口の渇き、皮膚の乾燥、空咳や切りにくい痰などの症状がみられやすくなります。さらに気の不足は気の滞りにもつながるのでイライラや憂うつ感、のどや胸のつまり感、吐気、胃や腹部の張り、移動性の痛みなどに代表される気滞(きたい)の症状も出てくるでしょう。


気虚の原因

気虚の主な原因は2つ考えられます。まずひとつは気をうまく生み出せなくなってしまった可能性が挙げられます。気は食べ物から脾胃(漢方における消化器のことです)を介して生まれるので、ストレスや暴飲暴食などによって脾胃が弱ってしまった場合や生まれつき体質的に脾胃が弱いケースは気虚につながります。


そしてもうひとつの可能性としては気の過剰な消耗です。長時間労働による疲労の蓄積や慢性的な病気などによって生み出される以上の気が消費された場合にはやはり気虚に陥ってしまいます。それ以外にも血の不足である血虚から気虚に移行してしまう場合や、気や血の原料にもなる精(せい)が不足している場合なども考えられるでしょう。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた疲労感(疲れ)の治療


上記で説明したように疲労感と気虚は関連性が高く、それに対応する漢方薬を調合することが大切になります。しかしながら、気虚を引き起こす原因は多いうえに複雑なので、ここではしばしば遭遇するケースについて紹介してゆきたいと思います。


気虚を引き起こす原因として、まず脾胃の力が不足している場合が考えられます。この状態を脾虚(ひきょ)とも呼びます。食欲不振、下痢や軟便が続いているような脾虚の方は十分に食べ物が消化吸収されず、栄養素がうまく身体に取り込めていないのです。


上記のような脾虚の方は人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などの脾胃の力を高める生薬(補気薬)から構成される漢方薬を服用するのが有効です。徐々に食欲がついて消化器の調子も良くなれば気も充実してくるでしょう。食欲は普通にある方でも過労などで気を消耗している場合は補気を中心とした漢方薬を使用します。これは補気薬自体にも直接的に気を補う効果があるからです。


精神的なストレスなどによって食欲不振や無気力に陥ってしまう場合はその対処も重要になってきます。精神的なストレスは気の流れを悪くして脾胃の働きを弱めたり、気虚を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。気の流れを改善する生薬(理気薬)としては柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが代表的です。


気の不足は結果的に血の不足を起こすことを考慮して気虚の段階から血を生み出す生薬(補血薬)を含む漢方薬が用いられる場合もあります。
代表的な補血薬には熟地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。


これら以外にも疲労感を抱えている方の疲労以外の症状や体質は微妙に異なります。そのために詳しくお話を伺い臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案


疲労感は軽い散歩、水泳、サイクリングなどによって身体機能を高めることで軽減につながります。一方で激しい運動や過度な休息は逆効果になることも知られており注意が必要です。気虚の状態は外敵から身を守る力も弱くなっているので冬のように風邪やインフルエンザが流行る季節はうがい手洗いなどの基本的な感染症予防も重要になります。


疲労感の改善例


患者は30代前半の女性・歯科衛生士。学生の頃は体力がある方でしたが大学病院に就職した頃から、人間関係や神経を使う仕事内容の影響なのか疲労感が抜けにくくなってしまいました。その傾向は結婚と出産でさらに顕著となり、仕事と子育ての両立が徐々に難しくなってしまいました。市販のサプリメントを使っても効果がなく、何か悪い病気になったかと心配して職場の病院を受診。


しかし、特に問題は発見されず疲労感の他にめまいや立ちくらみがあったのでアデホスとビタミンB12を処方されました。それらを2ヵ月ほど服用しても特に改善は見られず、ちょうど病院に置いてあった雑誌で漢方薬の特集を見て興味を持ち、当薬局にご来店。


詳しくお話を伺うと疲れやめまいの他に腹部の張り感と弱い吐気、四肢の冷え、動悸などが認められました。この方の症状から典型的な気虚と判断し人参、黄耆、大棗など気を補う生薬に加えて桂皮や乾姜という身体を温める生薬を含んだ漢方薬を服用して頂きました。
そして睡眠不足気味でもあったので、できる限り6時間以上の睡眠と15分間を目安にした半身浴をお願いしました(この方は普段、シャワーだけで済ませていたので)。


漢方薬の服用から約4ヵ月が経過する頃には身体も温まり食欲が出てきて疲労感もあまり感じなくなったとのこと。その一方でめまいと動悸は依然として残っていました。ここでめまいと動悸は血虚からきていると判断し、補気に配慮しながら地黄や当帰といった血を補う漢方薬に変更しました。


新しい漢方薬にしてから3ヵ月が過ぎるとめまいや動機も無くなり、疲労感もほぼ消失。
仕事後の保育園へのお迎えや子育てにも余裕が出てきたとのこと。この方は現在も補気と補血のバランスをご症状に応じて微調節しながら漢方薬を継続服用して頂いています。


おわりに


近年、強い疲労感を訴えられる方がとても多くなった印象を受けます。コンビニに行くとリポビタンDやレッドブルに代表される栄養ドリンクやエナジードリンクが所狭しと陳列されている点からも、疲労回復に対する需要が強いことがわかります。これは長時間労働が当たり前となった今日の世相を反映しているのかもしれません。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では西洋薬やサプリメントを服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、疲労感が少しずつとれてくることから、疲労感と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、抜けきらない疲労感にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 冷え性(冷え症) 】と漢方薬による治療

冷え性(冷え症)とは


冷え性(冷え症)に明確な定義はありませんが、一般的には手先や足先といった身体の一部に不快な冷感を感じる状態が冷え性(冷え症)といえます。身体内においては筋肉で活発に発熱が行われており、男性と比較して筋肉量が少ない女性に冷え性(冷え症)が多いのはこのような理由です。しかしながら、最近は若い男性にも冷え性(冷え症)は広がっています。


冷え性(冷え症)は冷えによる不快感だけではなく、免疫力の低下や血行の悪化なども問題となってきます。これは経験的なものですが、当薬局に不妊症や生理不順のご相談でいらっしゃる女性の大半に冷え性(冷え症)がある印象を持っています。


西洋医学的に冷え性(冷え症)は橋本病に代表される甲状腺機能低下症などの病気によるもの以外は病気としては認識されにくいです。その一方で、漢方医学的において冷え性(冷え症)は病気と健康体の間の状態である未病(みびょう)と捉え、「立派な病的状態」と認識されます。


冷え性(冷え症)の西洋医学的治療法


上記で述べたとおり、なんらかの病気の結果として冷え性(冷え症)を患っている場合はその病気の治療自体が冷え性(冷え症)を回復させることにつながります。具体的には身体を活性化させるホルモンの不足である橋本病の場合、甲状腺ホルモン剤の服用で冷えが解消されることもあります。しかしながら、持病は無く体質的な冷え性(冷え症)となると西洋医学的に治療を行うのは困難といえます。


冷え性(冷え症)の漢方医学的解釈


冷え性(冷え症)を漢方医学的に捉えるとその主な原因は気の不足と考えられます。気はさまざまな働きを担っており、その働きのひとつが身体を温める作用である温煦(おんく)作用です。食欲不振や食が細い、過労や慢性病、生まれ持っての体質などの影響で気が不足がちになると身体を温める温煦作用が発揮できなくなり、結果的に冷え性(冷え症)になってしまいます。


気が不足して身体が冷えてしまう状態をしばしば陽虚とも呼びます。陽虚の症状としては冷え性(冷え症)以外に疲労感、身体の重だるさ、気力の低下、息切れ、便通異常、顔色の蒼白化などが挙げられます。陽虚(気虚)のイメージとしては「寒がりの元気がない人」という感じです。これら陽虚の症状以外にも、気が不足しているために血や津液の巡りも悪くなってしまうので多彩な症状が現れます。


気の不足は血や津液の滞りを生み、より一層、気の働きを弱めてしまうので冷え性(冷え症)を長く患っている方は改善にも時間がかかってしまう傾向にあります。上記の理由から冷え性(冷え症)は単独で現れることはほとんど無く、その他の不快症状を伴うケースが大半です。したがって、充分に症状や体質から冷え性(冷え症)がいかにして起こっているかを知ることがとても大切です。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた冷え性(冷え症)の治療


身体は気の力によって温められていましたので、漢方医学的には不足している気を補充することで冷え性(冷え症)の治療を行います。気を補う生薬としては人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などの補気薬が代表的であり、これらを豊富に含んだ漢方薬が主に使用されます。


しかし、実際には気を補う生薬に加えて直接的に身体を温める効果のある桂皮、乾姜、細辛、呉茱萸、附子といった散寒薬と呼ばれる生薬が補気薬とあわせて用いられます。


気が不足している場合は血の不足も疑う必要があります。これは血が気を「原材料」として生まれているからです。さらに気と血は相互に依存関係もあるので血を補うことは異なったルートから気を補うことにもつながります。したがって地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などの補血薬を、気を補う漢方薬に少量加えることで効果的に気を補えるようになります。


生活面での注意点と改善案


生活習慣の改善は冷え性(冷え症)に対してとても有効です。場合によっては生活を見直すだけで冷え性(冷え症)を半減させることも可能です。ここでは当薬局にいらっしゃる方にアドバイスしている冷え性対策をご紹介します。どれも難しいものではありませんので是非、漢方薬の服用と一緒に取り組んで頂きたいと思います。


冷たい飲み物の摂りすぎは控える

冷たい飲み物は身体を冷やすだけではなく脾胃(漢方医学用語で消化器のことです)の力も低下させてしまいます。身体を温める気や栄養を与える血は脾胃から生まれるので、お腹にやさしいホットな飲物を積極的に摂りましょう。1日の水分摂取量も1.0~1.2L程度を目安にしてください。水分は食物からもしっかり摂れているので飲み物ではこれくらいで大丈夫です。


食べ物も温かく

サラダ、フルーツ、ヨーグルトは「冷たい水分の塊」のようなものです。サラダは温野菜、特にキュウリやトマトなどの夏野菜は身体を冷やしやすいので加熱調理が良いでしょう。逆に冬野菜の根菜やニンニク、ショウガは身体を温めます。フルーツやヨーグルトは冷蔵庫から出した後、常温に戻して温かい飲み物と一緒に摂りましょう。


薄着は禁物

「生足」「へそ出し」「ノースリーブ」という「冷え性(冷え症)・三種の神器」は今すぐ「毛糸の靴下」「下着の上に毛糸のパンツ」「腹巻」という「保温・三種の神器」へ切り替えましょう。おへその下にカイロを入れると一層暖まります。生理不順などがある女性の場合は特に腹部を冷やさないよう意識してください。その他にもカーディガンやひざ掛けなどを持ち歩くと外出時のクーラー対策にもなります。これは夏場の過剰なクーラーにも有効です。


シャワーではなくしっかり湯船へ

シャワーは汚れを落とすもので身体を温めるものではありません。冬場は当然ですが夏場でもしっかり湯船につかりましょう。おススメは「ぬるめ(40℃~38℃くらい)のお湯で20分の半身浴」です。お風呂から出る直前の数分間は肩まで浸かって全身を温めましょう。


食事はバランス良く

「脂・甘・辛」の過剰は脾胃(消化器)を傷めやすいのでほどほどにしましょう。タンパク質は多くの熱を生み出すので積極的にとりましょう。例えば肉、魚、乳製品、大豆製品などです。忙しい朝などはハムチーズのサンドにホットミルクなどが適しています。


適度な運動を積極的に

筋肉は熱の「生産工場」であり「暖房器具」でもあります。身体中の熱の約60%は筋肉で生み出され、筋肉で温められた血液は全身を循環して保温します。まずはウォーキングや積極的に階段を利用することから始めましょう。


冷え性(冷え症)の改善例


患者は30代前半の女性・看護師。昔から四肢の冷え性(冷え症)に悩んでいましたが、転職先の病院は設備も古く暖房がうまく機能しないため夜勤時は冷えで足が痛くなるほどとのこと。足先から徐々に全身も冷えてしまうという。


詳しくお話を伺うと、夜勤や日中の勤務が入り混じる不安定な勤務状況なのでなかなか疲れもとれず困っているとのこと。実際に顔色もすぐれず、あまり生気が感じられない印象でした。この方は主訴と全体像から典型的な気の不足した状態である気虚と判断して人参や大棗、そして身体を温める乾姜などから構成される漢方薬を服用して頂きました。


漢方薬服用から4ヵ月が経過すると徐々に末端の冷えが弱くなり体力にも少し余裕が出てきたご様子。しかし、最近は足のむくみが気になりだしたということで、余分な水分を代謝する猪苓や茯苓を含んだ漢方薬に微調整。まだ足の痛みが出ることもあるということで温める他に鎮痛効果もある細辛を含んだ漢方薬も併用して頂きました。


新しい漢方薬の組み合わせから3ヵ月が経った頃には冷えやむくみ、冷えた時に起こる足先の痛みもほとんど消えていました。しかし、ちょうど冬に入りかけていた時期だったので漢方薬はそのまま服用して頂きました。


その後、冬本番となってしばしば雪がちらつくようになっても足の冷え痛みが出ることもなく、無事に「越冬」することができました。この方には体力維持と冷え性(冷え症)対策も兼ねて体調に合わせて微調節しながら現在も漢方薬を服用して頂いています。


おわりに


冷え性(冷え症)はライフスタイルにとても影響を受けやすい「病気」といえます。ファッション性を過度に重視した衣服は冷えを助長し、ダイエットや朝食抜きの食生活では充分な熱も生まれず冷え性(冷え症)は深刻なものになってしまいます。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では冷えに効くといわれるショウガやカプサイシンなどのサプリメントを服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、冷えが少しずつとれてくることから、冷え性(冷え症)と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、辛い冷え性(冷え症)にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 虚弱体質 】と漢方薬による治療

虚弱体質とは


「虚弱体質」という言葉に明確な定義はありませんが、主には体力がなく疲れやすい体質、または疲労感や重だるさが抜けにくい体質といえます。これらにくわえて食欲不振、顔色の悪さ、貧血によるめまいや立ちくらみ、風邪に代表される病気になりやすい体質などが多くの方に共有されている虚弱体質のイメージではないでしょうか。


お子さんの場合は食が細く痩せていて、しばしば朝礼で倒れてしまったり、中耳炎や扁桃腺炎を起こしてしまうようなケースが連想されます。虚弱体質と並び、虚弱体質児や虚弱児という言葉もまた西洋医学的に定まった定義はありません。


西洋医学的に虚弱体質は特定の病気が背景にない限り、対応が難しい状態といえます。その一方で、漢方において健康と病気の間といえる未病(みびょう)の状態である虚弱体質の改善は得意分野でもあります。本ページではなんらかの病気による虚弱体質ではなく、主に体質的に生まれ持っての虚弱体質の改善を解説してゆきます。


虚弱体質の原因


虚弱体質の主症状といえる疲労感は体質面と環境面の両方によってもたらされます。体質面では食欲不振や消化不良といった消化器系のトラブルによって栄養素をうまく身体に取り込めていないケースが多いです。その他にも何らかの病気をきっかけに体調を崩し、虚弱体質へ移行してしまうこともあります。


環境面としては長時間労働による肉体的・精神的ストレスの蓄積、偏食などの食生活の乱れ、運動不足、睡眠不足といった体力消耗と体力回復の問題が挙げられます。これらマイナスの要因が重なると一般的な体力がある方であっても慢性的な疲労感が抜けにくくなってしまうでしょう。


虚弱体質の症状


虚弱体質における中心的な症状としては慢性的な疲労感が消えず、いつも身体が重だるいといったものが挙げられます。虚弱体質には疲労感や重だるさにくわえて、食欲不振、胃もたれ、胃痛や腹痛、吐気や嘔吐、下痢や軟便などに代表される消化器系症状もしばしばともないます。他にも顔色の悪さ、めまいや立ちくらみ、動悸や息切れ、風邪などの病気になりやすい、気力の低下(精神面での活力の低下)などがしばしば挙げられる症状といえます。


虚弱体質の西洋医学的治療法


西洋医学的にみて疲労感を引き起こしている病気があるならば、その病気の治療が虚弱体質の改善につながります。代表的なものに身体に活力を与えるホルモンである甲状腺ホルモン量の低下が挙げられます。橋本病といった甲状腺ホルモン量の低下が起こる病気では疲労感、冷え性(冷え症)、むくみ、気力の低下などの症状が現れます。この場合は甲状腺ホルモン製剤を服用することで諸症状の改善が見込めます。


しかしながら、虚弱体質を引き起こしている原因が明らかにならなければ西洋医学的には治療が行えません。したがって、西洋医学において漠然とした虚弱体質の改善を期待するのは困難といえます。


虚弱体質の漢方医学的解釈


漢方の考えに基づいて治療を行う場合、特に西洋医学的な病名や検査値の異常は必要としません。むしろ、患っている方の訴えやもともとの体質が重要視されます。したがって、疲労感を中心とした虚弱体質も漢方においては治療の対象となります。


漢方の立場から虚弱体質を考えるとその中心には慢性的な気虚や血虚の存在が考えられます。気は身体に活力や抵抗力、さらには身体を温めるはたらきなどを担っている生命エネルギーと呼べる存在です。血は身体中を栄養し、心身を安定化させます。


食欲不振や過労によって気が不足すると心身の活力が失われ、いわゆる虚弱体質的な症状が現れやすくなります。主に血は気を「原料」として生まれるので、気の不足は徐々に血の不足も引き起こしてしまいます。


気や血の不足以外にも、精神的なストレスを受け続けると気の流れが滞ってしまいます。この状態を気滞と呼び、身体の重だるさや気力の低下、消化器の不調などを引き起こしてしまいます。このような症状もまた「虚弱体質的」といえるので、虚弱体質を訴えられる方に対しては気血の不足以外にもそれらの滞りも検討する必要があります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた虚弱体質の治療


漢方薬による虚弱体質の改善は気や血を補うことが中心となります。気の多くは飲食を通じて生まれ、気から血はつくり出されます。したがって、虚弱体質の改善は消化器の状態を向上させること、食欲を高めることが大切となります。


疲労感にくわえてもともと食が細く、風邪などを引きやすい場合は気を補う人参、黄耆、大棗、白朮、甘草といった補気薬を多く含んだ漢方薬がもちいられます。顔色が悪く、ちょっとした運動で息切れが出たり肌の乾燥が目立つ方には血を補う地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉を配合した漢方薬がより適しています。


食欲はしっかりあり、食事の量も充分に摂れているのにいつも身体が重だるい、くわえて気分も沈みがちという方は気がうまく巡っていない気滞の状態が疑われます。このようなケースには気を流す柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などの理気薬をもちいた漢方薬が検討されます。


さらに上記以外にもむくみやめまいがあるなら津液の停滞である水湿の状態も考えられます。このように虚弱体質といっても単純に気血を補えばよいというものではなく、あくまでも個人の症状や体質に基づいて漢方薬は決定されます。


生活面での注意点と改善案


虚弱体質の改善にはまずは食生活と生活習慣の見直しが大切です。食べ物については糖質である白米とタンパク質である肉や魚を充分に摂ることが望ましいです。消化器が弱っている場合、消化しにくい脂肪分の多い肉は避け、魚も身体を冷やしやすいお刺身ではなく焼き魚がより良いでしょう。


疲労感が顕著なときに栄養ドリンクをもちいるのは一定の効果はあります。これは栄養ドリンクに含まれている糖分がエネルギーへ、カフェインが覚醒作用を発揮するからです。一時的な効果がある一方で、連用すると糖分の摂り過ぎによる糖尿病の恐れもあります。カフェインも血圧の上昇や動悸、頻尿、寝つきの悪さや眠りの浅さを起こしてしまうことがありますので注意が必要です。


生活習慣としては当たり前のことになりますが休息や睡眠時間の確保は大切です。夕方以降の疲れが顕著の場合、昼過ぎの15~20分程度の仮眠は心身のリフレッシュにとても有効です。慢性的な運動不足は気の巡りを悪くしてしまい、倦怠感が現れやすくなります。軽いウォーキングや、できるだけエレベーターやエスカレーターを使わないようにするだけで身体はシャキッと活性化します。


虚弱体質の改善例


改善例1

患者は40代前半の男性・会社員。仕事で一般家庭において使用される医療機器の営業を行っており、説明のために重い機器を毎日運んでいる。「昔からあまり体力に自信がなかった」とのことですが、30代の後半からより顕著に疲れやすくなり年に何回も風邪を引くようになってしまったという。当薬局へは婦人科のトラブルを患っていた奥様のご紹介でご来局へ。


お話を伺うと慢性的な疲れやすさにくわえて、すぐに喉を痛めてそこから咳が続く風邪になってしまうという。その他にも疲れがたまると腰痛も現れやすくなり、お辞儀をする体勢をとると痛みが生じるとのこと。身長と体重は172cmの52kgと痩せ型で、普段から食に対する欲求が薄い(食べなくてもあまり苦にならない)という。


この方は典型的な気虚による虚弱体質と考えて人参や白朮から構成される漢方薬を服用していただきました。漢方薬を服用して日が浅いうちは苦みが気になったとのことですが、2ヵ月ほど服用すると食欲も増してきました。「職場でお腹が減るという経験はしたことがなかったけれど、今は4時頃になると夕御飯が待ち遠しくなる」とのこと。


初回から一貫して同じ漢方薬を服用し、半年が過ぎると体重は60kgとなる一方で腰痛は現れなくなっていました。この頃、季節は繁忙期の冬になっており機器の説明をする機会が増えるので喉からくる風邪が心配とのこと。そこで基本的な内容は大きくは変えず、風邪などへの抵抗力を高める黄耆を含んだ漢方薬へ変更。


新しい漢方薬を服用して3ヵ月が経ち、寒さも徐々にやわらぐ頃になりましたが今シーズンは風邪による喉の痛みや咳で仕事に支障をきたすことはありませんでした。もうひとつの懸案である腰痛も引き続き現れることなく、一年で一番忙しい時期を乗り切ることができました。その後は消化器の調子なども含めて体調がよいということでこの方には同じ漢方薬を継続していただいています。


改善例2

患者は小学4年生の男児。お母様と一緒にご来局されたお子様の主訴は1日に2~3回はあるという軟便でした。便意は食後に強く、学校ではあまりトイレに行きたくないので悩んでいるとのこと。より詳しくお話を伺うと軟便の他には腹痛、食後の眠気、吐気があり朝食が食べられないというご症状がありました。


くわえてご本人には聞こえないようにお母様がメモで、学芸会のようなイベントの前はより症状が強くなり、性格的にも神経質なところがあると教えていただきました。このお子様には気を補う人参や白朮、消化器の力を高めて軟便を改善する山薬や蓮肉などから構成される漢方薬を服用していただきました。日常生活では氷の入った炭酸飲料が大好きということだったので摂取量を制限してもらい、できる限り常温以上の水分摂取をお願いしました。


漢方薬の服用を開始して3ヵ月が経つと便通は2回以上になることはなくなっていました。便の状態もより固形に近づいてきたとのこと。その一方で便通直後の腹痛は変わらないということで、筋肉の緊張を緩めて痛みを除く芍薬や膠飴から構成される漢方薬に変更しました。


新しい漢方薬は甘みがあり、以前の漢方薬よりも積極的に服用してくれるとお母様の評判はとても良いものでした。肝心のお子様の腹痛も徐々に緩和され、服用から2ヵ月が経つと排便も夕御飯後の1回となりました。朝の吐気による食欲不振も少しずつ良くなり、小さなおにぎりは最低でも摂れるようになっていました。しかしながら、また疲れやすさがあるのか学校がない土日などは昼食後に2時間近くも横になっているという。


漢方薬の再変更を考えましたがご本人が今の漢方薬がよいということで変更は行わず様子を見ることに。通算で漢方薬の服用が1年になる頃には昼寝をすることはなくなっていました。逆に入眠する時間が早まり起床がよりスムーズになったとのこと。緊張するようなイベントの際でも胃腸の調子は安定していました。結果的には漢方薬の調節を行わないというご本人の判断が正しかったことが裏付けされた一例となりました。


おわりに


虚弱体質の改善は漢方が得意とする未病治療の典型といえます。虚弱体質に代表される体質改善は西洋医学的な対応が困難であり、そういった点においても漢方薬がとても活躍できる領域といえます。


その一方で虚弱体質といっても各症状の強弱などその内容は個人によってさまざまです。したがって、充分にご症状やご体質、さらには生活環境などを伺って漢方薬は調合されます。慢性的な疲労感や胃腸トラブルなどに代表される虚弱体質にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

【 気象病 】と漢方薬による治療

気象病とは


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台風の接近で体調を崩しやすい方は気象病の可能性があります


気象病(きしょうびょう)とは主に天気、気温、湿度、気圧などの変化が引き金になって起こる体調不良の総称です。具体的には「台風が近づいてくると頭痛が起こる」「雨が降り出すと気分が沈み身体も重だるくなる」といったものが挙げられます。

気象病の中でも特に痛みが引き起こされるものは天気痛と呼ばれます。上記の頭痛の例や、天気が崩れると古傷や手術痕が痛むといったものも天気痛に含まれます。

心身に影響を与える気象条件についても、日々の天気の変化といったミクロなものから季節の移ろい、梅雨や台風シーズンといったマクロなものまで様々です。気象病という枠からは外れてしまいますが、敏感な方は気圧変化が生じる高層ビルでのエレベーター利用、減圧されている航空機の搭乗でも不調を感じるケースがあります。


気象病の原因


気象病を引き起こす原因はまだ完全には分かっていません。しかしながら、気圧の変化を感じ取った内耳の器官が過剰反応した結果、自律神経のバランスが乱れて発症するという仮説が有力視されています。

自律神経とは意識することなく自律的に身体をコントロールしている神経であり、交感神経と副交感神経に分けられます。前者は身体を活性化し、後者は逆に鎮静に働きます。これらが気象変化によってバランスを崩し、さまざまな症状が引き起こされているのではないかと考えられています。

気象の変化についても台風の急接近やゲリラ豪雨など、大きな変化をともなうケースで症状も強く現れる傾向があります。近年は大型台風の増加や頻発する豪雨被害など、異常気象が問題となっています。今後、異常気象の増加と比例して気象病がより顕在化する可能性もあります。


気象病の症状


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気象病の症状は身体症状だけではなく精神面や持病の悪化にも及びます


気象病による症状は非常に多彩ですが、大きく3つに分類することができます。肉体的な症状、精神的な症状、そして身体的なものの中でも特に痛みをともなう天気痛です。

具体的には気象変化にともなう、頭痛、眼痛、歯痛、めまい、立ちくらみ、頭重感、耳鳴り、首肩の凝り、身体の重だるさや疲労感、むくみ、食欲の低下、古傷や手術痕の痛み、気分の沈みや漠然とした不安感、気力の低下などが挙げられます。

短期的な天気の変化にくわえて、四季の移り変わりによっても体調は左右されます。「木の芽時(きのめどき)」と呼ばれる春先はイライラ感、焦燥感、憂うつ感といった精神不安が現れやすい時期でもあります。他にも春はめまいや頭痛なども目立ちます。

雨が続く梅雨時や台風シーズンは気分の沈み、身体の重だるさ、頭のモヤモヤ感、食欲低下、メニエール病による回転性のめまいの悪化、関節リウマチに代表される天気痛が起こりやすいです。

乾燥が始まる秋から冬は呼吸器系のトラブルが目立つようになります。気管支喘息や咳喘息が持病の方は要注意の季節といえます。呼吸器系の病気は風邪やインフルエンザをきっかけに悪化・再発するケースもあるので注意が必要です。


気象病の西洋医学的治療法


気象病はまだ原因が解明されていない病気であるため、西洋医学的治療法は確立されていません。一方で経験的に内耳の血管を拡張して血行を改善する薬、乗り物酔いやめまいの治療薬などに改善効果が知られています。



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気象病の漢方医学的解釈


漢方医学の視点から気象病を考えた場合、湿邪(しつじゃ)や風邪(ふうじゃ)といった外的要因の悪影響と、それに抵抗できない身体の不調という内的要因の結果と考えられます。この身体内外の要因が揃ってしまうことで気象病の多彩な症状が引き起こされます。

湿邪とはその名前の通り、心身に悪影響を及ぼす高湿度や悪天候といった要因を指します。湿邪が身体に侵入すると重だるさ、頭痛や頭重感、むくみ、関節痛の鈍痛や関節の動かしにくさといった症状を引き起こします。

それにくわえて、もともと運動不足や水分の摂り過ぎなどで身体内の水分代謝が滞っていると、湿邪による悪影響はより強いものになります。具体的にはめまい、吐気や軟便などの胃腸の不調などが併せて現れやすくなります。

湿邪による体調不良は梅雨時や台風シーズン、他にはゲリラ豪雨といった天気の急変時に顕著化しやすいです。

風邪(ふうじゃ)によっては頭痛、めまい、首肩の凝りといった「身体の上部」におけるトラブルが目立ちます。これは風が木の下よりも上部を大きく揺らす現象に似ています。風邪による症状は主に春先の風が強い時期に起こりやすいです。

普段から頭痛やめまいが起こりやすく、精神的に不安定になりやすい方が風邪の悪影響を受けるとこれらの症状はより顕著に現れやすくなります。くわえて、身体の震えや硬直といった筋肉系のトラブルも併発しやすいです。

他にも気象病を起こす外的要因には寒邪(かんじゃ)、燥邪(そうじゃ)、暑邪(しょじゃ)なども関係します。これら外的要因にくわえて、もともとの体力不足や代謝の不調などが重なった結果として気象病が発症すると考えられます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた気象病の治療


画像の読み上げ名
体調を崩す要因を探りつつ体力や抵抗力を底上げすることが不可欠


漢方薬を用いて気象病を治療する場合、気象病を引き起こしている外的要因がどのようなものなのかを把握する必要があります。

雨が降る前や台風シーズンに調子を崩しやすい場合は湿邪を除く蒼朮、白朮、茯苓、陳皮などを含んだ漢方薬が選択されます。これらの生薬は胃腸の調子を整える作用もあるので、湿気が強くなると消化器の不調(吐気、食欲不振、軟便や下痢など)が出やすい方にも適しています。

春先に頭痛やめまいといった風邪による身体症状が目立つ方には釣藤鈎や天麻、身体症状にくわえて不安感やイライラ感のようなメンタル面での不調が強くなる方には柴胡や薄荷といった気の巡りを整える生薬も使用されます。

他にも根本的に体力が低下している方は外的要因の影響を一層受けやすくなります。このような方には人参や地黄といった気や血を底上げする生薬を含んだ漢方薬も検討されます。


生活面での注意点と改善案


気象病を発症するきっかけは個人によって異なります。その一方で雨が降る前や台風が接近してきた時のように天気や気圧の急変が引き金になることが多いです。

地域によって異なりますが梅雨は例年6~7月、台風は8~9月がピークになりやすいです。したがって、6~9月の4ヵ月間は特に無理をしないで過ごすことが大切になります。具体的にはこの期間はいつも以上に睡眠を確保するようにしましょう。

睡眠不足に陥って体力に余裕がなくなると、少々のきっかけで体調不良のブレ幅が大きくなります。結果的に精神面でも後ろ向きになりやすくなってしまいます。

睡眠時間の確保にくわえて気の流れをスムーズにする軽運動も好ましいです。通勤帰りに少し寄り道をする、オフィスのちょっとした移動の際には階段を使うといったものでも良いので身体を動かすことを意識しましょう。



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気象病の改善例


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雨による頭痛や頭重感は気象病で最もみられるケースです


患者は30代の女性・行政書士。社会人になってから頭痛を中心とした体調が現れやすくなったことを自覚し始めた。はじめの頃はいつ具合が悪くなるかわからなかったが、梅雨の時期は頻繁に鎮痛薬を使用していることに気付いた。

始めの頃はあまり注意せず痛みが出るたびに鎮痛薬を服用していましたが、副作用と考えられる胃潰瘍になってしまい使用は止めることに。友人が慢性的な頭痛を漢方薬で治したという話を聞き、漢方を始めることにしました。

詳しくお話を伺うと天気が崩れる前になると頭痛、乗り物酔いのような気持ち悪さ、頭のモヤモヤ感や重だるさが必ず現れるとのこと。体調も悪くなるので精神的にも余裕がなくなり、イライラ感も高まりやすく「集中力も欠けるので仕事でのケアレスミスを多くなってしまう」とのこと。

この方には気の巡りを改善する柴胡、水分代謝を促す白朮や茯苓などから構成される漢方薬を服用して頂きました。身体に良いと考えて、自宅のウォーターサーバーから冷えた水を毎日2.0L飲んでいたのでそれは止めて頂きました(細身の方だったので温かい物を1.2Lくらいで十分と伝えました)。

服用を始めた時期がちょうど梅雨時で、さらにこの年の梅雨は例年以上に長かったのでなかなか効果は出ませんでした。調節も検討しましたが「服用していると生理前にあったイライラが少ない」とのことで、悩みましたが同じ内容で継続へ。

夏の暑さが遠のいてきたころ、台風が上陸することが増えてきました。漢方薬の効果が判然としなかったので心配していましたが「頭痛がすることはあっても鎮痛薬を毎日飲んだり、頭がスッキリせずに気持ちが沈むことは少なくなった」とのこと。

この年はいくつか大型台風が列島を縦断。一方、この方は体調が大崩れすることなく過ごすことができました。その後も少々の天気や気圧の変化で不調に陥ることは無くなり、段階的に漢方薬は減薬へ。その後は梅雨や台風シーズンにのみ、頓服として漢方を服用して頂いています。


おわりに


ここ数年で「気象病」や「天気痛」という言葉が徐々に浸透してきた印象があります。西洋医学的にもめまいや乗り物酔いに使用する薬で効果が出ることも分かってきました。その一方でこれらを服用しても改善しないケースもしばしばです。

漢方薬の場合、体調を崩してしまう原因から細かく対応することが可能です。慢性的に天候の変化で体調を崩しがちの方は是非、当薬局をご利用頂ければと思います。

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